元プロボクサーのボクシングブロガーtorajiroです。
本記事では僕がおすすめするボクシング映画を5つ紹介します。
ただのおすすめですともっと他に良いサイトがありますので、ここではボクサーの心理やボクシング業界が良く分かる作品にスポットを当てて紹介します。
紹介する作品の大半が今やボクシングファンには欠かせない配信サービスU-NEXTで視聴可能です。

戦うボクサーの心理への共感や、業界の現在の潮流等に関心を持ち出すと、もうボクシングの沼から抜け出せません。
生きててよかった|ボクシングが辞められない男の魂の叫び
ボクサー心理が最も良く描かれている作品といえばこちら、2022年公開、元プロボクサー木幡竜主演の「生きててよかった」。
1番に紹介する映画としてはマイナーかも知れませんが、こんなにもプロボクサーの気持ちを理解し、魂を揺さぶる作品は他にはありません。
生きててよかったのあらすじ
相手にがむしゃらに向かうスタイルのプロボクサー・楠木創太は、長年の闘いが体をむしばみ、引退を迫られる。恋人と結婚し、新たな人生を歩み始めた創太だが、社会では全く役に立たず、厳しい現実を痛感する。そんな彼に地下格闘技のオファーが舞い込み…。
あらすじだけならどこかで聞いたような話、見たことがあるような作品と感じるかも。
感動映画ならもっとメジャーどころで「シンデレラマン」とか?でも良いではないかと。
しかしこの映画はその手の類の映画とは違います。
作品中の楠木創太の一挙手一投足がボクサー心理を深く刺してくる悲喜劇的作品とでも表現すれば良いでしょうか。
- 日常生活で社会から認められない。
- リングの上でしか自分らしく生きられない。
- セカンドキャリアに躓く。
- これしかない、ボクシングしかないという人生の中で体が限界を迎える。
多くの元ボクサーがセカンドキャリアにおいて上手く生きられず苦労している姿を目にしてきた自分としては、安っぽい感動でここを代弁されるのも何か違う。
「生きててよかった」はそういうこだわりを持った視聴層の想像を超えてくる作品です。
主演の木幡竜氏は香港のアクションスーパースタードニー・イエンの主演映画でラスボスとして登場した程にアクションに定評のある俳優です。
更に元プロボクサーで2024年からは大橋ジムのトレーナーにも就任している生粋のボクサー。
クライマックスで「生きろ!呼吸しろ!」の声に呼応して地下格闘技のリング上で元プロボクサー楠木創太が取ったアクションに心臓がバクバクになりました。
是非このシーンをご覧になってみてください。
こんなに魂を揺さぶられる映画にはこの先もう二度と出会えないだろうな。
生きている間にこの映画に出会えて本当に良かったです。
キッズ・リターン|なぜボクシングの世界に足を踏み入れるのか

北野武監督作品として1996年公開された「キッズ・リターン」の名シーンといえばこれ↓
「俺たちもう終わっちゃったのかなぁ?」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ!」
自分も含め、失恋など多様な場面でパロディ的にこのやり取りを繰り返した人も少なくないはず。
キッズ・リターンのあらすじ
北野武監督の長編第6作で、親友同士の2人の青年の成功と挫折を描いた青春ドラマ。
高校の同級生シンジとマサルはいつもつるんで行動し、学校をサボって自由奔放な毎日を送っていた。
ある日、カツアゲした高校生が助っ人に呼んだボクサーに打ちのめされたマサルは、ケンカに強くなるためシンジを誘ってボクシングジムに入る。
しかしボクサーとしての才能を見いだされたのはシンジで、マサルはジムを飛び出しヤクザの世界へと足を踏み入れる。
別々の道を歩むことになった2人は、それぞれの世界でトップに立つことを約束し、互いにのし上がっていくが……。
カツアゲした高校生が呼んだ助っ人ボクサーにやられてボクシングジムに入ることがこの映画でのボクシングへの入り口です。
この状況下を抽象化させると人がボクシングをやりたいと思う理由の一端が浮かび上がってきます。
「挫折・社会の中の居場所・人から認められたい・強くなりたい・何かに打ち込みたい」
自分の場合はボクシングを始めたきっかけは学校でのいじめでしたが、人から否定され続ける日々を強くなることで乗り越え、人から認められたい、居場所を見つけたいという想いがありました。
ストーリーも音楽も大好きな作品ですが、ストーリーを抽象化して自分の人生に当てはめながら視聴すると刺さり具合が更に増す作品です。
この頃の金子賢の色気と帝拳ジムの岩田翔吉選手が放つ色気は似たものを感じます。
ボクシング指導は南海キャンディーズすずちゃんのボクシングトレーナーもしていた梅津正彦氏。
安藤政信さんのミットシーンでボクシングが上手く見えるのはミットを受ける梅津さんの上手さもあってのこと。
梅津さんは技術指導で一時代のボクシングドラマのボクシングシーンを彩った方でした。
キッズ・リターンは配信はないのですが、TSUTAYA DAICASのレンタルサービスという方法があります。
サブスクでは配信されていない作品の数々もTSUTAYA DAICASならほぼ全てレンタル可能です。

アンチェイン|ボクシング界に衝撃を与えたドキュメンタリー
若い人がどれくらいこのドキュメンタリー映画を知っているか分かりませんが、「アンチェイン」はボクシング界に衝撃を与えた実在するボクサーのドキュメンタリー映画です。
アンチェインのあらすじ
一度も勝てないままリングを降りたボクサー、アンチェイン梶。その時から、梶の長い闘いが始まる。
人生をリングに、世間を相手に。ガルーダ・テツら後輩たちに慕われ家族を得る一方で、事業には失敗、暴行事件を起こすなど、自ら苦しい方へと向かってしまう。
アンチェイン梶は実在したボクサーで、有名どころでは葛西裕一氏のデビュー戦の相手も務めた選手でした。
一戦も勝てずにリングを降りた後の奇行の数々が描かれた作品ですが、梶さんはどこか不器用でセカンドキャリアを上手く生きられなかったボクサーの典型。
タクシー狩りや福祉センター襲撃事件等、やっていることを文字情報だけで知ればトンデモない話。
なのですがそれが梶さんの口を通して語られると受け止め方が変わってきます。
初めて視聴したのは大学生時代でしたが、ボクサー引退後に精神障害に苦しみながら生きる方々は自分の身の回りにもおり、アンチェインはいつまでも頭の片隅から離れない作品です。
もっと彼らの個性、才能が活かせる場が社会の中にないものだろうか。
春に散る|ボクシングシーンのレベルはここまで上がったか!
横浜流星さんがプロボクシングのライセンスを取ったことも話題になった映画「春に散る」。
この映画の注目ポイントは俳優陣のボクシング技術の高さとその背後にいるある方の存在。
春に散るのあらすじ
40年ぶりに故郷の地を踏んだ元ボクサーの広岡仁一。
そんな広岡の前に、広岡の指導を受けたいと懇願する青年・黒木翔吾が現れる。やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん1度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいく。
「春に散る」はテンポが良くてすぐに没入出来る作品です。
ボクシングファン的には三迫ジムが使われる場面等、チラッと映る選手やトレーナーの方々にちょっと嬉しくなります。
亀海さんの解説があったりと、今のボクシング業界を良く理解して作られた作品。
ボクシングの世界がノスタルジックな古めかしいものではないところが良いです。
「春に散る」の一番の見どころは横浜流星さんと窪田正孝さんのボクシングシーン。
横浜流星さんに話題が集中しましたが、窪田正孝さんの距離の詰め方とか地味な部分も含め本物感がありました。
10数年前のボクシング作品と比較すると両者のレベルの高さには感動を覚えます。
ここ数年のボクシング映画のボクシングシーンを支えているのは俳優・ボクシングトレーナーの松浦慎一郎さん。
キッズ・リターンに梅津さんがいたように、最近のボクシング作品には松浦さんの存在は欠かせません。
ボクシング作品ブームを陰で支える超重要人物ですので要チェック。
リベンジマッチ|世界的なボクシングのショービジネス化の流れが分かる作品
最後に紹介する作品は「ロッキー」と「レイジング・ブル」を観たことのある方なら分かるドリームマッチ映画の「リベンジマッチ」。
リベンジマッチのあらすじ
1980年代に全盛期を誇った伝説の元ボクサー、ヘンリー・シャープとビリー・マクドネン。
対戦結果は1勝1敗で勝負がつかず、女をめぐるトラブルもあり、公私でライバル同士だった。もやもやしたまま30年が経ったが、彼らに再びリングで戦う機会が訪れる。
名作「ロッキー」の主人公を演じたシルベスタ・スタローンと、実在のプロボクサージェイク・ラモッタを題材にロバート・デ・ニーロが主演した「レイジング・ブル」。
大ヒットした2作品の主役が対決するドリームマッチとなっている点が本作品の大きな特徴となっています。
2013年に公開された映画ですが、昨今の引退ボクサーがエキシビジョンやYouTuberとの対戦で大金を稼ぐ潮流をこの作品から感じ取ることが出来ます。
これはこれでアリかなというスタンスですが、ジェイク・ポールと現役ボクサーのジャーボンテイ・デービスのエキシビジョンに関してはやや複雑。
(ジェイク・ポールはしっかりボクシングトレーニングを積んでおり、ボクシングと選手に対するリスペクトは感じています。)
日本国内においてもRIZINにメイウェザーやパッキャオが登場したり、3150FIGHTに皇治選手がエキシビジョンで登場したり、真剣勝負の側面に加え、話題性重視のエンタメ的なカードが組まれる動きが進んでいます。
ボクシングにおいては3150×LUSHBOMUがキルギスにおいてJBC・プロボクシング協会のルールに縛られなくて良い自由なボクシング興行を行う土壌を作っており、このリングで今後エンタメ的な試合が組まれていく可能性が高いと予想されます(すぐ消える可能性もありますが)。
こうした潮流を感じられる作品として「リベンジ・マッチ」はおすすめ。
スタローン・デニーロの老体に鞭打ったボクシングシーンの痛々しさは現実のボクシング世界にも通じる話。
まとめ:U-NEXTならボクシングもボクシング映画も充実
以上、ボクサーの精神やボクシング業界にスポットを当てておすすめ映画を5本紹介しました。
特に「生きててよかった」は何がなんでも観ていただきたい作品ではありますが、どれか興味が湧いた作品がありましたら視聴してみてください。
今回紹介した5作品中4作品はU-NEXTで視聴可能です。

「キッズ・リターン」は残念ながら配信はありませんが、TSUTAYA DAICASのレンタルサービスなら配信ではレンタル不可能な作品の数々をレンタルすることが可能。
TSUTAYA DAICASのサイトで検索してみると様々なマニアックな作品が検索でヒットするので昔のレンタルビデオショップのようなワクワク感があって懐かしい気持ちになります。
まとめて借りたい作品を調べて一定期間に集中して視聴するのも一案です。

自分が一度ボクシングの世界に足を入れたものでリアルなボクシングの世界に近い作品に意識が向きがちではありまして、特にセカンドキャリアには問題意識も含め強い関心があります。
この点でこちらのニーズを満たしてくれるウェブサイトとしてはBOXING ONEをおすすめします。
加えてBOXING ONEの管理人Tokky氏が記した書籍「拳人のセカンドキャリア」もファン必読の1冊です。