日本ボクシングは長く軽量級が主戦場と言われてきました。
実際、歴代世界王者の防衛回数を見てもバンタム級以下が圧倒的です。
しかし、井上尚弥や中谷潤人といったスター選手の登場で、その常識にも変化の兆しが見えてきました。
本記事では階級別の防衛数データをもとに、日本ボクシングの現在地と未来を探ります。
階級別世界王者防衛数ランキング
では早速階級別に日本のジムに所属するボクサーが世界のベルトを防衛した総数を順位付けして発表します。
※数字は2025年6月時点のデータをもとに集計しております。
1位 黄金のバンタム級 68度の防衛

防衛数で1位となったのはやはり黄金のバンタム級。
ファイティング原田氏に始まり多くの王者を輩出してきた階級ですが、防衛数が増え始めたのは実はここ最近。
山中慎介氏の12度、長谷川穂積氏の10度。
そして何より4団体を統一した井上尚弥選手がこの階級の防衛数に大きな影響を与えています。
- WBAバンタム級を8度防衛
- IBFバンタム級を6度防衛
- WBCバンタム級を1度防衛
計15度の防衛に成功し、WBOのベルトを獲得して4団体統一王者になった後にSバンタム級に戦場を移しました。
山中、長谷川、井上の3選手のみで全体の半分以上の防衛数を稼いでしまいました。
今後も堤聖也、武居由樹、那須川天心、井上拓真、比嘉大吾で激戦が期待される熱い階級です。
2位 スーパーフライ級 66度の防衛
2位はスーパーフライ級の66度
この階級は通算10度の防衛に成功した渡辺二郎氏と通算9度の防衛に成功した徳山昌守氏の存在が大きい。
徳山氏は大手ジムではない環境から大金を払っての世界王者挑戦。
厳しい環境から無敵のチャンピオンへと成長したサクセスストーリーは熱い。時代を感じます。
井上尚弥選手もこの階級で7度防衛。
唯一無二の井岡一翔選手も通算7度の防衛。
アンタッチャブル川島敦志氏も6度の防衛に成功しています。
日本人ボクサーではないですが帝拳プロモーションのカルロス グアドラス氏も6度の防衛に成功していました。
わが道を行く鬼塚勝也氏が活躍したのもスーパーフライ級でした。
3位 ライトフライ級 56度の防衛
ライトフライ級といえば具志堅用高氏の13連続防衛記録ですが、通算の防衛回数では寺地拳四朗選手が15度。
この二人で防衛数の半分を稼いでいる状態ですが、”怪物と出会った男”田口良一氏も7度の防衛に成功した名王者。
トカちゃんこと渡嘉敷勝男氏も5度の防衛、先日引退を表明した京口紘人氏も4度の防衛に成功しています。
帝拳ジムの高見亨介選手がこの階級、もしくは一つ上げてフライ級で歴史を作っていく選手になっていくでしょう。
4位 フライ級 54度の防衛

フライ級からは多くの世界王者が誕生しておりますが、長期政権を築いた選手は少なく、最多は9度の勇利アルバチャコフ氏。
大場政夫氏と内藤大助氏そして井岡一翔選手が5度で、4度で白井義男氏に坂田健史氏が続きます。
フライ級も現在拳四朗選手が階級を上げてきたことで盛り上がりを見せていますが、早々にスーパーフライ級に階級アップするのでしょうか。
矢吹正道、ユーリ阿久井、オラスクアガと現在役者の揃った階級です。
5位以降
5位以降はSフェザー級、ミニマム級、Sバンタム級、ライト級、スーパーウェルター級と続きます。
Sフェザー級は内山高志氏の11連続防衛が数字を押し上げ35度の防衛。
ミニマム級は王座を奪取した延べ数は28度と全階級最多も、防衛回数は33度と意外と少ない。
新井田豊氏の7度とイーグル氏の通算5度の防衛、そしてここでも井岡一翔選手が3度の防衛。
怪我がなければ重岡銀次朗選手がこの階級で記録を打ち立てていたでしょうが、今は無事を祈るばかりです。
スーパーバンタム級は26度の防衛ですが、この数字は4団体統一王者の井上尚弥選手がほぼ一人で荒稼ぎ。
4団体合わせて18度の防衛に成功しており、残りは西岡利晃氏の7度と岩佐亮佑氏の1度。
ライト級はガッツさん、畑山氏とキルギスからの輸入ボクサーオルズペック ナザロフ氏、ホルヘ リナレス氏の活躍が大きいです。
スーパーウェルター級は"炎の男"輪島功一氏ですね。
ミニマムからバンタム級までが主流の軽量級大国日本
こうしてランキングを見ていくと、日本のジムに所属するボクサーが世界で活躍する主戦場はミニマム級からバンタム級までが主流でした。
世界を狙えるのはバンタム級まで。
それ以上の階級になると世界王者となって稼ぐのは難しい。
僅か1.7kgの差でスーパーバンタム級になると極端に世界で活躍する選手が減るという現状がありました。
井上尚弥・中谷潤人の登場によってSバンタム・フェザー級が世界の主戦場へ
井上尚弥選手の登場によって鬼門となっていたスーパーバンタム級の扉が一気に開かれました。
このまま勝ち続ければ中谷潤人選手との頂上決戦を経てフェザー級へと戦場を移していくでしょう。
井上尚弥選手の後もスーパーバンタム級は中谷潤人選手が暴れまわることが確実。

更に帝拳の村田昴選手や、バンタムから階級を上げてくるであろう西田凌佑選手の活躍も期待されます。
また少し時間が経てば武居由樹選手や那須川天心選手もスーパーバンタム級に戦場を移してくる可能性が高いです。
フェザー級も井上尚弥選手の他に"鉄の拳"中野幹士選手の世界戦も控えております。
更にスーパーフェザー級にも力政法選手と堤駿斗選手の存在が。
力石選手は惜しくも王座戴冠はなりませんでしたが、堤駿斗選手は世界挑戦すれば奪取の確率は高いと予想されます。

ミニマム級からバンタム級までだった日本人ボクサーの戦場が、
ミニマム級からスーパーフェザー級まで一気に広がりつつあります。
人外魔境ライト級以上の世界戦線で活躍が期待される選手

さて、こうしてスーパーフェザー級まで日本人ボクサーの可能性が広がりそうにありますが、ライト級以上の世界戦線はまだまだ相当に厳しい状況にあります。
ライト級で挑戦者決定戦に挑んだ三代大訓選手、ウェルター級のベルトに挑んだ佐々木尽選手の力の差を見せつけられての敗戦はファンにとってもショッキングな出来事でした。
スーパーライト級での平岡アンディ選手のベルト奪取には大きな期待が寄せられています。
ここで勝利すれば日本のボクシングを世界に知ってもらうきっかけとなり、選手の可能性が広がっていくでしょう。
ライト級の今永虎雅選手もまだ世界ランクの上位には名を連ねていませんが、近い将来上位に名を連ね、世界を狙うボクサーになるでしょう。
その前に宇津木秀選手が世界にアタックする姿を観たいですが。
まとめ:世界で戦える階級の幅が広がった日本のボクシング
ボクシングファンの固定観念上も統計上も日本人ボクサーが世界で活躍できる階級はバンタム級まででした。
中学生の頃からボクシングファンの自分は運動神経のいい人を見ても「あの身長だと階級的に世界は無理だな」と良く思ったものです。
特に高校生の頃はしょっちゅうそんな妄想をしていました。
しかし井上尚弥、中谷潤人の登場によって日本人ボクサーが戦える階級の幅が広がりつつあります。
両選手にフェザー級までこじ開けてもらい、スーパーフェザー級を力石・堤で制覇すれば夢は一気に広がります。
スーパーフェザー級まで世界を狙え、稼げる階級になればボクサーを目指そうという若者がもっと増えていくでしょう。
夢を持って競技に取り組んでくれることでしょう。
危険なスポーツではあるので親が無理やりやらせるべきではありませんが、安全面でも進化しつつ、ボクシングのリングが若者にとってもっともっと夢のある舞台になってくれることを願います。
日本人選手が世界で活躍する階級も広がってU-NEXTやAmazonを中心に、LeminoやABEMAも大忙しになっていくこと間違いなし。
