こんにちはTorajiroです。
日本ボクシングウエルター級チャンピオンだった大曲輝斎さんが池袋でホームレスをしている!?という噂を聞き、大曲さんが紹介されていたアットホームチャンネルというホームレスにスポットを当てたYoutubeチャンネルを視聴しました。
大曲さんは好きなボクサーの1人で後楽園ホールにも良く試合を観に行っていました。KO率が高く、大らかなキャラでファンも多い選手でした。
そんな大曲輝斎さんがホームレスをしているという噂にはちょっとショックでしたが、動画で元気な大曲さんを見て少し安心しました。
まずは大曲さんがなぜホームレスになったのかを確認し、大曲さんを知らない方向けに現役時代の実績を振り返り、最後に現在の様子を紹介します。
大曲輝斎さんがなぜホームレスになったのか
大前提として大曲さんは完全なホームレスではありませんでした。板橋に家は借りています。
が、「住んでいる家にオバケが出た、ここにいれば仲間がいる。」という理由で池袋の路上で段ボールを敷いて仲間と飲む日々のようです。なので本当のホームレスではありません。ただ、生活保護で暮らしていて仕事はしていません。
元々はディスカウントショップで働いていて、店長も勤めていましたが、子供が生まれてから鬱を発症。
子供を抱っこして降りられない崖に立っている夢に苦しめられたそうです。


人生の絶頂。一番幸せな時に何故。
と思う気持ちと、どこかわかるような気持ちと、二つの相反する感情が我が身を押し寄せ、この夢の話は自分の心に強く刺さりました。
自分の話になりますが、私も元プロボクサーですが子供が生まれ、今後の生活の安定を考えてボクシングを辞めました。めちゃくちゃ幸せだったのですが、一方で夢を諦め、生活の安定を求めている中で心が不安定になっていたのも確かです。
自分が働けなくなったら家族は路頭に迷う。働かないとこの子を養っていけないと不安が押し寄せたり、辞めたボクシングの事が諦めきれなくて体が疼いたり、あの当時の事を思い出すと幸せと同時に苦しんだ心の葛藤が思い起こされます。
大曲さんも子供を養っていかなければというプレッシャーがあり、それが悪夢という形で表出されてしまったのでしょうか。奥さんや子供からしたら良い迷惑かもしれませんが、本人がそこまで追い詰められる以前に何かセーフティーネットはなかったのか、そう考えさせられます。
芥川賞作家の平野啓一郎さんが出した「空白を満たしなさい」という小説があるのですが、この本を読むと上述の葛藤に通ずる心のうちが良くわかるので是非読んでみてください。
やや脱線しましたが、こうして鬱を発症し、働けなくなった大曲さんは離婚して現在は生活保護で暮らす日々を送っております。
自分の周りの元ボクサーでも鬱を発症して生活保護で暮らす仲間や、仕事をクビになって無職の仲間がいます。瞬間、瞬間に命をかける生き方をしてきた代償なのでしょうか。
自分が超えられなかったリミットを軽々超えてすごい事をやってのけてきた彼らが、生活保護で暮らす現実にはやるせない気持ちになります。
大曲さんも含め、あんなとんでもない才能を持った彼らがこうして燻る現実。
これは非常に勿体無い。社会的損失だと僕は感じています。
障害者雇用には精神障害も含まれており、今後社会でどんどん拡充されていくはずです。
日本は障害を持った方に対する学習支援や就労支援が遅れておりますが、今後は急速に環境が整備されていくものと期待しております。
>>障害者のための就労移行支援事業所 LITALICOワークス


大曲輝斎さんの現役時代の戦績
さて、ここで大曲輝斎さんの現役時代の戦績を紹介します。
戦績は25戦18勝(17KO)4敗3分。ウエルター級のB級、A級トーナメントを制し、第43代日本ウエルター級王座に君臨し、3度の防衛に成功しました。
大曲さんのことはA級トーナメントあたりから注目していましたが、戦績が表す通りスピードはそんなになかったですが一発の破壊力が魅力の選手でした。
かといって振り回すボクサーだった訳ではなく、ガードもしっかりしていて、相手が打ってくればジャブで合わせ、来なければ自分から行く基本に忠実なスタイルのボクサーでした。
日本タイトルを獲った時の1R目開始早々に走っていって殴り倒した試合のインパクトが強すぎて、振り回すファイターのイメージがありますが、実際はちゃんとボクシングをする選手でした。
この試合も本能で走っていって殴った訳ではなく、試合開始前から湯場選手のゴングが鳴ってからの入りが遅い事を分かった上での作戦でした。よく見ると1R目ゴングのタイミングでトレーナーが背中叩いて「いけ!」と押し出しています。放ったパンチ3発で3度倒してタイトル奪取。この試合をみたら大曲さんのパンチがいかに殺人的か良く分かります。
大曲輝斎さんのトレーナーはしずちゃんも指導したあの方
湯場選手との日本ウエルター級タイトルマッチで大曲さんに横で真剣な表情でアドバイスを送るこのトレーナー。

この方の名前は梅津正彦さん。南海キャンディーズのしずちゃんがボクシングに挑戦していた時にはトレーナーを務めていた方で、それもあって一時期メディアに良く出ていましたが、メラノーマという皮膚ガンを患って2013年に44歳という若さで亡くなられました。
個人的にも少しお世話になっていた方でしたので、大曲さんの試合がある時には応援に行って試合後の控室で挨拶をしておりました。
大曲さんがピンチになっている時に、インターバルが終わり送り出す時に会場に響くくらいの背中ビンタで気合を入れていた姿が印象的でした。
大曲さんも試合後のインタビューでパンチよりも梅津さんのビンタのダメージがデカいという話をして会場を笑わせていましたっけ。
新井恵一選手とのタイトルマッチで大曲さんが9R逆転KO勝ちした時には、梅津さんは控室で「危なかった〜こんなところで終わってしまうのかと焦った」と話をされていました。間違いなく世界を意識していたと思います。
その後、残念ながら大曲選手の目の怪我で夢は途絶えましたが、情熱的で論理的に基本をしっかり教える素晴らしいトレーナーでした。練習はちょっとキツすぎたと思いますけど、、
テレビのドキュメンタリーで息子さんが運動会で1等勝になって泣いていた梅津さん。
「この瞬間のために俺はガンになったのかな。」そう語っていた梅津さんの姿が今も忘れられません。
天国の梅津さんは現在の大曲さんをみて何を思うのでしょう。もし生きておられましたらきっと厳しいことを言いながらも、大曲さんが引くくらいの情熱で何とかしようと動いたでしょうね。
大曲輝斎さんの現在
現在アットホームチャンネルでは大曲輝斎さんがトレーナーとして復帰出来るよう、受け入れ先のジムを探し、連絡のあったジムに大曲さんを連れていったりと、復帰に向けた支援をしてくださっています。
アットホームチャンネル管理人の青柳さんには感謝しておりますが、一つ気になるのが大曲さんのアルコール依存症です。
足立区鹿浜にある鹿浜ボクシングジムが、大曲さんの受け入れに手を挙げてくださったのですが、約束の日に大曲さんは飲酒をしてしまいました。
酒を飲んでしまったので今日は会えないという大曲さんを説得し、鹿浜ボクシングジムに連れて行く様子がアットホームチャンネルで流れていました。
鹿浜ボクシングジムのキリュウ会長は、大曲さんに対し時給1,000円で主に子供の指導をお願いしたいと提案し、青柳さんも自宅からジムまでの交通費を支給すると提案し、大曲さんも固い握手をしてやる気を示していました。
アットホームチャンネルでは今後も大曲さんの動向を配信するようですので要チェックです。
まとめ
大曲さんがホームレスという噂を聞いてショックでしたが、実際は完全なホームレスという訳ではなく、そこには安心しましたが、この先、昼間からの飲酒が習慣化した大曲さんが自力で酒を断つのは難しいでしょう。
特にジムでトレーナーをするとなったらプレッシャーがかかります。そのプレッシャーから逃れるためにお酒に手を出してしまう可能性が非常に高いです。
大変興味深い企画ですが、まずは依存症から抜け出すため、自立支援施設で治療を受けることが先決ではないかと動画を視聴して感じました。
約束してもプレッシャーから飲酒してしまい、自分を責め、その苦しみから逃れるために更に飲酒してしまうという悪循環に陥らないことを願っております。
アットホームチャンネルでは他にも様々な境遇でホームレスになられた方が紹介されています。普段中々聞けないリアルな話が聞ける学びの深いチャンネルですのでお勧めです。
【2022年1月15日追記】
アットホームチャンネルの動画を視聴してからずっと気になっていたのが大曲さんのアルコール依存症でした。
この状態ではトレーナーをやるというプレッシャーがアルコール依存を加速させてしまうのではないかと、その懸念を元に書いたのが以下の記事です。
>>元ボクシング日本王者大曲氏がホームレス状態からトレーナーへ 依存症に勝てるのか?
この記事を書いた後の動画で大曲さんがジムに行って子供達を指導している姿を見て、精神力の強さにとても感動しました。
が、その後の動画で現在大曲さんがアルコール依存症施設に入院している事がわかりました。
結果的に入院してしまいましたが、これに関しては見方を変えれば一歩前進と考える事も出来ます。
過去にも何度か大曲さんは依存症で入院していたそうですが、その時にはアルコールが抜けて鬱を発症させていたそうですが、今回はそれがないそうです。
退院後にやることがある。そう思える事が大曲さんの背中を強く押していると僕は思います。
アルコールが抜けた状態で退院し、トレーナーとして目標を持って生きる事が依存症克服に繋がると信じています。