緑ジムでプロボクサーとして活躍していた木附大己選手の訃報を目にしました。
新人王トーナメントでは優勝候補の一角として、その後は恐怖のノーランカー(ランキングには入っていないがランカーと同等の力を持ち脅かす存在)として注目していた木附大己選手。
中日本で活躍されていた選手のため会場で観戦する機会はありませんでしたが、高校球児からボクサーに転向したパンチャーはボクシングファン的に夢を感じる存在でした。
生観戦の機会はありませんでしたが、ネット上に残っている配信動画をまとめる形で木附大己、戦いの歴史を振り返ります。
デビュー戦は長身サウスポー太田彩千耶
木附大己選手のデビュー戦は2021年6月、対戦相手は長身サウスポー太田彩千耶選手。
距離の噛み合わぬデビュー戦で長身サウスポーは一番嫌な相手。
デビュー戦で相手もサウスポーとあって、ややぎこちなさもあった立ち上がり。
木附選手は振り回してバランスを崩す場面もありつつ、右ストレートを決めるがお返しの左をもらう場面も。
2Rには再三右を決めてダウン寸前まで追い詰めるが、チャンスに力が入り大振りに。
デビュー戦ですからこうなるのも当然。
弱った相手を見たらアドレナリン放出で仕留めに行って力が入るものです。
このピンチを乗り切った太田選手は3Rにお返しのワンツーで盛り返すが、最終ラウンドは木附選手の右が勝りました。
サウスポー相手のショートの右、そして元高校球児のぶん投げるような右スイングが印象的でした。

2連勝の2分けで経験を積む
デビューから2連勝後は2試合続けてドロー。
自分が初めて木附選手の試合を観たのは4戦目の藤本翔大戦でしたが、左フックで飛び込む姿に身体能力の高さを感じました。
下半身も安定しているし変な癖もなくボクシングも綺麗。
叩き上げのプロ4戦目で基本もしっかりしつつパワフル。
今の時代にプロボクサーをやっている選手達は大変だなぁと思ったものです。
かつて自分もプロボクサーをやっておりましたが、今だったら4回戦で全く勝てずに終わっていた自信があります。
そんなことを考えさせられた印象深い試合でした。
プロ5戦目植松風河戦でブレイク
木附大己選手は2024年の新人王トーナメントでアマチュアキャリア26戦19勝7敗の植松風河選手と対決。
この年の中日本フェザー級は間違いなく植松風河。
と思っていたところ、木附大己選手が1Rにドンピシャの右カウンターを炸裂させてノックアウト。
元愛工大名電4番のパンチ力は伊達じゃない。
衝撃の一発にこのまま全日本を制するかもしれないと期待値が一気に上がる試合でした。
まぐれの一発ではなくジャブから組み立て、植松選手の飛び込みをダッキングでかわして打ち終わりを狙っていた中での一撃。
程良い荒さに上手さが加わり成長を感じる1戦でした。

新人王トーナメントではサウスポーのど根性ファイター鈴木蒼平選手もインサイドから打ち抜く右ストレートでダウンを奪い、右フックでフィニッシュ。
デビュー戦の頃のややぎこちないサウスポー対策の構えからは見違えるように進歩しておりました。
余談ですが、サウスポーが苦手な選手は木附選手のデビュー戦と鈴木蒼平戦での構えの違いを比較してみるのも良いかもしれません。
サウスポーの左をキャッチしようと右拳を水平に前に出し、その結果、脇が開いたモーションの分かりやすい手打ち右ストレートになっている選手を度々見かけますが、サウスポーからしたら逆にやり易い構えなのであまりお勧めしません。
新人王西軍代表決定戦は友良瑠偉斗の技巧に完敗
2024年の新人王トーナメントで中日本を制し、西部新人王との決定戦も勝利した木附選手は西軍代表決定戦で友良瑠偉斗選手と対戦。
しかしこの試合は友良選手が木附選手以上の身体能力の高さ、スピード差で技巧を発揮。
ダウンを奪われ負傷判定で木附選手は敗れましたが、この試合は友良選手が素晴らしかったと言うしかない出来でした。
友良瑠偉斗選手は新人王トーナメント後には横浜光ジム期待の眞下選手にもボクシングをさせず完勝しており、友良選手に負けたのは仕方がない。
ラストファイト山本愛翔戦幻のダウン
結果的に木附大己選手のラストファイトとなったのは2024年全日本新人王でランカーの山本愛翔戦。
立ち上がりはL字の構えから足を使ってジャブを突いて右を合わせ互角の展開。
だが徐々に、僅かながらに山本選手のテンポが優っていく。
3Rになると先に打たれてリターンは外され大振りになり劣勢な木附選手。
だがしかし、4Rにロープ側で左フックを決めて起死回生のダウン!
と思ったらこれはスリップの裁定。
レフェリーから見えない角度だったので止むなしかもしれないが、山本選手はこのラウンドクリンチと足で逃げており完全にダメージがあった。
5Rも山本選手はまだダメージが残っているのか疲れたのかクリンチが多く、木附選手はジャブを突いて自分から前に出て左フックをヒット。
最終ラウンドはお互いに激しく手を出すが、木附選手がパンチをまとめると山本選手はここもクリンチ。
クリーンヒットは五分五分だが、果敢に手を出した木附選手とクリンチで遮断する山本選手だと見栄えは木附選手。
結果は58対56で山本選手の勝利ではありましたが、4Rがダウン、5R,6Rは木附選手がポイントを取ったと思ったので個人的にはこの試合は木附選手が勝利でも良かった内容でした。
結果は伴わなかったものの、ランカー以上の自力があることをこの試合で証明した木附大己。
ランカーになるのも時間の問題と思われたがこの試合がラストファイトとなってしまいました。

終わりに
木附大己選手の生涯戦績は10戦6勝(4KO)2敗2分。
2敗はいずれも現日本ランカーに喫したものだが、そのうちの1敗は勝っていてもおかしくなかった試合でした。
ランカーになるのも時間の問題、いずれはフェザー級のタイトル戦線に絡む選手になっていたでしょう。
キッズ時代からボクシング一筋の選手が多く活躍する昨今のボクシング界において、木附選手は叩き上げボクサー達に夢を与える存在でした。
長年ボクシングを見てきた一ファンとしても、彼のような叩き上げの選手が出てこないと面白くないと思っていたので心躍らせてくれる存在の一人でした。
短い人生となってしまったことには胸が痛みますが、夢を見させていただいたことに心から感謝申し上げます。
