日本のボクサーには37歳になるとランカーを除き引退という制度がかつて存在した。
やり切って引退する選手もいれば、やり切れずに志半ばでリングを去る選手も。
そんな選手達の記録を残そうと2022年に一度定年引退ボクサーのラストファイトをまとめた記事を書いたことがありました。
この時最初で最後のリングに上がり勝てずに終わった選手のことが頭に残っていたのですが、ボクサー定年制度の改正で引退から復活する選手達が続々と現れています。
この記事ではボクサー定年による引退から復活し、初勝利を手にした要陽太選手をピックアップしています。
2022年5月29日(日)最初で最後の挑戦に敗れた要陽太選手
2022年5月29日(日)一人のボクサーがデビュー戦を行いました。
選手の名は勝輝ジム所属の要陽太、この時36歳。
7月には37歳の誕生日を迎え、ボクサー定年を迎えるため最初で最後の挑戦だった。

対戦相手は石田ジムの浅井達也選手。
浅井選手は要選手より一足先にデビューし、勝利を手にしている。
プロでの1戦、そして1勝は一度もリングに上がっていない者からするととても大きなアドバンテージである。
普段はヘッドギアもつけて14オンスのグローブでスパーリングをしているので、8オンスのグローブ、しかもヘッドギアのない状態で戦うことは、デビュー戦の選手にとっては人生初のこと。
ヘッドギアがない分、相手の的が小さい。
更に自分が着けているグローブも小さい。
普段だったら当たる距離でパンチを放っても当たらないのだ。
当たらないものだからもっと距離を縮めようとすると、今度は距離が近くなりすぎてクリンチになってしまう。
デビューから数戦はこの距離のアジャストに苦労するものですが、デビュー戦は特にこの距離感に苦労します。
試合は先にプロのリングを経験して結果を出している浅井選手がポイントでリードして2対0の判定で要選手に勝利する。
この瞬間、要陽太選手はプロのリングで勝利する安堵と達成感を永遠に得ることの出来ないまま選手生活を終えることとなった(かに思えた)。
2023年の定年制度廃止、そして要陽太2度目のリングで初勝利

要陽太選手の最初で最後の挑戦の翌年、JBCはかねてから問題提起されていた37歳定年制度の廃止を正式に決定。
これによって再びリングに上がるチャンスを手にした要陽太。
しかし40を目前に控えた人間が再びリングに上がることを決意し、トレーニングを続けることは並大抵の気持ちでは出来るものではない。
ましてそのリングで勝利を手にすることは尚更難しい。
2024年4月28日(日)デビュー戦から約2年の時を経て要陽太選手はリングに戻ってきた。
対戦相手はプロ未勝利ながら5戦4敗1分で試合内容も徐々に良くなっていた北島利樹選手。
どちらの選手にとっても1勝の重みがとても大きい試合において勝利したのは要陽太。
一生味わえないはずだった勝利の美酒はどんな味わいだったろうか。
つらく、悩みに悩んだ長い長い2年間だったのではないだろうか。
頑張ったって勝てるかどうか分からない、年齢と共に責任も増し、好き勝手に生きるのも難しい40手前ボクサーの挑戦には心を打たれるものがあった。
プロ3戦目で2勝目を手にした要陽太の試合はBOXING RAISEで配信

プロ初勝利を手にした要陽太選手は2025年12月6日(土)にも再びリングへ。
対戦相手はプロで6戦2勝4敗の筋肉優真選手。
まだ20歳と若く、デビューからコンスタントに試合をしている選手だ。
要陽太選手の年齢は倍の40歳。

まぁ、正直厳しいだろ、、
というのがtorajiro的戦前予想でしたが、なんと3RTKOにて要陽太選手が勝利。
試合はBOXING RAISEでも配信があったので視聴してみたところ、体の力をしっかりと拳に乗せた伸びるジャブを打つ要陽太選手。
これはいわゆる拳が硬い系のパンチの質なのではないか。
試合は距離が噛み合わずクリンチになる場面が多いものの、ジャブと右のロングフックで着実にダメージを与えているのは要陽太。
筋肉優真選手の飛び込みをバックステップで外し、ジャブを上下に。
3Rに筋肉優真選手のジャブに対してドンピシャのタイミングで右クロスを被せダウンを奪う。
筋肉優真選手は立ち上がるがダメージが大きく一発もらうごとに顔が下を向く苦しい状況。
クリンチからのブレイク後もファイティングポーズが取れない状況になった筋肉優真選手を見てレフェリーが試合をストップ。
ガッツポーズの要選手に会長が両手を広げて笑顔で歩み寄る場面を見て、選手に対する愛情を感じ、心にグッとくるものがありました。

とても良いシーンで試合も4回戦ならではな難しさも含めた魅力が詰まっています。
BOXING RAISEで視聴出来る方はご覧になってみてください。
まとめ:ボクサー定年改正によってこれから生まれるドラマ達へ
37歳ボクサー定年制度の改正後、続々と引退していた選手達がリングに戻ってきています。
要陽太選手同様に未勝利で引退後、初勝利を目指してリングに戻った浅沼邦夫選手も2025年12月5日に試合を行いました。
結果はTKO負けでしたがデビュー戦よりも動きのキレはあり、ボディワークも悪くなかった。
為田真生選手も定年引退から復活して久しぶりの勝利を手にした試合も感動を生みました。
ヤマタクさんも復帰してベジータ石川選手の引退試合の相手を務めましたし、定年引退からの復活組が味わい深い試合を見せる度に自分も頑張ろうという気持ちにさせてもらいます。
それぞれに背負っているものもあり、年齢からくる体の衰えもある中でボクシングを続けることは簡単ではないでしょうが、こうした選手達に勇気をもらっている人間もいるということをここに記しておきます。
もう一度リングに上がるかどうか、それぞれ迷うことはあるでしょうが、定年制度の改正によってリングに上がれるようになった選手達がこれからどんなストーリーを見せてくれるのか、一ボクシングファンとして楽しみにしております。
