元WBC女子フライ級王者の真道ゴー選手が男子ボクサーとして復帰する可能性が高まってきました。
かねてからFTMを公表していた真道選手が性適合手術を受けて女子ボクサーを引退したのが2017年。
引退時にいずれは男子としてリングに上がるという夢を語っていましたが、ついにその時が近づいてきました。
賛否両論の真道選手の男子ボクサーとしての復帰について、反対意見を紹介した上で、過去の前例を紹介しつつ、真道選手の挑戦が非現実的なものではないという事を述べさせていただきます。
真道ゴー選手の挑戦に対する否定的な意見
真道ゴー選手が男子ボクサーとしてリングに上がる事については、国内では初の試みのため否定的な意見も多く見受けられます。
- 性を変えても骨格は変えようがないから危険
- 性転換しても体は女性
- 上半身裸は見られない
- 男性ホルモン(テストステロン)がドーピングになるのでは
- 女性→男性が認められるのなら男性→女性も認められるという理論になる
どれももっともな意見でもあるかと思いますが、いくつかの懸念についてはやや実態から乖離しているようにも見受けられるので、過去の前例も紹介しながら持論を展開したいと思います。
過去に女性から男性となってリングに上がったボクサー達
調べきれた範囲において、海外の事例ですがアマチュアボクサーとして1名。がちのプロボクサーとして1名の選手が過去に女性から男性となってボクシングのリングに上がっています。
諸々批判や懸念はあるにしても、実際リングに上がった前例があるという点は重要な判断材料となるでしょう。
男性として聖地マディソン・スクウェア・ガーデンのリングに上がったアマボクサー
1人目はプロボクサーではありません。
が、ボクシングの聖地マディソン・スクウェア・ガーデンでボクシングの試合をしています。
リングに上がったのはトランスジェンダージャーナリストのトーマス・ページ・マクビー氏。
写真見てこの方の元々の肉体は女性だったとはとても思えませんよね。
書籍読みましたが、テストステロンの投与で結構変わるみたいです。
生まれ持った肉体としての男と女。
性自認としての男と女。
男らしさと女らしさ。
男らしさの象徴にあるボクシング。
性別を変えただけでなく、男らしらの象徴であるボクシングに挑戦したマクビー氏の話。
ややマニアックなテーマではありますが一読に値します。
肉体は男で性自認も男でも、男らしさは求めていない人もたくさんいるし、生まれ持った体は女で性自認は男でも、男らしさは別にいらないって人もいますよね。
本論から外れるのでここまでにしますが、こんな人もいるのかと興味を持たれた方は是非書籍を手に取ってみてください。
ちなみに実際の試合の様子は以下で視聴できます。
わずか5ヶ月のトレーニングでリングに上がっているので動きはガチャガチャですね。
プロボクサーとしてリングに上がったパトリシオ・マニュエル選手
続いて紹介する選手は本物のプロボクサーとしてデビューしたパトリシオ・マニュエル選手。
元々女性としてアマチュアボクシングのリングに上がっていた選手なのでボクシングスキルもかなり高いです。
デビュー戦はメキシカンのパンチありそうな男性ボクサーのパンチを避けながら着実にパンチをヒットさせてポイントアウト。
フットワークがやや女子ボクサーっぽい感じがしましたけど、試合内容は相手を捌いて有効打を重ねて完勝。
真道選手が男子のリングに上がった場合も恐らく同じような展開になるのではないかと大方の人が予想するでしょうが、真道選手の場合、ハートが強いし、危険を犯してつい打ち合うような気もしています。
勿論リングに上がるまでは絶対そんな素振り見せないでしょうが、真道選手の場合はリングに上がったら熱くなってやらかしてしまうような気がしています。
真道ゴー選手の実力は男子として通用している
真道ゴー選手の公開スパーの様子がニュースでチラッと流れましたが、その動画を見る限り真道選手の実力はプロテストに合格して4回戦のリングに上がる点に関しては十分クリアしています。
復帰する場合の階級はスーパーフライ級かバンタム級辺りでしょうが、むしろデビュー戦で真道選手と戦うボクサーが気の毒なくらいです。
骨格を気にする意見も多くありましたが、ボクシングは階級別の競技なので、戦う相手は自分と同じ体重。真道選手の挑戦を骨格の問題で危険というのであれば、シバターVS久保優太の試合の方がもっと危ないです。
あれは体重も骨格も明らかに違うもの同士の試合でしたので。あっちの方がよっぽど危ない試合でした(しかもMMA歴もシバターの方が上)。
男性と女性の筋肉の違いという問題はありますが、この点も性適合手術を受けて定期的に男性ホルモン(テストステロン)を投与しているので普通にゴツイです。
女子ボクサーが女子ボクサーの体のまま男子と試合をするのとはそこは違います。
この点に関してはドーピング問題も絡んできますが、体格面、実力面で挑戦は危険だという主張に対しては実際の真道選手のボクシングを見てから判断して欲しいと思います。
上半身裸は見られない?
性適合手術を受けたとは言え、元は女性なんだから上半身裸は問題ではないかという意見も見られました。
その点に関してはご安心ください。
既に真道さん普通に上半身裸で出没していますので。
何も言われなければ元女性だとは誰も思わないと思います。。
ドーピング問題について
男性ホルモン(テストステロン)を投与する点についてはドーピングとの兼ね合いが懸念されており、もしかしたらこの点が男性としてリングに上がる上での大きなハードルとなっているのかもしれません。
ですがFTMの方が男性ホルモンを投与しても、一般男性の平均値以上までテストステロン値が上がることはないようです。
真道選手の場合も平均値以下のようですし。
数値上反則と言えるような水準ではないですし、むしろ元々の肉体からしたらハンデとなる側面の方が多いわけですし、海外でもリングに上がった事例があるわけですから認めて良いのではないかなと考えております。
真道ゴー選手準公式戦で男子ボクサーと試合も判定負け
2023年12月10日、真道ゴー選手は「CRASH BOXING vol.30」の興行で姫路木下ジムの石橋克之選手とJBC準公式試合というものを実施しました。
プロテスト受験のための判断材料の一つとするような試合なのでしょう。
残念ながらこの準公式戦で真道選手は3Rにダウンを奪われての判定負け。
結果は黒星となりましたが関係者の評価は上々だったようです。
これで男子ボクサーとしての道が開ける可能性もありますが、一方で真道ゴー選手の方がこれを一つの区切りとする可能性もあるとは思います。
まとめ
今回の記事のまとめです。
真道ゴー選手の男性ボクサーとしての復帰に対しては否定的な意見もありますが、
- 海外では前例もある
- 実力的には男子4回戦ボクサーのレベルは十分満たしている
- 上半身裸も何ら問題ない
- 骨格の問題はあるがボクシングは階級性なのでそこまでのハンデとはならない
- 筋肉の問題も男性ホルモン(テストステロン)の投与である程度解消されている
- 男性ホルモンを投与してもテストステロン値が一般男性の平均を超えることはない
という具合に一つ一つ課題はクリアされているように見えますので、男子としての再デビューに向けて前向きに動いてよろしいのではないでしょうか。
「これを認めるならMTFのアスリートの女子競技への参加も容認することになる」
という問題は確かにありますが、そこはテストステロン値に基準を設ける等の対応である程度カバー出来るのではないでしょうか。
僕の知人で男性から女性になった方がいますが、女性ホルモンを投与していくことで筋肉が落ちで体がふっくらしていったという話を聞きました。
それでも一般女性と比べれば身体能力的に有利だという点に変わりはないとは思いますし、 MTFの場合にはもう少し慎重な議論は必要かもしれません。
ただ、だからと言って真道選手のケースを認めない主たる理由とはなり得ないですし、一歩も踏み出さないよりは出来るところから初めていってはいかがでしょうか。
真道ゴー選手が、真っ直ぐに信じた道を突き進んで未来の扉をこじ開ける事を願っています。