こんにちはボクシングブロガーのtorajiroです。
この記事ではボクシングの歴史的に見た異種格闘技戦や他の格闘技と交流する事の意義について述べています。
大前提として、日本ではボクシングのライセンスを持っている選手・関係者は他の格闘興行のリングに上がることが禁じられています。
が、歴史を振り返るとボクシングが日本国内で人気を博すに至ったきっかけは柔拳興行という柔道とボクシングによる異種格闘技戦でした。
新しい格闘技が普及していく上で重要な役割を担ってきた異種格闘技戦。
若者人口減少も相まって選手とファンの減少に悩む今後の日本ボクシング界の発展にはこの「他の格闘技と交わる機会」が重要になってくるはずと考え、この記事を書いています。
日本ボクシング界が現在抱える課題
現在日本のボクシングはいくつかの問題を抱えています。
日本ボクシング界の抱える問題
- プロボクサーの減少傾向
- ボクシングファンの減少
- ボクシングファンの高齢化
- 世間的認知度の低下
チケットの高騰やファイトマネーに手売り問題等他にも色々ありますが、選手とファンの減少、そして世間的な認知度の低下は深刻な問題です。
つい先日も親しくなった方との会話の中で、僕が元プロボクサーだという流れからRIZINで活躍中の平本蓮選手の試合内容についての話題を振られました。
おそらくはボクシングもMMAも同じ格闘技!!
という認識で考えておられたと思うのですが、競技としては完全に別物。
幸い僕は格闘技全般が好きなので会話は成立しましたが、
もし自分が純度の高いボクオタだったら、、、
と想像して無駄にハラハラしました。
ボクシング界の世界的なスター井上尚弥選手の事も僕が働く職場の方は殆どが「名前は聞いたことがあるかなぁ」程度の認識でボクシングファンの自分としては大変なショックを受けた事があります。
特に若い人のボクシングに対する関心の薄さは先々考えると心配。。
好きなスポーツ選手ランキングで井上尚弥選手が4位に入り大健闘しましたが、年代別の順位を見るとやはり一抹の不安を覚えました。
新しい格闘技がどうやって普及していったか??
ここまで低下したボクシングの世間的な認知度をこれからどうやって高めていけば良いのか、一ファンとしては悩むところ。
そこで一体どうやって日本国内でボクシングが浸透していったのか??
そのルーツを辿ってみました。
日本国内におけるボクシングの歴史は100年以上ありますが、今のようにメディアが発達していない時代にどうやって普及されていったのでしょうか??
現代における総合格闘技やK-1の発展と合わせて紹介していきます。
柔拳によってボクシングが認知された歴史
ボクシングが日本で認知されていく上で重要な役割を担ったのは冒頭で少し触れた通り柔道!!
1919年〜1930年前後まで、ボクシングと柔道の異種格闘技戦である”柔拳”興行が行われ、日本人が良く知る柔道を介してボクシングという競技が日本に浸透していったのです。
当時ボクシングは日本人に馴染みが薄かったので、興行を打っても集客が見込めない。
そこで日本人に馴染み深い柔道とボクシングを対決させよう、というのが柔拳興行の基本的な考え方である。
「拳の近代 明治・大正・昭和のボクシング」木村玲一
初期の頃はボクシング単体の興行はボクシングに対する認知度の低さ故にお客さんが全然入らなかったようです。
そこで柔道という日本人に馴染み深い競技とコラボさせることでボクシングは日本人に認知されていったのですね。
どこかで聞いたことある話だな??
と思った方も多いのではないでしょうか。
総合格闘技の普及に一躍勝ったプロレス
世界的に見ればUFCやONE、Bellator、日本国内でもRIZINが盛り上がりを見せている総合格闘技。
その総合格闘技が日本国内で普及していく上で一躍勝ったのはプロレスでした。
2000年代前後の時代、多くのプロレスラーが総合格闘技のリングに上がり、そして散っていきました。
勿論桜庭和志選手のような例外ケースもありましたが。
今ではプロレスと総合格闘技は全く別物という認識が生まれていますが、当時はまだここの境界線が曖昧だったのです。
あの当時、日本で良く知られたプロレスラー達が総合格闘技のリングに上がっていく流れは、総合を普及させる上ではとても重要な流れでした。
仮にプロレスラーが参戦せず、知らない選手同士が寝技の攻防を繰り広げていたら、あのような一大ムーブメントにはならなかったでしょう。
強いと信じていたプロレスラー達が次々と倒されることで「総合格闘技ってスゲーんだ!」
という認識が生まれていった事は間違いありません。
元プロボクサーの参戦がK-1のプレゼンス向上に貢献
K-1が日本国内で人気コンテンツとなり、盤石な地位を築いていこうとする中で一時期頻繁に見られたのが、現役引退間際や現役引退後のプロボクサーがK-1ファイターと対戦するという流れ。
K-1中量級の象徴だった魔裟斗選手が次々と元プロボクサー達を撃破していく事で「キックボクサーはボクサーよりも強い!」
という風潮が生まれていくのをひしひしと感じました。
蹴りがあるんだからそりゃボクサー勝てないよ(汗)
という事が分かる人にはわかりますが、熱心な格闘ファン以外からしたら
”ボクシングもキックもMMAもジャンルは同じ格闘技”
という枠組みで捉えられてしまいます。
同じ格闘技という枠組みの中でキックの選手がボクサーを打ち負かしたのだから「キックの方がボクシングより凄い!」
と考えてしまうのも自然な流れでしょう。
元日本ミドル級チャンピオンの鈴木悟選手が魔裟斗選手のローキックで子鹿状態になったのはショックではありましたが、あの時の試合前のドキドキは今となっては良い思い出です。
現在の日本ボクシング界における異種格闘技戦の可能性について
このように新しい格闘技が流入していく過程においては、既に広く認知されている競技とコラボし、皆が知っている競技のフィルターを通す事でその競技の面白さを伝えていくという時期があります。
- 柔道とのコラボで普及していったボクシング
- プロレスラーの参戦で普及していった総合格闘技
- 元ボクサーをリングに上げることでプレゼンスを高めていったK-1
昨今、特に若者のボクシング離れが激しい状況においては、ボクサーが若者に人気の他の格闘技と交わることは歴史を参考にすればとても効果的な施策であると考えられます。
皇治選手の参戦で3150FIGHTの注目度アップ
コロナ禍の影響もあって日本ボクシング界が危機的な状況に陥っていた時に、「日本のボクシングを盛り上げよう」とボクシング元三階級王者の亀田興毅氏が立ち上げた3150FIGHT。
3150FIGHTも最初の興行はコロナ禍の影響で無観客試合。
その後の興行も世間的な認知度は低く、
亀田興毅氏の名前があってもこんなもんなのか、、
と寂しい気持ちになったものです。
ところが3150FIGHT vol.3のエキシビジョンにRIZINファイターの皇治選手が参戦するとこれが大きな話題に。
3150FIGHTを題材にしていた僕のブログ記事もアクセスが集中し、僅か数時間で1ヶ月のブログ全体のPV数に並ぶ程の反響がありました。
>>皇治効果!?3150FIGHT関連記事へのPV数推移から見た成長の軌跡
皇治選手はボクシングルールでプロボクサーのヒロキングと対戦しましたが、
“キックの選手がボクシングのリングに上がる”
という構図はビッグマネーを生み出す可能性を秘めていると感じました。
BREAKING DOWNへの元ボクサー参戦がもたらす功績
もう一つボクシング人気の復活に貢献してくると思われる流れがBREAKING DOWNへの元ボクサーの参戦。
驚く事にBREAKING DOWNは今や小学生や中学生の会話のネタにもなる程の影響を若者に与えています。
(以前公園の鉄棒で懸垂トレーニングしていたら子供達がBREAKING DOWNの話題で盛り上がっていました!!)
この若者への影響力の大きいBREAKING DOWNに複数名の元プロボクサーが参戦し、中には大きな注目を集めている選手もいます。
ボクシングファンの中にはBREAKING DOWNのリングに元ボクサーが上がる事を快く思わない方もいるでしょう。
しかし若者の目をボクシングに向けるという点では、若者の視聴割合が高いBREAKING DOWNのリングに元ボクサーが上がることは大きな意味を持っています。
他の格闘技との交流がファン開拓の切り札に!?
このように歴史的にも他の格闘技と交わる事でファンを開拓するという手法は何度も行われてきた有効な策です。
現在においては異種格闘技戦は現実的ではないですが、キックの選手がボクシングに参戦したり、元ボクサーが他の格闘技のリングに上がったりする構図はあり得る流れです。
武居選手や那須川天心選手、左右田選手らのボクシング参戦には個人的にはテンションが上がりましたし、僕のブログでキックから転向した選手を取り上げた記事もアクセスがとても多いです↓
ただ、いずれの選手もキックを引退してからのボクシング参戦。
反対意見はめちゃくちゃあると思いますし、安全面での検討も必要ではありますが、選手もファンも減少している状況においては、"例えばキックとボクシングと、両方のリングに上がる"ことも許容していけないかと個人的には考えております。
タイのジョムトーン・チュワタナ選手はムエタイ、キック、ボクシングと複数のリングに上がって戦ってきた実績を持っています。
初めてジョムトーン選手を観たのは後楽園ホールでの杉崎由夜選手との一戦。
これでマジでムエタイ戦士なのか!?
と度肝を抜かれました記憶があります。
内山高志選手に敗れて世界のベルトには届きませんでしたが、まージョムトーンは強かった。。
今だにK-1のリングに上がっていますが、ボクシングのリングにも上がったジョムトーン選手の試合は毎回楽しみです。
RISEやK-1で天心選手や武居選手を応援していたキックのファンが、ボクシングのリングで両選手を応援同じ感覚なんだろうなぁと思います。
RISEで活躍中の白鳥大珠選手もそうですが、ボクサー時代を知っていた選手がキックのリングに上がる時は普段よりも高い関心を持って視聴しています。
キックのファンでも武居選手や天心選手がボクシングに参戦したことで、「ボクシングも観てみようかな??」
と思われた方は多数いるでしょう。
まとめ
このように新たなファンを開拓する上では、既に認知度の高い競技の力を借りる事は有効な策の一つですし、相互に行き来できれば両方のファンを増やす事にもつながります。
- ボクサーがキックボクシングのリングに上がる(蹴りに対応出来ないのでリスク高し)
- ボクサーがBREAKING DOWNのリングに上がる(流石に現役は危険か??)
- キックボクサーがボクシングのリングに上がる(吉成名高選手なんかいけるのでは??)
- ボクシングとキックボクシングやMMAの合同興行を開催
蹴りを全くやってこなかったプロボクサーがキックのリングに上がるのはリスクが高すぎるし、足を破壊されて長期離脱のリスクもはらんでいます。
一方でキックボクサーがボクシングのリングに上がるのは勿論難しい事ではありますが、ボクサーがキックのリングに上がるよりは対応し易いと感じています。
安全面でのルール整備は必要ですが、
- ボクシングライセンスを持っていても出場して良い他団体の興行を決めたり
- 他団体の興行に出た選手は4ヶ月過ぎるまでボクシングのリングには上がってはいけないとしたり
そんな具合にルール整備をすることでキックの選手の参戦を認めることは可能ではないかと考えています。
また、ボクシングとキック合同で一つの興行を打つことが出来れば、キックのファンにボクシングの魅力を発信することも出来、ファン層の拡大を測れるかも知れません。
ついでにハーフタイムショーでプロレスの試合が組まれたら絶対に観にいきたい。
他の格闘技との交流はJBCというよりは日本プロボクシング協会が断固として反対しそうな印象ではありますが。
人口減少社会においては、こうした格闘技がジャンルの垣根を超えてコラボする事で他のエンタメに対抗していく事も重要な施策の一つと考えております。
プロで難しければまずはアマチュアから。
土屋修平氏が代表を務める格闘イベント「だれバト」がボクシングとキックのアマチュア大会を同日開催する事を発表しましたが、とても良い施策だと思います。
こうした動きも今後のボクシング界発展の上でのキーポイントになってくるのではないでしょうか。