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リング禍で亡くなった日本人ボクサー達の試合の記憶

torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。一人でも多くのプロボクサーの戦った証をネット上の記事として残していきたいと思いブログを開設。

※突如この記事にアクセスが集まり、その後に穴口一輝選手の訃報を知りました。言葉になりません。この記事を書いたのもリング禍はもう過去の話だという気持ちがあったから。今はただただご冥福をお祈りするばかりです。残された方は決してご自身を責めず、無理はせず、ご自身を大事になさってください。

チャンピオン、4回戦ボクサー問わず、これまで多くの選手の試合を見てたくさんの勇気をもらってきましたが、ボクシングは危険なスポーツなので怪我もつきもの。

あってはならない事ですが試合後に亡くなられたボクサーもいます。

最近はリング禍も減り、亡くなったボクサーの事が話題に挙がることも少なくなりましたが、今から10数年前には選手がリング禍で亡くなる事故が続いた事がありました。

辛い記憶にはなってしまいますが、2度とこうした事故が起こらぬ事を願いつつリング禍で亡くなったボクサー達の試合の記憶を振り返りたいと思います。

帝拳ジム所属 八重樫ら後のチャンプに勝った男、辻昌建選手

辻選手はアマチュア経験豊富な所謂アマチュアエリートの帝拳ジム所属ボクサーでした。

階級はミニマム級のサウスポー。

torajiroもサウスポーだったので辻選手の試合はテレビ中継されたものは殆ど録画して、いつもお手本にしていました。

技術も高かったのですが何よりハートが強く、激闘が多かった印象です。

僅差の判定勝ちが多かったのですが、その中には後の世界チャンピオン八重樫東選手に勝った試合もありました。

亡くなる前の6試合くらいはほぼ全て会場かテレビ中継で見ていましたが、最後の試合は所属していたジムのテレビで観戦していました。

日本ミニマム級タイトルマッチ(2009年3月21日)

対戦相手は六島ジムの金光佑治選手。

戦前予想は辻選手有利で、試合も辻選手がポイントを取っていましたが、終盤に金光選手が反撃。

徐々にポイントが金光選手に流れるようになります。

普段はスタミナお化けの辻選手の様子がなんかおかしいなぁとは思っていたのですが最終回に金光選手の怒涛のラッシュ。

ジムで一緒に見ていた選手達も驚きの金光選手の大逆転TKOでした。

出典:ボクシングモバイル

敗れた辻選手が最後までダウンせず、リング上を意識朦朧と彷徨っていた姿は今でもはっきりと脳裏に焼き付いています。

この時に辻選手のトレーナーを務めていたのが大和心トレーナー

後に山中選手とルイス・ネリ選手の1戦で山中選手がダウンした際に独断でタオルを投入した事が物議を醸し、ボクシングファンから叩かれていた方です。

辻選手の一件があったので大和トレーナーを非難する声には胸が痛くなりました。

最後までタイトルに手が届かなかった辻選手ですが、キャリアの中で辻選手が土をつけた対戦相手の中には八重樫東選手をはじめ4人の日本、東洋、世界チャンピオンが名を連ねています。

おそらく一番か二番くらいお手本として何度も映像を見た選手でした。

辻選手の最後の対戦相手となった金光佑治選手もこの試合後に硬膜下血腫と診断され現役引退を余儀なくされました。

両者共に命を賭けた壮絶なタイトルマッチが今後放送されることは二度とないでしょうが僕の脳裏には一生焼き付いているでしょう。

明石ジム所属 おもしろき事なき世を面白く、張飛選手

張飛選手は西日本Sライト級新人王のB級ボクサーでした。

最後の試合は2008年5月3日。

出典:ボクシングモバイル

場所は後楽園ホールで対戦相手は前年の全日本スーパーライト級新人王の迫田大治選手。

この試合は序盤から劣勢でかなりダメージを受けていました。

リングサイドからは「もう止めた方が良い」という声も挙がっていた記憶がありますが、張飛選手も反撃するので中々ストップの機会がなくラウンドが進んでいきました。

結果は6回2分53秒TKO負けで、その後に意識を失い開頭手術を行ったが意識が戻ることはありませんでした。

張飛選手の座右の銘は「おもしろきこともなき世を面白く」

中国残留孤児3世で、確か母子家庭だったと記憶しています。

生い立ちも大変でプロボクサーとしてもデビューから3連敗。

そこから勝ち星を重ねてきた張飛選手らしい座右の銘でした。

いつか機会があったら話しかけてみたいなぁなんてちょっと気になっていた選手でした。

この試合のレフェリーを務めていたのは確かビニー・マーチン氏。

「もう止めた方が良い」という声もあった中、ストップするタイミングが難しく6Rまで進んでしまった試合。

マーチンレフェリーにとっても難しい試合だったと思います。

野口ジム所属 サラリーマンボクサーとして活躍、八巻裕一選手

最後に紹介するのは野口ジム所属の八巻裕一選手。

出典:武士道ボクシングⅡ

この写真の出典元である武士道ボクシングのラストファイトの記事も是非ご覧になってください。

八巻選手はtorajiroと同年代のボクサーで、サラリーマンボクサーという境遇も同じで密かに応援していた選手。

亡くなる前の試合で無敗の日本ランカー安西選手を撃破してランキング入りしたばかりでした。

八巻選手は結構なハードパンチャーで短いラウンドでKOする試合が多かったのですが、安西選手を破った試合も1ラウンドKO勝利でした。

そして最後の試合は2010年2月19日。

対戦相手は今も現役で戦い続ける大内淳雅選手。

この試合は序盤から劣勢で、大内選手のパンチをかなり受けていて、

会場観戦した知人の話では会場内から「もう止めた方が」という声も聞こえていたそうです。

僕はボクシングモバイルに「八巻無念!!」というニュースが流れて亡くなったことを知り、非常にショックを受けた事を今でも鮮明に覚えています。

ブログもずっとチェックしていた選手だったので、亡くなられた事が本当に信じられませんでした。

この時期、自分も子供が生まれてボクシングを続けるか迷っていた時期で、八巻選手のリング禍を知って引退を決意しました。

まだまだ全然やりきっていないという思いはありましたが、ボクシングを続けながら子供を幸せにする自信がなくなってしまい、急激に戦う気力が無くなったことを覚えています。

八巻裕一戦から13年の時を経て大内淳雅がチャンピオンに!!

八巻選手のリング禍から13年以上が経った2023年8月5日(土)。

八巻選手の最後の対戦相手となった大内淳雅選手が5度目の挑戦を実らせ、37歳にして遂に日本ライトフライ級の新チャンピオンとなりました。

  • 直近の試合は3連敗。
  • 4月に決まっていたタイトルマッチも冨田大樹選手の棄権で流れる。

という悪い流れに加え、対戦相手の芝力人選手の方が10歳若く、パンチもあってカウンターも上手い。

誰もが芝選手の勝利を予想していたのではないでしょうか。

僕も打たれ脆さもある大内選手が序盤に倒される姿を想像していました。

しかし試合が始まると1R目こそは芝選手がキレとパワーのある左フックをヒットさせるも、2R目以降は大内選手もジャブからワンツーを当てて、打ち終わりに左フックを狙う芝選手を後手に回らせる場面を作る。

5Rの途中採点も2者が大内選手を支持。

7Rに芝選手の反撃を食らうもここを耐えて右アッパーで反撃。

そして運命の8R、右アッパーを印象付けておいての右、更に追撃の右で芝選手からダウンを奪う。

立ち上がった芝選手にこのチャンスを逃さず一気に連打をまとめてレフェリーストップを呼び込みました。

コーナーポストに上がって客席に向かい歓喜の雄叫びを上げた大内選手。

そこから上空を見上げ、天に向かって叫び、祈りを捧げてた大内選手。

天国の八巻選手に13年越しのベルト奪取の報告をしているかのような印象的な場面でした。

U-NEXTが視聴出来る方は是非この試合を最初から最後までご覧になってみてください。

僕がこの記事を書こうと思ったのも大内VS八巻戦があったから。

家庭を持ち、あの試合があって、戦う心が完全に折れてボクシングを辞めた自分と、家庭を持ってもリングに上がり続けた大内選手。

ここまでの日々にどれだけの覚悟を持って生きてきたのか、ボクシングを続けてきたのか。

それは自分の想像を遥かに超える覚悟だったでしょう。

大内淳雅選手、感動をありがとうございました。

そして心からおめでとうございます。

天国の八巻裕一選手もきっと喜ばれていると思います。

まとめ

張飛選手、辻選手、八巻選手と同時期に立て続けにリング禍で選手が亡くなりました。

タイから来日したサーカイジョッキージム選手も同じ時期にリング禍で亡くなっています。

サーカイジョッキージム選手と言えばタイで辰吉丈一郎選手に勝った男でした。

享年は19歳。

あれから早めのストップがより一層徹底されるようになり、しばらくリング禍はなくなりましたが、2013年にランドジムの岡田哲慎選手がデビュー戦後に意識を失い亡くなりました。

岡田選手の死去を受け、プロテスト受験の基準も厳しくなり、それ以降JBC管轄の試合で死亡事故は亡くなっております。

早めのストップに物足りなさを感じる方も当然いるでしょうが、身近で見ていた選手が亡くなったり、一緒に練習していた選手の対戦相手が亡くなってしまうのは本当にショックがデカいです。

「あんな時代もあったんだな」と振り返られるくらいにこの先リング禍で選手が亡くなることのないボクシングであって欲しいと願います。

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