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ボクシング界にもインフレの波〜世界戦チケット価格高騰の推移

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torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。一人でも多くのプロボクサーの戦った証をネット上の記事として残していきたいと思いブログを開設。

こんにちはボクシングブロガーのtorajiroです。

元ボクサー仲間で試合観戦に行こうという話をしていた時にこんな話題が出ました。

たぬたぬ

最近はチケット高くて会場には行けないからスポーツバーとかで観ようよ。

確かにそうね。。

僕のボクシングファン歴は25年を超えますが、最近はチケット代が高くて世界戦を会場で見ようというノリにはなかなかなれません。

2022年4月9日に開催された村田諒太選手VSゲンナジー・ゴロフキン選手のボクシング世界ミドル級統一戦はチケットの高さも格別でした。

最高価格は22万円!!

同年12月13日に開催された井上尚弥選手の4団体統一戦のチケット価格も同じく最高価格は22万円でした。

新卒サラリーマンの初任給では買えないレベルの高額。

という社会状況の中でこんな疑問が湧きました。

torajiro
  • 実際チケット代はどれくらい上がったのだろう?
  • 過去の日本ボクシング史において歴史に残る世界戦のチケット代はいくらだった?

そこで過去のビッグマッチのチケット代を調べた上で、チケット代がその時代の平均年収のどれくらいの割合を占めていたのかを算出し、現代のチケット価格と比較してみました。

1952年 白井義男選手VSダド・マリノ選手

1952年5月に開催された白井義男選手VSダド・マリノ選手1戦は日本初の世界戦でした。

近年は裁判・破産・精算法人・復活で賑わせているJBC。

そのJBCが産声を上げ、コミッション制度が確立された事で実現できた記念すべき世界戦で白井義男さんが日本初の世界チャンピオンになりました。

>>JBC解体の危機!?正味財産とボクシング興行数の推移から見た今後

白井VSマリノの世界戦チケット代は?

この世界戦のチケット代は以下のようになっていました。会場は今はなき後楽園球場。

  1. リングサイド席 3,600円と2,000円
  2. ネット裏席 1,500円
  3. 内野1階席 900円
  4. 内野2階席 600円
  5. 外野席 200円

>>ボクシング100年―ミレニアム特集より

物価が全然違うのでこれだけ見てもピンと来ないと思いますので、次に当時の平均年収に占めるチケット代の割合を見ていきます。

1952年の平均年収に占める白井VSマリノのチケット代の割合

1952年の平均年収は幻冬舎ゴールドオンラインが国税庁『民間給与実態統計調査』より作成したデータによると、

178,700円!!

この金額を12で割って月給換算した金額(14,892円)に占めるチケット代の割合を算出した結果は以下の結果となりました。

チケット代月給に占めるチケット代の割合
3,600円24%
2,000円13%
1,500円10%
900円6%
600円4%
200円1%

最高価格だと月々の生活費の24%をチケット代が占めるのはなかなかの金額ですが、リングサイドですからこんなものでしょう。

続いて日本人同士の世界戦で史上最高額のファイトマネーとなった薬師寺VS辰吉戦のチケット代を見ていきましょう。

1994年 薬師寺保栄選手VS辰吉丈一郎選手

今なお語り継がれる伝説の1戦。

辰吉選手の人気もあって両者のファイトマネーは億を超えた1戦となりましたが、この時のチケット代はいくらだったのでしょうか?

薬師寺VS辰吉の世界戦チケット代は?

では早速チケット代を見ていきましょう。

会場は名古屋市総合体育館レインボーホール(現日本ガイシホール)。

  1. VIP席 100,000円
  2. 特別リングサイド席 60,000円
  3. A席 40,000円
  4. B席 30,000円
  5. C席 20,000円
  6. D席 8,000円

白井VSマリノ戦との金額の違いから40年の時を経て物価水準が一気に上がったのが分かりますね。

1994年の平均年収に占める薬師寺VS辰吉のチケット代の割合

1994年の平均年収は4,555,000円。

40年で年収は余裕で20倍を超える金額となりました。

この金額を12で割って月給換算した金額(379,583円)に占めるチケット代の割合を算出した結果は以下の結果となりました。

チケット代月給に占めるチケット代の割合
100,000円26%
60,000円16%
40,000円11%
30,000円8%
20,000円5%
8,000円2%

全体的に月収に占める割合が白井VSマリノ戦の時よりも微増しております。

経済成長で収入も上がったけれど、それよりもややチケット代の上昇の方が高くなっています。

とはいえこの差は許容範囲内でしょうか。

2022年 村田諒太選手VSゲンナジー・ゴロフキン選手

それではいよいよ村田選手の世界戦。

ファイトマネーは村田選手が6億のゴロフキン選手はなんと20億となった世紀の一戦はチケット代もびっくりの金額でした。

村田VSゴロフキンの世界戦チケット代は?

最高価格が20万を超えたこの1戦のチケット代は以下。

会場はさいたまスーパーアリーナ。

  1. リングサイドA席 220,000円
  2. リングサイドB席 110,000円
  3. 指定A席 77,000円
  4. 指定B席 55,000円
  5. 指定C席 33,000円
  6. 指定D席 22,000円
  7. 指定E席 11,000円

ほぼ薬師寺VS辰吉戦の倍額ですね。

ではこれを平均年収の割合で見たらどうなるでしょうか?

2022年の平均年収に占める村田VSゴロフキンのチケット代の割合

白井VSマリノ戦から40年の時を経て、平均年収は20倍以上になりましたが、薬師寺VS辰吉戦から約30年の時を経て、、、

たぬたぬ

平均年収はなんと下がりました(涙)。

200年度の平均年収は4,430,000円。

月収換算すると369,168円

「失われた10年・20年」とか、かつてそんな言葉がありましたけど、失われ続けてそうした言葉がもう使われなくなってきているのが日本経済の現状でしょうか。

さて、この金額を月給に占める割合でみるとこうなります。

チケット代月給に占めるチケット代の割合
220,000円59%
110,000円30%
77,000円21%
55,000円15%
33,000円9%
22,000円6%
11,000円3%

平均年収が下がる一方でチケット代が倍額になっているのですから当然の結果ですね。

特にリングサイドは月給の半分を投じても買える価格ではなくなりましたが、総額26億のファイトマネー等々を払うためにはこれくらいのチケット価格が妥当でしょう。

そしてこの試合はAmazonPrimeVideoでの配信も話題になりましたね。

プライムビデオでは今も村田諒太選手のこの時のドキュメンタリーが視聴出来ます。

見応えありますし、何より村田選手の生の声で彼の考え、美学、哲学が伝わってくるので、ボクサーだけでなくビジネスマンも必見のドキュメンタリーです↓

>>村田諒太 4.9決戦 勝負の扉

2022年 井上尚弥選手VSポール・バトラー選手(4団体統一戦)

2022年には井上尚弥選手がバンタム級世界初の4団体統一を成し遂げた試合も開催されました。

日本ボクシング史に残る1戦なのでこの試合のチケット価格も紹介しておきます。

井上尚弥選手4団体統一戦のチケット代は?

井上尚弥選手の歴史的1戦は村田選手の試合同様の高額で売れ行きも非常に良かったですね。試合会場は有明アリーナ。

  1. SRS席:220,000円/枚
  2. プレミアムチェア付RS席:187,000円/枚
  3. RS席:165,000円/枚
  4. S席:110,000円/枚
  5. A席:77,000円/枚
  6. B席:55,000円/枚
  7. C席:33,000円/枚
  8. D席:22,000円/枚
  9. E席:11,000円/枚
  10. ファミリーゾーン 3名席:66,000円/組
  11. ファミリーゾーン 4名席:88,000円/組
  12. ファミリーゾーン 5名席:110,000円/組
  13. 車いす席:33,000円/枚 ※介添人も同価格、介添人1名まで

チケット代が年収に占める割合については村田選手のところで紹介しているので省略しますが、やはり高騰していることがお分かりいただけるかと思います。

ついでに井上尚弥VSスティーブ・フルトン選手の一戦も同じ価格帯でチケットは販売されていました。

井岡一翔選手大晦日世界戦で比較したコロナ禍後のチケット価格高騰

白井義男氏の初の世界戦から現在の村田諒太選手や井上尚弥選手にかけて、チケット価格が高騰している事はお分かりいただけたかと思います。

torajiro

ただ、この傾向がより顕著になったのはコロナ禍以降。

その点を分かりやすく示す上で、井岡一翔選手の大晦日世界戦チケット価格をコロナ禍前後で比較してみました。

  • コロナ禍前
    ▶︎2019年大晦日トリプル世界戦
  • コロナ禍後
    ▶︎2022年大晦日WBA/WBO統一戦

この2つの世界戦は同じ大晦日、会場も同じ大田区総合体育館なので比較するにはもってこいでした。

比較した結果は以下。

席種2019年2022年
VIP席50,000円110,000円
RS席30,000円55,000円
S席20,000円33,000円
A席10,000円11,000円
B席6,000円7,700円

この通り僅か3年でもチケット価格は特に高価格帯での高騰が顕著です。

2022年は2団体の統一戦だったという点で重みは異なるかも知れませんが、2019年の世界戦は田中恒成選手と吉田実代選手の世界戦も組み込まれており、アンダーカードは2019年の方が豪華でした。

まとめ

こうしてボクシングの試合チケット価格と平均年収を比較すると、平均年収が上がらない中、チケット価格は上がり続けている事が分かりました。

そしてこの傾向がより顕著なのは高価格帯のチケット。

高価格帯のチケット代が月給に占める割合と、低価格帯のチケット代が月給に占める割合推移を比較するとその傾向が顕著に分かります。

<チケット代が月給に占める割合>

高価格帯低価格帯
白井VSマリノ24%1%
辰吉VS薬師寺26%2%
村田VSゴロフキン
井上VSバトラー
59%3%

エンタメ業界では、

torajiro

いかに富裕層から高額を払ってもらい、一般層に還元するか!?

という話を良く聞きますが、ボクシングの試合チケットもこの流れで動いているのでしょう。

torajiro

我々が高額なPPVを払わずにビッグマッチを視聴出来ているのは、VIP席等の高価格帯のチケットを購入して観戦に来てくれる方々がいるからこそです!!

チケット価格の高騰を嘆きたい気持ちもありますが、

高額チケットを買ってくれる方がいるお陰で世界的にインフレが進み、日本経済が停滞する中でもビッグマッチを安価に視聴出来る環境が整っている。

とも考えられます。

ボクシングは他の格闘技と比べてもチケット代が高く、試合の中止リスクも高いスポーツで、興行によって当たり外れも大きい。

>>チケットが高い!中止が多い!ボクシング興行の問題点を他の格闘技と比較

故に魅力ある興行を作る努力、魅力ある選手を育成する努力をボクシング界が一体となって進めていかないと、あっという間にオワコン化してしまう恐れもあります。

torajiro

高いチケットを買ってでも観戦したい!!

というファンを増やしていかないと、日本でのビッグマッチ開催は困難になってしまいます。

なのでこのブログでは魅力ある興行を作ろうとしている3150FIGHTのような試みや、ボクシングに関する各種データ、様々な選手紹介、観戦記等を記しながら継続して国内ボクシングを応援し続けたいと思っています。

インフレでチケット価格が高騰し続ける中でも、U-NEXTやabemaプレミアムを利用すれば、配信で多くの試合を視聴出来る時代にはなりました。

U-NEXTは海外のボクシングや帝拳、TBプロモーションの試合等を中心に配信しております。

ABEMAは3150FIGHTを中心に配信しておりますが、2023年度時点ではまだまだ無料で視聴出来るコンテンツがたくさん用意されています。

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