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矢吹正道のバッティングは故意か否か。拳四朗陣営が通知書をJBCに提出した目的。

torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。一人でも多くのプロボクサーの戦った証をネット上の記事として残していきたいと思いブログを開設。

こんにちはTorajiroです。

前WBCボクシング世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗陣営より、矢吹正道選手から受けたバッティングが故意であったと主張する通知書がJBCへ提出されました。

個人的にはバッティングは見ていて気になるレベルではなかったし、問題のシーンのバッティングにも気づきませんでした。

これくらいのバッティングは起こり得るものとの認識ですが、意外とネット上で「明らかに故意だ」「〇十年とボクシングを見てきてこんな悪質なのは初めて見た」等のコメントや、矢吹選手を擁護する書き込みに対する反論を目にしたので、改めてこの試合のバッティングが悪質なものだったのかどうか私見を述べたいと思います。

先に自分の立場を明確にしておくと、

  • 世界チャンピオンになる前からの拳四朗ファンで試合は殆ど見ている
  • 元プロボクサー(あんま強くなかった)
  • 引退後、少しトレーナーも経験
  • 矢吹選手の試合は逆に殆ど見たことがなかった

といったところです。その上での私見となります。

問題となっているバッティングシーン

こうして見ると確かに頭が当たっていますね。

ただ、これが故意かと言われると、レフェリーですら試合中に気づかなかったし、ちょっと違うかなぁと思っています。駄目なものは駄目ですけど。

他にも頭が当たっているシーンがピックアップされていましたが、こうしたバッティングが起こった理由を先に箇条書きします。

  • 拳四朗選手のフットワークについていけず矢吹選手は序盤から体が前のめりになる場面があった
  • 距離の遠い拳四朗選手に対応するため、パンチを外して飛び込む練習をしていた
  • ボディが効いて体が丸まった
  • 最後は足を止めての打ち合い、お互いの想定より近い距離での打ち合いになった

試合の序盤から矢吹選手は距離の遠い拳四朗選手にパンチを当てるため、前のめりになりながらパンチを出していました。身長が高かったり、フットワークが軽快で距離が遠い選手と対峙すると、パンチを当てよう当てようと上体ばかりが前のめりになり、下半身がついていかなくなる時があります。

加えて矢吹選手は体重を乗せたパンチを打つタイプなので、体が先に動き、若干遅れて重たいパンチが出てくるタイプのボクサーです。

なので体だけ突っ込んで頭から入って、それが故意に狙っているように見えるのかもしれません。

私もボクサー時代に距離の遠い相手になんとかパンチを当てようとしている中で体が前につんのめってしまう事が何度もありました。足がついていかないものなんです。。

頭から入ればバッティングになるのは必然=だから故意。的な書き込みもありましたが、頭から入ろうと思っているのではなく、つんのめった結果として頭から入ってしまっているのが実態です。

ボクサーがこぞってあの試合の序盤は拳四朗ペースだったと言っていますが、バランス崩されて前のめりになっていた矢吹選手は自分の動きが出来なくて普段の試合より疲れたと思います。

更に矢吹選手終盤はボディも効かされて丸くなっていたので、余計に頭から入っているように見えたかもしれません。

そして問題のシーンですが、おそらく練習の時点から距離の遠い拳四朗選手にパンチを当てるため、ジャブをインサイドに外してバックステップする相手に飛び込みながらフックを打ち込む練習を繰り返していたのではないでしょうか。

矢吹陣営にとっても拳四朗選手がここまで前に出てくる場面は想定外だったはずです。想定外に距離が縮まった中、限界まで追い込まれて意識朦朧の中で、練習でやってきた外して飛び込む動きが自然と出て頭が当たっちゃったんだろうなぁと見ました。

故意にバッティングをすることの難しさとリスク

普段の練習の中で、当然ですがトレーナーはバッティングの練習は教えてくれません。

ミットではひたすらコンビネーションを反復練習します。

その状態でリングに上がり、疲労困憊の状態になると、何度も繰り返した反復運動が一番体にも負担が少なく無意識で出せることに気づきます。

ここに故意に頭を当てようとか普段の練習と違う意識を加えていくと、体が自然に動かなくなり逆に疲れてしまうでしょう。

更にバッティングは当てる側も当然の事ながらダメージを被ります。

私もボクシングをしていた時に何度かバッティングはありました。

自分は階級的には長身なサウスポーでしたので、相手の選手が頭を振ってフックで飛び込んで来る場面がありました。その時にこちらもカウンターを合わせようと踏ん張っていた結果、頭が当たるという場面が何度かありました。

頭は当たると痛いですが、幸い自分はカットした事はなく、逆に飛び込んできた相手の選手がカットした事が2度ありました。

バッティングは飛び込んだ側がカットするケースもあるので、リードしている側が試合の中で故意にやるメリットはほぼないと思います。

バッティングは痛いし自分が負傷するリスクもあるし、そもそも限界まで追い込まれている状態の中では練習でやってきた動きが一番楽です。練習でやっていない事をやるためには頭も体力も使うので、消耗しきっている状態では「ここで頭を当ててやろう」と考えて行動する元気もないです。

故意のバッティングってこういうもの

「〇十年とボクシングを見てきてこんな悪質なバッティングは始めてだ」的な書き込みをどこかで見かけました。

私も何十年とボクシングを見てきて、自分もリングに上がって何度か試合しましたが、もっと悪質なバッティングは何度も見てきました。

例えばこちら。

動画の3:35辺りが故意のバッティングシーン。懐かしいです。

反則は駄目ですが渡邉一久選手は大好きな選手でした。

こうした故意のバッティングが起こるケースって大抵ポイント的にもリードされて劣勢な中でイライラしてやってしまうものですね。ポイントリードしている選手がやるメリットはないです。

拳四朗陣営がこのタイミングで通知書を提出した理由

拳四朗陣営がJBCに通知書を出したことでこのバッティング問題は更にクローズアップされましたが、私は拳四朗陣営のこの動きが嬉しかったです。

拳四朗選手本人の意志は分かりませんが、陣営としては既に再戦に向けた駆け引きを初めているんだと分かったからです。

勿論選手の身を守る目的が一番ですが、再戦に向けたこのジャブは有効だと思います。

これだけ騒ぎになれば、矢吹選手としても無理に飛び込むことに躊躇してしまうでしょうし、レフェリーも今回とは比べ物にならないくらいに頭を注意していくでしょう。

ナイスジャブです。

まとめ

拳四朗選手と矢吹選手の今回の世界戦は近年稀に見る好ファイトでしたが、拳四朗選手にとっては悲運な要素もありました。

ジャブがポイントにならなかった原因については以下の記事で詳しく書きましたが、拳四朗選手はこれで悪い運は全て出し切ったでしょう。

【拳四朗VS矢吹】ジャブがポイントにならなかった理由と日本人ジャッジ、コロナ感染の影響

拳四朗選手の怪我もあるので、ダイレクトリターンマッチにはならないでしょうが、矢吹選手が無事に初防衛戦をクリアした上で、是非もう一度二人の試合を見てみたいです。

拳四朗選手と矢吹選手の第二章に期待しています。

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