2026年4月4日(土)、後楽園ホールで行われた日本Sライト級王座決定戦は川村英吉選手が藤田炎村選手を返り討ち新王者に。
この試合で藤田炎村陣営が選択した戦術は個人的な予想とは真逆で意外な立ち上がりとなりました。
全ては結果論ですが、戦前の予想と実際の試合展開について考察します。
なぜあの戦術を選択したのかと考えさせられる1戦でした。
戦前予想は中間距離なら川村・接近戦なら藤田
戦前の予想はおそらく大方のファンと同じで中間距離なら川村英吉選手が優勢と見ていました。
川村選手を指導する佐藤トレーナーはジャブと距離の掌握を教えることに長けた名トレーナー。
かつて佐藤トレーナーが担当したどっしり型の加藤善孝選手、万能型の岡田博喜選手はいずれもジャブと距離に秀でていた。
そして現在担当する富岡樹選手や川村英吉選手らもジャブと距離の掌握に秀でた選手。
一体どんな魔法を使っているのかと疑問に思うほどに、タイプの異なる様々な選手がすべからくこのストロングポイントを持っている。
バックに佐藤トレーナーがいる川村英吉選手に対し、藤田炎村選手も自身の超ストロングポイントである接近戦と豪打で対抗してくると予想していました。
ただ、前戦では藤田選手のジャブも結構当たっていて、差し合いは意外と五分五分ではあったため、陣営がどういう選択をしてくるかは読めないところではあった。
前半決着なら藤田炎村、後半にもつれるなら耐久力と回復力のある川村英吉。
という見立てもしていた。
しかし試合は全てにおいて自分の予想が大きく外れるものとなりました(汗)。
藤田炎村はL字ガードで中間距離の戦いを選択

険しい表情の藤田炎村、リラックスして笑顔の見える川村英吉と両者対照的なリングインからジャブの差し合いで試合はスタート。
1R目、どっしり中央で戦う川村選手のジャブ、フックが良い。川村英吉選手の仕上がりは前回以上だ。
一方の藤田選手は時折L字に構えてジャブを突き中間距離での戦いを挑む。
畑山VS坂本戦でデトロイトスタイルを選択した坂本さんが頭をよぎった。
この展開だと川村選手に分があるのは明らか。
L字ガードの藤田選手に川村選手のワンツーがクリーンヒットするのも時間の問題ではなかろうか。

そう思った2R、逆に藤田選手の右フックが川村選手にジャストミート!!
川村選手は藤田選手の右に左フックを合わせようとしていただけにダメージも甚大。
これで決着も十分あり得る一撃だったがここを何とかサバイブ。
川村選手は1分のインターバルで回復し、藤田選手も無理に攻めなかったので3Rは再び川村選手のジャブのペース。
そして4R、L字ガードの藤田選手に川村選手がワンツーで踏み込むと右がテンプルに当たり藤田選手はダウン。

恐れていた展開が現実に。
5Rからは藤田選手もガードを固めて接近戦の場面を増やし、ボディから顔面に強打を打ち込む。
川村英吉ペースから徐々に藤田炎村ペースへと移行していった。
藤田選手が接近戦を仕掛ける場面が増えると、川村選手も疲労からか運動量が落ち、藤田選手のジャブも当たりだす。
中間距離での戦いも互角になっていった。
しかし9Rは川村選手が意地を見せ、右から返しの左フック、疲れの見える藤田選手にテンポよくジャブを打ちワンツーではっきりとしたポイントを取る。

最終ラウンドは藤田炎村が最後の追い上げ見せたが判定は2対1で川村選手を支持。
タイトルマッチで一段上のレベルに上げてきた川村英吉が一発でベルトを奪取した。
全ての予想が外れた試合展開
前半なら藤田、後半なら川村の予想は外れ、前半は川村で後半に藤田選手が追い上げる展開となった。
藤田選手も接近戦ではなく川村選手の土俵での戦いを選択。
全てにおいて予想を大きく外した試合となりました。。
何故藤田炎村選手は序盤にあの戦い方を選択したのか??
決して打たれ強くはないのにワンツーをもらうリスクの高いL字ガードを選んだ理由は何だったのか??
しかし藤田選手が2Rに右フックをジャストミートさせたのも事実。
あれで試合が終わっていた可能性だってあったはず。
加えて5R以降、川村選手がペースダウンしてからは藤田選手のジャブもよく当たっていた。
仮に藤田選手がスタートからガードを上げての接近戦を仕掛けた場合、ジャブで迎え打たれて攻めが単調になっていた可能性もある。
中盤に藤田選手に一時ペースが傾いたのも接近戦一本ではなく中間距離でのジャブがあったから。
横浜光ジム石井会長の解説を聞いてみたくなる試合展開でした。
川村英吉・藤田炎村の今後は

新チャンピオンとなった川村選手には本来決定戦で対戦予定だった渡来美響選手との1戦が待っているでしょう。
3年前に新人王トーナメントに出ていた頃、中島海二選手に大逆転KO勝利をしていた頃にはまさかこの位置まで川村選手が来ることは想像もしていませんでした。
敗れた藤田炎村選手はこの1戦に、川村選手へのリベンジに全てを賭けていたはず。
負けたら最後のつもりだったでしょうが、出来ることならもう一度自身のストロングポイントに振り切ったボクシングを見せてもらいたい気持ちもあります。
Sライト級にはチャンピオンクラスの役者が揃っている。
ファンとしてはまだまだ藤田炎村選手の剛腕を見ていたいものです。
川村英吉VS藤田炎村はボクシングの奥深さを存分に味わえる1戦となりました。
川村英吉選手、ベルト奪取おめでとうございます。過去イチ強かったです。
佐藤トレーナーもお疲れ様でした。
