2025年6月8日(日)に行われた令和の名勝負”中谷潤人VS西田凌佑”の観戦後記です。
パンチの振りが大きい中谷潤人選手に対し、コンパクトに最短距離で打ち抜いてくる西田凌佑。
「相性的にはもしかしたら西田凌佑は中谷潤人最大の難敵になるかもしれない。」
そんな予感もしていた一戦は中谷潤人選手がセオリー無視のまさかまさかな戦法で西田凌佑選手の技巧を粉砕しました。
1R目からフルスロットルで破壊しに来た中谷潤人
1R目のゴングが鳴ると中谷潤人選手の重心がいつになく低い。
そして開始早々からフルスロットルでジャブフックで西田選手を下がらせてから左フックをガードの上から叩きつけてくる中谷潤人。
- こんなハイペースで行ったら後半失速する。
- フルスイングに西田選手が左を合わせたら危ない。
そんな心配をしたくなる立ち上がり。
しかしこの左フックで後々西田選手の右腕は破壊され、右目も(バッティングもあったにせよ)完全に塞がることに。
ボクシングのセオリー通りであれば技巧VS技巧の対決で、どちらが真っ直ぐストレートで顎を打ち抜くか。
しかしこの日の中谷選手は顎を打ち抜くのではなく外からのパンチで西田選手を体ごと破壊する戦いを選択。
パンチも強弱ではなく全て強強で壊しにくる。
こんな戦術普通は選ぶボクサーはいません。
多彩な左フックを見せた中谷潤人
一見荒々しく乱暴に叩きつけているように見える中谷選手の左フックですが、距離によって実に多彩にこのフックを使い分けていた。
ジャブで下がらせ間合いが遠いときは横から叩きつける左フック。
距離が近ければ右肩を下げて上から角度をつけた左フック、からの右アッパーの突き上げ(アッパー何発打った?)。
西田選手が前に出て来れば重心を落とし頭を下げたところから飛んでくる左フック。これがドンピシャ。
目に飛び込んでくる獰猛さと耳に入ってくる強烈なパンチ音から獣が襲いかかっているような錯覚を与えるが、実は精巧な中谷選手の左フックでした。
コンパクトなパンチで意地を見せた西田凌佑
西田選手もただ打たれるばかりじゃない。
3Rには左から右の逆ワンツーをヒットさせ、スイング気味の中谷選手のパンチの合間にコンパクトなワンツーを放つ。
中谷選手の左に左を合わせる。タイミングは西田選手の方が良い。決まれば危ない!
中谷選手が右フックを振ってくるところへの左ボディも決まる。
サウスポーは弱点の肝臓が前に出ているのでこれは効く。
4Rも接近戦での細かいパンチで中谷選手のバランスを崩させ、左を見せてからのワンツーでクリーンヒットも奪う。
かつて世界の怪物ボクサーに日本人ボクサーが立ち向かいあわやという場面を作った姿と西田選手の3,4Rの戦いは重なった。
- アレクサンドル・ムニョスの強打に耐えながらボディを効かせたセレス小林。
- エドウィン・バレロの猛攻をかわし続けた本望信人。
今も目に焼き付く光景と重なる西田選手の追い上げ。
逆を言うとそれだけ中谷潤人選手のこの日のボクシングが怪物じみていたと言うことでもある。
西田選手が盛り返すこの間も腫れてきた西田選手の右目を左フックで狙い続ける中谷選手。
クリンチ側でも右目を打つ打つ。
弱点の顎を狙って倒すの同様に、腫れ上がり弱点となった目を狙うのは当然のこと。
フックを見せ続けた中谷潤人が放った左ストレート
このまま西田選手がペースを持っていくかもという期待もあった5R、それまで左フックを見せ続けた中谷選手が放ったワンツーがジャストミート。
このチャンスに猛ラッシュを見せた中谷選手はもはや獣。
恐怖で見ているこちらも震え上がる怒涛の攻めを見せた。
フックで外側から腕と目を破壊し、そこからワンツーでインサイドを突いて倒しにかかった中谷潤人選手。
サバンナにこんな獣いたっけ?と思わせる人間離れした猛攻。
肩の脱臼に右目も完全に塞がった上にダメージを負った西田選手は6Rになると手数が一気に減り、このラウンド終了後に陣営が棄権を選択。
もし右目が無事なら、もし肩が無事だったら、たらればを言いたくはなるが、意図的に壊しにいったものなのでやり直してもきっとどこかのラウンドで同じような状況になっていたでしょう。
中谷潤人の強打はブロックでは凌ぎきれないということがこの日の試合でハッキリしました。
まとめ:更なる可能性を見せた両選手の今後は?
無双状態の強さを誇ってきた中谷潤人選手相手に「もしかしたら!?」という場面を演じた西田凌佑選手。
1度でも負けたら引退するつもりと宣言していた西田選手ですが、この日の試合を見てしまったらまだまだ続きが見ていたい。
階級を上げたスーパーバンタム級で更なる進化を見せて欲しい。
中谷潤人選手は東京ドームでのVS井上尚弥戦への切符をこれで手にしました。
アクシデントがない限りは2026年5月に予定されていると言われる東京ドーム興行が待っています。
この日の荒々しさの中に精巧な技術も見せたボクシングが井上尚弥というビッグネームにどこまで通用するか?
決戦の時が待たれます。