ボクシングニュース 観戦記

井上尚弥の左ボディはなぜ当たるのか〜ダスマリナス戦を振り返る〜

昨日の井上尚弥の世界戦は圧勝でしたね。開始早々はダスマリナス選手ガードをしっかりしてきて対策を練っているかと思いましたが、ガードした時に下を向いてしまっていたので「あー駄目だ。ボディで終わりそうだな。」と思った矢先に倒してしまいました。

↓右ストレートで倒すという私の予想はここで思いっきし外れてしまいました。。

▶︎マイケル・ダスマリナスの弱点!井上尚弥次戦は序盤KO必至【ボクシング】

ダスマリナス選手はサウスポーでしたが、サウスポー相手の左ボディはめちゃくちゃ有効だけど当てるの相当難しいんです。ということで今回はサウスポー相手になぜ左ボディが有効なのか、そしてなぜ当たらないのか、井上選手がどうやって左ボディを当てたのかを詳しく解説したいと思います。

サウスポー相手に左ボディが有効なわけ

試しに自分のお腹を左側と右側を交互に叩いてみてください。

ボクシングをやったことがない方ですと意識した事まずないと思いますが、軽く叩くだけでも右側を叩いた時の方が痛いのがわかると思います。

なぜこんなにも違うのかと言うと、上の図の通り右側には肝臓(レバー)があり、お腹の右側を叩くと肝臓がダメージを受けて激痛とともに、呼吸が出来なくなります。

腹筋をいくら鍛えてもクリーンヒットを貰ってしまったら耐えるのは至難の技です。でも、私もボクシングをやっていてサウスポーでしたが、左ボディをまともに貰うことなんて滅多にありませんでした。

サウスポーの場合は急所の右ボディが前に出ているので一見当てやすいように見えるかも知れませんが、実は当てるのすっごく難しいんです。その理由を次で解説します。

サウスポーに左ボディを当てるのが難しいわけ

サウスポースタイルの人は右構えの人と比べると半身になる構えをします。正面に立つと相手のストレートが直撃してしまうので、半身になって的を狭くしているのです。

サウスポーの構え

こうすることで顔だけでなく、相手から見えるボディの的も狭くなります。この状態で更に右肘を下げて右ボディを守ってしまったら打つところが殆どありません。

それに相手が左ボディを狙っていても、右手を伸ばしながらバックステップすれば左ボディは届きません。特にダスマリナスは長身のサウスポーなので相手の左ボディを貰うことなんて今まで殆どなかったと思います。無理に距離を詰めて左ボディを当てようとすると、サウスポー相手に正面に立ってしまうことになり、カウンターの左ストレートをモロにもらってしまうリスクがあります。

このようにサウスポー相手に左ボディを当てるのは非常に難しく、リスクも高いものなのです。

サウスポー相手に左ボディを当てようと思ったら、距離を詰めた上で、肘を上げさせるか、背中側からボディを叩くしかありません。肝臓は背中側から叩いても効きます。

ただ、背中側を叩くのも簡単ではありません。サウスポーの選手は相手の前足の外を取るのが上手です。たまにしかサウスポーを相手にしない右構えの選手と比べたら、いつも相手の外を取る練習をしているサウスポーの方が外を取るのが上手なのは当然かと思います。

上の試合映像でもわかるように、ダスマリナス選手も基本的には井上選手の外を取って戦っていました。

この状態をキープしていれば、相手の右ストレートも左ボディももらいにくくなります。

なぜ井上尚弥の左ボディはあんなにもヒットしたのか

これだけ当てるのが難しい左ボディを井上選手はなぜ何発もヒットさせる事が出来たのでしょうか。

井上選手が左ボディを当てるために取った戦術を以下に挙げます。

  1. ジャブで相手を下がらせ、ロープ際に追い詰めてバックステップで避けられない状態を作る
  2. ダスマリナスがガードを固めている間に外を取る
  3. 右ストレートでガードを固めさせる
  4. 左右のアッパーで肘を上げさせボディを打てる空間を作る

この全てを僅か1Rの様子見で感覚を掴み、2R目に実行して捕まえてしまったのです。界1位を相手に!!

ダスマリナス選手は1R目から積極的に足を使っていましたが、簡単にロープに詰められていた事からも自分で足を使っていたというよりも、井上選手に動かされていた事がわかります。

ロープに詰められたところで井上選手が打った右ストレートにガードを固めさせられ、続けて飛んできたアッパーを耐えるために下を向いてしまっていたので、そこでボディとガードの間に空間ができてしまいました。

アッパーで下を向いてしまったところでTHE・ENDでした。

相手がガードを固めている間に足もちゃんと外を取っています。ガード固めて下を向いてしまった状態では打ち終わりにカウンターを合わせる事も出来ませんが、こういう時も井上選手のガードはしっかりしています。

まとめ

今回の試合では圧倒的な力を見せつけた井上尚弥選手。

今後はバンタム級の全ベルト統一や階級を上げる事が目標になってきますが、実力を世界に認められ、人気も上がった事でベルト統一に向けて周囲も最大限バックアップしてくれるでしょう。

強くても人気のない選手でしたら、そんな選手にベルト統一されちゃったらお金にならないので周囲が味方してくれません。井上選手は人気面でも文句のないところまで上がって来たので、統一の機会は周囲が作ってくれるでしょう。

階級を上げた場合には階級の壁にぶち当たる可能性もありますが、踏み込みのスピードも早くパワーもある井上選手でしたらもう2階級くらいまでは制覇出来ると思います。

  • この記事を書いた人

torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。ボクシングニュース、3150FIGHTネタ、各種ボクシングデータ、新人王トーナメント、選手紹介等のボクシングブログを書いています。

-ボクシングニュース, 観戦記