こんにちはtorajiroです。
最近ボクシングの試合おいて減量失敗や怪我による棄権が増えているなと思い、先日このブログで「減量失敗、怪我、ボクシングの試合で選手の棄権が増えた原因を考察」という記事を書きました。
記事を書いた後で「そもそも本当に減量失敗や怪我による棄権が本当に増えているのかを確認していないな」と思いましたので、この前提自体が間違っていないか、過去の数字と比較して見ることにしました。
10年前の興行数と棄権数(2012年1月〜5月)
最近のボクシング興行における棄権数が増加している事については以前から感じていた事ですが、ここ最近特に顕著にそれを感じていたところですので、直近5ヶ月(2022年1月〜5月)と、10年前の2012年の同時期とを比較してみました。10年ひと昔と言いますので。
カウントはアナログで、ボクシングモバイル様の試合結果を確認し、各月の興行数と、棄権 中止となっている試合数をカウントしています。
2012年のデータは以下の結果となりました。
興行数 | 棄権試合数 | |
1月 | 7 | 2 |
2月 | 10 | 2 |
3月 | 21 | 6 |
4月 | 29 | 2 |
5月 | 14 | 8 |
10年前は自分が現役だった時に一緒に練習していた選手がたくさんまだ試合をしていた時期なので頻繁に後楽園ホールに足を運んでいましたが、当時から水抜きの失敗による体重超過はありましたし、怪我による中止もありました。
個人的な実感としては棄権者数はもっと少ないと思っていましたが、毎月数人は棄権する選手がいるという状況だったようです。
5月は新人王トーナメント途中の怪我による棄権と思われるものが多かったです。
2022年の興行数と棄権数
では続いて2022年現在の数字を見ていきます。
興行数 | 棄権試合数 | |
1月 | 3 | 4 |
2月 | 8 | 7 |
3月 | 14 | 3 |
4月 | 23 | 16 |
5月 | 12 | 11 |
こうしてみると全体的に興行数自体が減っており、それと反比例して棄権試合数は増えていることはわかりますが、1〜3月に関しては目立って増えているとまでは言えないかもしれません。
特に2月の棄権試合数に関してはコロナ感染の影響が非常に大きく、コロナの要因を除いた数字で見れば10年前と今でも、1〜3月の数字に関しては目立って棄権者数が増えたとは言えません。
ただ、4月以降の数字に関しては突出しています。
4月は23の興行があり16試合で、5月は12の興行があり11試合で棄権者が出ています。
大半の試合において誰かしら棄権者が出ていたという事になりますし、これは10年前の統計と比べても突出した数字です。
特に悲惨なのは新人王トーナメントで、10年前と今とでは出場選手の数が全然違うので、棄権者が出た時の興行に与えるダメージが尋常ではありません。
10年前であれば15試合予定されていた中の2試合が中止。
今は7試合予定されていた中の3試合が中止。
10年前であれば2試合中止になっても13試合分は楽しめました。チケットも3,000円とかあったよね。
今はこれが7試合で3試合中止。わずか4試合で最安チケットでも5,000円。会場によってはプラスでドリンク代も。
エンタメとしては完全に崩壊しています。
2022年4月に棄権数が激増した原因
続いて何故2022年の4月に棄権者数が激増したのか原因を考えた時に、一要因として4月22日の谷口選手と石澤選手のWBOミニマム級タイトルマッチでの石澤選手の体重超過があると個人的には考えています。
科学的根拠はありませんが、大きな試合での体重超過があると、その年の体重超過等による試合の棄権者数が増える傾向が過去にもありました。
2018年はルイス・ネリ選手が大幅な体重超過を起こした事で減量失敗が取り沙汰された年でしたが、この年の9月に比嘉大吾選手も計量失敗で世界のベルトを剥奪されており、1年間で11名もの選手が体重超過によってJBCに処分される異例の年でした。
▶︎計量失敗、体重超過したボクサーのその後〜石澤開はどこへ向かう?
この記事で世界戦のような大きな舞台で計量失敗が起きると、負の連鎖で他の興行でも計量に失敗する選手が出てくる点を危惧しておりましたが、今年はこの流れからするとそうした1年になってしまいそうです。
残念ながら5月の興行においても選手の棄権による試合中止が相次いでおり、今年は試合中止リスクが高い1年になると考えられます。
試合中止から選手を守る必要性
2022年4月の棄権数を見て、ここまで棄権者がいる以上は対戦予定だった選手を守る仕組みの必要性を感じています。
例えば旅行であればキャンセル規定があり、1週間前だと50%、直前だと100%負担と、キャンセルしても費用負担を負いますが、ボクシングの試合においては棄権した側に費用負担義務が発生する事はありません。裏では何かしらあるかもしれませんが(昔、自分も怪我で試合中止しかけたことがありましたが、その際にジムから相手選手のファイトマネー負担することになるかもしれないぞと話がありました)。
棄権した側に費用負担義務がないとすると、試合を棄権する側は調整ミスによる敗戦の可能性をチャラに出来、棄権された側はこれまでの努力がパーになるだけです。
今の状況では棄権する側の負担が軽すぎないでしょうか。
過去に計量に6.9キロも超過した状態で表れた選手もいました(参照記事はこちら)。情けない話ではありますが、選手を守る上でジム側がもう少し選手の体調管理、体重調整に責任を負うようにしないと今後も被害を受けるボクサーが跡を立たなくなってしまいます。
金銭に関してはジム間で直接やり取りをするとトラブルを招くので、JBCのような統括団体が間に入り、試合2週間前であればファイトマネー相当額の50%、試合前日や当日であれば100%を統括団体が棄権した選手のジムから徴収、徴収した額から数%の手数料を除いた額を対戦予定だった選手に支払うといった仕組みの導入に向けた検討を進めてはどうでしょうか。
棄権に関しては気の毒なケースも勿論ありますが、試合を棄権する選手の情報や所属ジムを調べていると、同じ選手が複数回棄権しているケースや、特定のジムから棄権者が複数出ているケースが多数ありました。
棄権する側の選手、ジムに棄権する事のリスクを自覚させるためにもこうした制度の導入を是非とも検討いただきたいです。
頑張って練習して減量したにも関わらず、対戦相手が6キロも体重超過してきたら、自分だったらメンタル崩壊します。。
計量前日の夜とか当日計量終えるまではもう地獄でしたもん。
まとめ
10年前と今とで選手の棄権数はイメージしていたほどには増えていませんでしたが、2022年4月の棄権者数は突出しており、5月の興行に関しても複数の選手の棄権や減量失敗が取り沙汰されている状況にあります。
一度試合を棄権した選手が棄権を繰り返すケースも多々ありました。
余計なお世話ではありますが、一度試合を棄権した選手とのマッチメイクはくれぐれも慎重になった方が良いです。
具体的な名前を挙げてしまって恐縮ですが、3150FIGHTサバイバルで対戦予定だった山下賢哉選手と福永宇宙選手の試合は、福永選手が調整途中でコロナに感染したことを理由に延期されました。
福永選手は過去にも一度強敵との試合を棄権しており、戦績は無敗です。
棄権に至った細かい事情はわからず、あくまで実績からみた憶測ではありますが、再び直前にキャンセルされるリスクが非常に高い選手ではないかと感じております。
延期の方向で調整するにしても、山下選手が所属するJBスポーツの陣営の方々は、再度の棄権が生じた場合の罰則を特別に設ける等、この試合の延期に関しては慎重に協議をした方が良いと思います。
最後になりますが、メンタル崩壊で試合当日に逃げ出した野口将志選手が中止の経緯を発表しました。
この事の是非は問いませんが、この声明を読み、しんどい状況から逃げたい自分を肯定化し、棄権へと走る選手はこの先絶対に出てきます。
これからチケットを買われる方はくれぐれもご注意ください。