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【週刊現代】坂間叶夢選手『死の真相』記事に想うボクシング界の安全管理問題

torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。一人でも多くのプロボクサーの戦った証をネット上の記事として残していきたいと思いブログを開設。

先日亡くなられたプロボクサー坂間叶夢選手のお父様の告発記事が週刊現代に掲載されました。

お父様の視点から見た坂間叶夢選手が亡くなられた原因が書かれており、「息子はボクシングジムに殺された」とセンセーショナルな見出しがつけられておりました。

記事の内容に関してはあくまで片方の立場からの主張と受け止めております。

記事中で坂間選手のお父様はボクシングジムの安全管理面について問題提起しておりましたが、この機会に紹介したいアンケート調査結果があったので本記事を書いております。

  • 何故怪我をしているのに坂間選手は試合を受けたのか?
  • もっと早くに棄権する、試合を延期するという決断は下せなかったのか?

訃報とその原因の一旦を知り、こうした疑問を抱いた方は少なくないでしょう。

しかし選手は果たして自らの口から怪我を報告し、試合の棄権を申し出るものでしょうか??

選手は怪我をしても報告しない!?

以前「ボクシングにおける死亡事故とラウンド数の相関」という記事を書いた際に「第 26 回日本臨床スポーツ医学会学術集会」で発表されたデータを引用しました。

この時紹介した論文には「プロボクサー632名からのアンケート調査結果」の一部も言及されており、

以下の点が問題として取り上げられておりました。

  • スパーリングなど試合前の練習中に体調不良があった者:15.6%
  • 試合当日も体調不良があった者:5.4%
  • 試合後では,KO・TKO負けの後何らかの症状があった者:47.5%
  • KO・TKOの有無にかかわらず,試合翌日以降も何らかの症状が続いた者:30.2%

であるにもかかわらず,

KO後の自己管理で医療機関を受診した者は7.7% に過ぎなかった.

また,日常も症状が続く者も16.8%存在し,恐らくトレーナーなどには申し出ず,管理が不充分であることがうかがえた.

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このアンケート結果をみると、練習段階で怪我や体調不良があっても15.6%の選手は試合をしたということが分かります。

更にKO負け後に医療機関を受診した選手の割合も少なく、選手自身の自己管理面も含めてボクシング業界全体の安全管理が不十分である様子が想像出来ます。

安全管理が不十分なのはジムだけの問題なのか!?

では坂間選手の悲劇が起きてしまったのはボクシングジムだけの問題なのでしょうか?

僕は自戒の念も込めてそうではないと感じています。

  • 怪我も実力のうち。
  • 万全の体調でリングに上がれることの方が少ない。
  • 怪我をしていても試合をして勝つのが本物だ。

スポーツの中でも特に格闘技の世界においてはこうした美学が語られる場面が多いように感じます。

他人事ではなく、僕自身もそうした怪我を隠してリングに上がり奮闘するボクサーに感動を覚えている人間の一人です。

こうした安全管理上はよろしくない場面にファンは感動し、

ジムも選手もそれがファンから求められている世界観だという発想になっている面はないだろうか?

そんなことを週刊現代の記事を読んで感じました。

『ここで逃げていてはチャンピオンになれない。』

選手がそういう発想でいたとして、その発想を持った選手が怪我をしたとします。

怪我をした事実に対し、ジムとしては選手の意志を尊重するという判断をしたとします。

判断を委ねられたこの選手は絶対に試合を受けるでしょう。

「選手の意志を尊重」は聞こえは良いですが安全面では非常に危ない。

だからリング上にはレフェリーがいて、セコンドもリングに上がることで試合を止められるシステムになっています。

準備段階から危ない時には誰かが止められるような環境の構築、そしてそうした価値観の醸成が求められるのではないでしょうか。

目先よりも選手の未来を見据えた育成へ

坂間叶夢選手の訃報は日本のボクシング界全体にとっても大きな損失です。

坂間叶夢選手はかなりの確率で近い将来世界チャンピオンになってボクサーとして稼げる選手になっていたはずの選手でした。

  • 死ぬ気で戦う。
  • この1戦に全てを賭ける。

そういう意気込みで戦う試合もあるでしょうが、坂間選手はまだ20歳の若者でした。

まだ若く、プロとしてこれから10年以上成長していける選手でした。

目の前の試合に対してここまで追い込む必要なんて無かったし、本人がいくらやるといっても、ボクシング界の空気が今と違えば「無理はさせない」という判断を下せたのではないだろうか。

あくまで結果論、単なる外野の戯言ではありますが、自戒の念も込めつつ、目先の結果よりも未来志向の発想で選手を応援していきたいと週刊現代の記事を読んで強く感じました。

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