この記事ではキックボクサーからボクシングに転向した那須川天心選手の成長・進化の過程をまとめています。
2023年は遂に那須川天心選手がプロボクサーとしてリングに上がりました。
今のところ素晴らしいパフォーマンスをみせています。
しかしキック時代の実績が凄過ぎ、
キック時代のファンの期待も大きく、
KOできないことに対する様々な声も聞こえてきます。
天心選手へのネガティブな声
- キック時代の輝きがない
- 華がなくなった
- ボクシングを覚えて倒せなくなった
- 倒すパンチじゃない
- 総合行った方が良かった
中にはキック時代と比較して倒せない原因を解説するような動画もありました。
様々な声が聞こえてきますが、那須川天心選手はボクサーとして着実に進化を続けています。
果たしてキック時代の天心選手とはどこが変わったのか!?
まだまだ始まったばかりの天心選手のボクサー人生。
その進化の過程を紹介していきます。
0戦目:フロイド・メイウェザーとのエキシビジョン
那須川天心選手がフロイド・メイウェザー氏とエキシビジョンを行ったのは2018年12月31日(月)。
プロボクサーになる4年以上も前の話です。
メイウェザー氏が大金を稼いだことで賛否を読んだエキシビジョンでしたね。
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この頃から那須川天心選手はパンチのスキルも非常に高く、スピードも抜群でした。
ただ、足も蹴られるキックの世界で戦っていた時期なので、フットワークは跳ねるタイプでスピーディだけど浮いた感じはありました。
キックの場合、重心低くしっかり踏み込んだところにローを合わされたらダメージが甚大。
僕も一時期キックを習っていたことがありましたが、ジャブで踏み込んだところにローを1発合わされただけで立てなくなりました。
足の使い方がボクサーとキックボクサーだと大きく違います。
この頃の天心選手はまだボクシング仕様にはなっていない印象を持ちました。
1戦目:日本ランカー与那覇勇気選手相手にデビュー戦
2023年4月8日(土)デビュー戦にしていきなり日本ランカーが相手
という驚きのマッチメイクで那須川天心選手はプロボクサーとしてデビュー。
相手は1階級下のバンタム級とは言え、挑戦者決定戦まで出場したことのある与那覇勇気選手でした。
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デビュー戦にして危険な相手を迎えた那須川天心選手。
しかし蓋を開けてみたらスピードとカウンターで圧倒しての完勝。
サウスポースタイルの那須川天心選手は、対オーソドックスのセオリーである右回りを徹底。
距離を詰める与那覇選手にカウンターを合わせて翻弄。
ダウンも奪い、判定もほぼフルマークの文句なしの完勝。
しかし派手なKOを期待していたファンはやや物足りなさも感じたデビュー戦でした。
僕はこの試合、特に以下の点でキック時代からの進化を感じました。
デビュー戦での天心選手の進化
- 右回りの徹底
- メイウェザー戦での跳ねるフットワークから地に足付けたフットワークへ
全てを見せたのではなく、まずは基本通り。
次戦での更なる進化を予感させるデビュー戦でした。
2戦目:メキシコ・バンタム級王者ルイス・グスマン選手と対戦
2戦目は2023年9月18日(月)。
対戦相手の変更もありましたがメキシコ・バンタム級王者ルイス・グスマン選手と対戦。
試合前の公開練習では両サイドへの素早いフットワークを見せて視聴者を驚かせました。
下がりながらの右回りとカウンター主体だったデビュー戦と違い、
2戦目は両サイドへの動きを見せ、
自分から攻めて見せ場も多く作りました。
更にパンチのモーションも少なくなったように感じました。
構えている位置から予備動作なく真っ直ぐ飛んでくるので対戦相手は反応出来ない。
フェイントの重要性は良く聞きますが、同様にモーションがないこともとっても重要です。
2戦目での天心選手の進化
- 両サイドへの動き
- 自分から攻めて崩す場面を作る
- 腰が更に落ちてパンチに体重が乗ってきた
- 手の動きが減り、モーションのないパンチに
デビュー2戦目も2度のダウンを奪いフルマークの完勝。
KOは逃しましたが一歩ずつ着実に成長していることが分かる試合でした。
>>2023 スーパーバンタム級8回戦 那須川天心 vs. ルイス・グスマン
3戦目:世界ランカーのルイス ロブレス パチェコ選手と対戦
天心選手のプロ3戦目は2024年1月23日(火)。
対戦相手はバンタム級の世界ランカールイス ロブレス パチェコ選手。
- 世界ランカーではあるが1階級下のバンタム級
- ランカーとはいえ14位と下位
まだまだ本当の世界のトップクラスとの対戦ではありません。
しかし3戦目で世界ランカーは異例。
戦前はルイス ロブレス パチェコ選手はスピードもあって2戦目の相手以上に倒すのは難しいと予想していました。
結果的にはロブレス選手が足を痛める形でのTKO勝利。
結果的にはTKO。
内容もスピードで圧倒。
世界ランカーにほぼ何もさせずに試合を終えました。
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天心選手は3戦目の内容が評価されてか、WBAの世界ランキング7位にランクされました。
焦る必要は決して無いですが、世界上位ランカーと試合しても普通に勝てそうなレベルまで来ています。
2戦目以上にパンチに予備動作がなくなり、それに加えて圧倒的なスピード。
近い将来手のつけられないボクサーになるでしょう。
3戦目での天心選手の進化
- 出てくる相手に合わせるスタイルから常に自分から仕掛けるスタイルへ
- 自分から前に出て素早いスピードからの左ストレートボディ
- 予備動作が更になくなる
4戦目:世界上位ランカーのジョナサン ロドリゲス選手と対戦
那須川天心選手プロ4戦目はWBAバンタム級4位のジョナサン ロドリゲス選手と対戦。
ジョナサン ロドリゲス選手は元世界王者のカリド ヤファイ選手をKOし、現世界ランク1位の選手とも敗れはしたもののダウン応酬の好勝負を演じた本物の世界ランカー。
この危険な相手を那須川天心選手はほぼ何もさせずスピードで圧倒して3RTKOにて勝利。
3戦目同様に自分から前に出るスタイルで序盤から鋭く踏み込みワンツー、ワンツーボディストレートを突き刺す。
ロドリゲス選手は天心選手が打ってきたところに合わせる作戦もあまりにも速い天心選手のスピードに反応がワンテンポ遅れる。
最後は外を取って踏み込むか、インサイドから飛び込むか、左右に揺さぶりをかけながらインサイドに踏み込んで放ったワンツーにロドリゲス選手が反応出来ず、左ボディ、左アッパー、右フック、左ストレートと畳み掛けて倒し切りました。
公開練習の時点から全くパンチをもらっていなかったが、本番の試合でも全くパンチをもらわず圧倒してしまいました。
試合後には「相手が弱かった」という声も聞こえて来ましたが、今後天心選手と戦う選手は皆同じことを言われてしまう予感大。相手のスピードが対応可能な範囲を超えてしまうと何も出来なくなるということは世界レベルでもあること。
相手が弱いように思えるほどに天心選手のスピードと踏み込みの速さが一級品だということです。
4戦目での天心選手の進化
- 3戦目同様に自分から仕掛けるスタイルが出来上がる
- 圧倒的スピードに更に磨きがかかる
- 外から、中からと相手が反応出来ない素早く深い踏み込み
5戦目:超難敵ジェルウィン アシロ選手に辛くも勝利
那須川天心選手プロ5戦目はアマチュア200戦の無敗のフィリピーノ ジェルウィン アシロ選手と対戦。
判定は3対0で97-92,98-91,98-91とポイント差もありましたが、お互いクリーンヒットは少ない五分五分の展開で各ラウンド僅かに天心選手がリードしての勝利でした。
この判定に対してはもっと僅差に見えた、中には天心が負けていたといった意見もありました。
試合を見た時点での僕の採点は97-92でしたが、改めてこの試合を見返して妥当な判定か検証してみました↓
1R 天心の左ストレートがジャストミート
目立ち上がりはアシロが天心のジャブに右を合わせる。
右ボディから右ストレートも決めてリードするが、ラスト30秒で天心の左がクリーンヒット。
ハッキリダメージを与えた天心のラウンド。
2R アシロの右を取るが天心もジャブから上下に
2R目はお互いにクリーンヒットなし。
アシロは天心のジャブに右を合わせる狙い。
ジャブを待ち、時折右ストレートで飛び込むが基本は待ちの姿勢。
序盤にジャブに単発の右を合わせるが奪ったヒットはこの一つか。
入りは浅く単発なのではっきりしたポイントにはならない。
天心も手数は決して多くはないが自分からジャブを突き、ジャブをヒットさせてから左ストレートを上下に打ち分ける。
お互いクリーンヒットはないラウンドだったが、序盤のアシロの右を取るジャッジもいれば、ジャブを当てて左につなげ、自分から試合を作りに行った天心につけるジャッジもいるだろう。
3R 天心のジャブ、アシロも手数は増やす
3R目は前のラウンド待ちすぎたと判断したかアシロは右で入ったあと左左右とコンビネーションにつなげていく。
当たってはいないが手数の面では2R目よりは出ている。
天心も手数では五分。
時折ジャブでアシロの顔面を跳ね上げており、微妙なラウンドだがポイントをつけるなら天心。
4R リングジェネラルシップは天心もクリーンヒットなし
4R目、緊張感のある展開の中でお互いのパンチが空を切る。
お互いにハイレベルなディフェンス。お互いパンチは当たっていないが、ジャブを突いてボディに繋げて前に出たのは天心。
リングジェネラルシップを取っていた天心のラウンド。
左を外された後の右フックもクリーンヒットではないが何度か当たってはいたので。
5R 天心がジャブでコーナーに詰めて左ボディ
5R目、開始早々に天心のジャブにアシロが右を合わせる。
天心はアシロのジャブに右フックを合わせる。
ジャブからコーナーに詰めて左ボディストレートをヒットさせる。
クリーンヒットはないもののポイントをつけるならハッキリと天心。
6R アシロが飛び込む右と天心のスイッチに左フック
6R目、アシロの飛び込む右につけるか、天心のジャブからの左ボディにつけるか微妙なラウンド。
天心のスイッチしての右スイングに左フックを合わせたアシロのラウンドでも良いかもしれない。
が、前に出てジャブを出して試合を作りにいっている天心のラウンドでも良い。
微妙なラウンドだけとここはアシロか。
7R 天心が的確にジャブを当てて左につなげる
7R目、アシロはジャブに右を合わせる場面があった。
右で飛び込んで左右左とパンチを振る場面もあったがガードの上。
天心はジャブを当ててロープに詰めてボディショットへとつなげる。
的確にジャブを当てて左につなげる天心のラウンド。
アシロの単発の右を評価するジャッジもいてもおかしくない。
8R アシロ巧みなディフェンスから右
8R目、アシロは巧みなディフェンスワークで天心のパンチを外して右をヒット。
ガードの上だが右から左右とコンビネーションにつなげる場面もあり、このラウンドはハッキリとアシロが取ったか。
9R、10Rは天心が攻勢
9,10Rは天心の攻勢が目立ったが、問題となっているのは9Rの左ボディでのダウン。
9Rのダウンはアシロ選手が右を振って足を滑らせたものなのでダウンではないと思います。
しかしこのシーン、染谷レフェリーの位置からだと両者の背中側でパンチが見えません。
サウスポーとオーソドックスの試合時にはレフェリーも立ち位置が難しいもの。
染谷レフェリーの位置からだと天心が左ボディでダウンを奪ったように見えて全くおかしくありません。
稀にインターバル中にダウンではないと訂正することもありますので、今回もそういうアナウンスはあるかもとは思いましたが。
このダウンがなくても試合は天心選手が勝っていたので致命的なジャッジにならなくて良かった。
ということで改めて判定し直してもアシロ選手が取ったラウンドは2か3Rなので判定は妥当なものと思います。
ただ、どのラウンドも微妙だったのも事実。
公開スパーではWBOバンタム級世界ランキング2位のヒメネス選手相手に素晴らしいパフォーマンスを見せていた分、試合内容自体はやや物足りないものでした。
しかしこの試合は対戦相手のアシロ選手がとにかく強かった。
次戦ではもう一度世界上位ランカークラスの選手と試合をした上で、世界挑戦の舞台に進んでも良い時期が来ていると思います。
帝拳の路線は焦らず確実にではありますが、今の実力なら世界チャンピオンにも十分なれるところまで来ている。
2025年はボクサー那須川天心にとって勝負の年になるでしょう。