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【拳四朗VS矢吹】ジャブがポイントにならなかった理由と日本人ジャッジ、コロナ感染の影響

torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。一人でも多くのプロボクサーの戦った証をネット上の記事として残していきたいと思いブログを開設。

こんにちはTorajiroです。

ボクシングWBC世界ライトフライ級チャンピオンの寺地拳四朗選手が矢吹正道選手に敗れて9度目の防衛に失敗しました。

ここまで圧倒的な強さを誇ってきた拳四朗選手の敗北は海外でも今年一番の番狂わせと報じられています。

拳四朗選手は何故負けたのか、2つの要因が議論になっています。

  • 普段は評価される拳四朗のジャブが今回はポイントにならなかった。日本人ジャッジはジャブを評価しない傾向になるからそれが影響したのではないか。
  • コロナ感染後1ヶ月での試合は無理があった。

ャブが評価されなかった点については、現役ボクサーも含めジャッジに対してかなり強い異を唱えているものも多数あります。

今回はまずは拳四朗選手のジャブが今回の試合でポイントにならなかった理由を4つ紹介した上で、何故日本人ジャッジに対する不満が出てきるのかと、そもそもの拳四朗選手のコンディション面でコロナ感染が影響していたのかどうか、私見を述べさせていただきます。

拳四朗選手のジャブがポイントにならなかった理由

では早速、何故今回の試合で拳四朗選手のジャブがポイントに繋がらなかった理由を解説します。

前提として、物議を醸している1〜4R目までの試合展開が解説の中心となります。

矢吹選手のジャブのもらい方が良かった

普段の拳四朗選手の試合では、対戦相手は拳四朗選手のジャブに翻弄されて中に入れず、淡々とジャブをもらい続け、ジャブをもらって顔が跳ね上がったり、バランスを崩したりして、拳四朗選手にポイントが流れていきます。

今回の矢吹戦でも序盤から拳四朗選手の強いジャブは度々矢吹選手の顔面を捉えていました。

が、拳四朗選手のジャブが当たっても矢吹選手の顔が跳ね上がる事も、バランスを崩すことも殆どありませんでした。

よーく見ればちゃんとジャブは当たっているのですが、びくともしないのでブロックしているようにも見えるし、ダメージを与えているように見えませんでした。

拳四朗選手としてはガッツリ手応えのあるジャブが当たっているので、しっかりポイントを取れていると思っていたかもしれません。

逆に、拳四朗選手は矢吹選手のパンチをバックステップや顔をずらしてダメージを回避していたのですが、矢吹選手の圧力でバランスを崩す場面が再三あったので、矢吹選手が押しているように見えてしまい、見栄え的なイメージは悪かったです。

拳四朗選手のジャブがクリーンヒットするとすぐ打ち返した

拳四朗選手のジャブがジャストミートして矢吹選手の顔が跳ね上がる場面もあったのですが、矢吹選手はもらいながらすぐにジャブを返し、そのジャブも拳四朗選手を捉えていたので、拳四朗選手のジャブのポイントが相殺されてしまいました。

拳四朗選手はライトフライ級にしてはリーチもあるので、普段の世界戦ではリーチの差があり、更にフットワークも軽快なので、相手が打ち返した時には拳四朗選手はもうその場にはいません。

対戦相手としてはお手上げのパターンを作り上げ、芸術作品のような試合運びをするのが普段の拳四朗選手ですが、矢吹選手はバランスを崩さず、もらいながらも相打ち狙いで打ち返してきました。

拳四朗選手はジャブに続く後続打が打てなかった

元日本ボクシングスーパーライト級チャンピオンの細川バレンタインさんのYouTubeチャンネルで、拳四朗選手のジャブがポイントに繋がらなかった理由の一つとして、ジャブで相手を崩した上での後続打が出なかった事を挙げていました。

確かに今回の試合では、拳四朗選手は得意のジャブで崩してからの右ストレートが殆ど出ませんでした。

矢吹選手が相打ち覚悟でパンチをもらいながら同時に打ち返して来るので、後続打が絶たれてしまい、逆に矢吹選手が連打をまとめてくるので、クリーンヒットは少なくても手数を出して下がらせる矢吹選手にポイントが流れました。

パンチが当たった時の「音」の差があった

会場で試合を観戦すると、パンチ力の差がパンチの「音」ではっきりと伝わってきます。

私もコロナ禍前は後楽園ホールに良く試合を見に行っていましたが、パンチ力のある選手が試合をすると、ガードの上からでもパンチの「音」がバチンバチンと伝わって来るので、「音」に流されてポイントを取っているように見えてしまう事が結構あります。

矢吹選手のパンチは重たくて、拳四朗選手のパンチはキレとタイミングで倒すタイプなので、試合会場ではネットで視聴している以上に矢吹選手優勢に見えたと思います。

動画視聴で採点を意識せずに拳四朗VS矢吹戦を見た時は、私も矢吹選手のパンチの威力に驚き、矢吹選手がポイントを取っているだろうと思いました。

映像で見てもそう感じるわけですから、試合会場では尚更矢吹選手のパンチの「音」は響いたのではないでしょうか。

改めてじっくり見たら拳四朗選手のジャブもしっかり当たっているんですけどね。

日本人ジャッジのジャブを評価しない傾向が採点に影響したのか?

日本人ジャッジは世界基準と比べるとジャブを評価しないと以前から言われています。

少なくとも20年以上前から言われています。

ロレンソ・パーラ×坂田健史(2004) WBA世界フライ級タイトルマッチ【TBSオンデマンド】

(↑20年以上前の試合ではないけど、パーラのジャブが評価されて坂田選手が負けた試合。悔しかったなぁ、、)

日本人ジャッジがジャブをそこまで評価しないという意見については正直私も激しく同意します。

後楽園ホールで試合観戦していても、ジャブでペース取って試合を支配しているように見えたのに、殆ど手数を出さず単発の有効打をちょっと当てただけの選手が勝つという試合を何度も見て来ました。

私もボクシングをやっていたので、ジャブを当てることの難しさは良くわかりますし、逆にジャブでペースを取られてガムシャラに攻めるしかなくなった事も何度もあったので、ジャブはもっと評価されて良い有効打だと認識しています。

今回の試合を海外のジャッジが採点した場合、おそらく三人のうちの一人のジャッジはジャブで主導権を握っていると評価して拳四朗選手にポイントを付けたのではないでしょうか。

で、一者はドロー。最後の一人は矢吹選手の手数や時折当たっていたパンチで拳四朗選手がバランスを崩していた点を評価して矢吹選手にポイントをつけたと思います。

4R終わって三者三様のドローでしたら、拳四朗陣営も戦い方を無理に変える必要はなくあのままのペースで試合を進め、最終の判定もドローになっていたかもしれません。

あくまでたらればの話ですが。

今回の試合の採点については言われるほど拳四朗選手にとって不利なジャッジだったとは思いません。

ですが、上述の通り一人でも拳四朗選手のジャブを評価するジャッジがいれば戦術を変える必要はなかったので、それが結果に影響した可能性は十分あり得ます。

拳四朗選手にコロナ感染の影響はなかったのか?

コロナ感染の影響は誰もが気になるところでしょうが、拳四朗選手も加藤トレーナーも体調は万全でコロナの影響は一切ないと試合前から主張しておりました。

ただ、減量中の拳四朗選手はコロナの影響としてこんな気になる発言をしていました。

カンテレドーガ「ボクシング 拳四朗vs矢吹 激闘の裏側」より

息ができないです

私もコロナには感染していませんが、2回目のワクチン接種後にしばらく息苦しい状態が続きました。

とは言っても日常生活には支障はなく、普通に生活していたら気づかない程度なのですが、激しい運動をすると異常な酸欠状態に陥り恐怖を感じました。

自分の場合、運動時の呼吸が正常になるまでに3週間かかりました。

プロとして試合をすると決めた以上、本人は言い訳を絶対にしないでしょうが、実体験から考えても感染から1ヶ月後に万全の状態で試合をするのは無理があったのではないでしょうか。

勿論矢吹選手が強かったのが今回の結果の一番の理由ですし、拳四朗選手も実際絶好調だったのかもしれません。あくまで客観的に見ての個人的な意見として述べております。

試合直後に矢吹選手が拳四朗選手に送った言葉

今回の試合はジャッジに関する議論はありますが、個人的には上述の通りそこまで偏ったものではなかったと思っていますし、試合内容がとにかく素晴らしかったです。

おそらく年間最高試合等の何かしらの賞は取るでしょうし、矢吹選手の昭和チックなキャラクターやボクシング愛、対戦相手へのリスペクトは涙なしには見ていられませんでした。

カンテレドーガで拳四朗VS矢吹戦のドキュメンタリーが10月6日まで無料配信されていますので、是非是非視聴してみてください。

【無料】ボクシング 拳四朗vs矢吹 激闘の裏側 WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 2021/09/29放送分

試合直後の矢吹選手のこの言葉で涙腺爆発しました。

カンテレドーガ「ボクシング 拳四朗vs矢吹 激闘の裏側」より

また闘おう 万全の態勢でな

多くは語らず、この一言でコロナに感染した拳四朗選手へのさりげない気遣いとリスペクトの気持ちを伝えているのだと感じました。

この言葉に対し、拳四朗選手が「ありがとう」と返すのがまた泣けます。

短いこのやり取りがこの世紀に残る一戦のハイライトとして、後世まで語られることになるでしょうね。

まとめ

拳四朗選手VS矢吹選手の一戦で拳四朗選手のジャブがポイントに繋がらなかった理由は、

  • 矢吹選手がジャブをもらっても顔を上げず、バランスも崩さなかった
  • ジャブをクリーンヒットされても即座にジャブを打ち返し、そのジャブが拳四朗選手を捉えていた
  • 矢吹選手がジャブをもらってもすぐにパンチを返して来ることで後続打が続かず、逆にパンチをまとめられる場面があった
  • 矢吹選手の重たいパンチの当たる「音」がポイントに影響したのでは

以上の4点にあると考え、日本人ジャッジの採点傾向が影響した要素は少ないと結論付けました。

一方で、いくら本人や陣営が否定しても、コロナ感染の影響な自分の体験からも全くなかったとは言えないだろうと考えています。

久々に現れた昭和の匂いのする矢吹正道という選手の今後の活躍は楽しみですが、一方で拳四朗選手も今回の試合で一皮剥け、ファンを一気に増やしたのではないでしょうか。

これまではどの試合も圧勝で、淡々とした試合運びで綺麗な顔をして終わる試合ばかりだったからか、強いのに中々人気が出ませんでした。

更に飲酒トラブルでイメージも悪くなってしまいました。

矢吹戦で見せた魂のこもった試合に拳四朗選手の今後の可能性を感じたボクシングファンは少なくないはずです。

一つ殻を破った拳四朗選手が再びリングに上がる日を心待ちにしております。

矢吹正道選手、寺地拳四朗選手、たくさんの感動をありがとうございました。そして激闘お疲れ様でした。

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