こんにちはtorajiroです。
WBOボクシング世界ミニマム級タイトルマッチにおいて減量失敗が起きた際に、今後減量失敗が相次いでしまう可能性がある事を記事に書きました。
▶計量失敗、体重超過したボクサーのその後〜石澤開はどこへ向かう?
過去の傾向から、大きな試合において減量失敗が起きると、負の連鎖が起きていたためそう予想しましたが、残念ながらその後相次いて各種興行にて選手の棄権が発生しています。
近年何故これほどに選手の減量失敗や怪我による棄権が増えているのか、対応策を考える上でまずは原因を整理してみました。
水抜きによる直前の大幅減量に失敗するケースが槍玉に上がりますが、原因はそれだけではなくいくつかあると考えております。
知識不足で直前に落とそうとして失敗
YouTube等のSNSで水抜きで直前に一気に体重を落とす事例が紹介されることで、「自分もやれる!」と勘違いして知識がないまま直前に5,6kg落とそうとして失敗している選手も中にはいると思われます。
体内の水分量は8%以上落としたら脱水症状になる可能性が高いです。ひどくなると体が痙攣を起こして減量どころではなくなってしまいます。
減量中のボクサーは知らず知らずのうちに水分を控えめに摂取していて、既に体内の水分量が少ない状態になっている場合が往々にしてあります。
水抜きしようと思ったら既に抜けちゃってたという事がないように気をつけたいところです。
そこまで初歩的な失敗をするボクサーは流石に少ないとは思いますが、今は体内の水分量を測定できる体重計もあるので、日頃から体水分率を小まめにチェックし、水抜きは自分の体の事を十分に把握した上で行うべきだと思います。
↓タニタの体脂肪計は高機能でお勧めです。
水抜きについては一力ジムの栗原慶太選手のYouTubeチャンネルが参考になります。
次戦は元世界チャンピオンの小國選手との注目の一戦です。栗原選手は勝利者インタビューで敗者に対して熱いメッセージを送る姿勢が素晴らしい、人間的魅力もあるボクサーです。
水抜きに話を戻すと、4回戦のまだ減量に慣れていない選手は栗原選手よりもあと500g〜1kgくらい余裕を持っても良いと思います。失敗は絶対に出来ないので。
新型コロナウイルス感染による影響
この影響は無視出来ないです。
新型コロナウイルスに感染して試合が延期、中止になるケースもありますし、試合前には治ったけれど体重を落としきれなかったというケースもあります。
コロナ感染の影響で試合を延期したケースですと、拳四朗選手や内藤律樹選手がいますが、いずれも試合には敗れてしまいました。中止に関してはたくさんあり過ぎてもう分かりません。
体重を落とせなかったケースですと佐々木尽選手がいました。
こればっかりはもう仕方ないです。誰も責められません。
試合間隔が開きすぎて思うように体重が落ちない
以前は4回戦ボクサーであれば選手もたくさんいて、本人が希望すれば3ヵ月サイクルくらいで試合をする事は可能でしたが、プロボクサーも減り、更にコロナ禍で試合間隔が開いてしまう傾向にあります。
試合間隔が開くと、その間に体重が増えてしまう場合もあるし、1試合に対する思い入れが強くなりすぎ、頑張り過ぎて怪我のリスクも高まります。
1戦の重みが増すので、少しでも有利な条件でと無理な減量をしてしまう選手も出てくるでしょう。
自分の適性階級で試合が出来ない
これは意外と認識されていない点かもしれませんが、自分の理想とする階級で試合をするって案外難しいです。
自分が現役時代も、本当はバンタム、スーパーバンタム辺りで試合をしたかったのですが、話が来るのはフェザーやスーパーフェザーの試合ばかりでした。
今は選手が減っているので尚更自分が理想とする階級で試合をする事が難しくなっている可能性があります。
上の階級で話が来たときは、ジム間でキャッチウエイト(話し合いで体重を決める事)の交渉をしますが、下の階級側からしたら少しでも軽い階級で試合がしたいので、上の階級の選手は普段より若干多めに減量する事になります。
怪我による棄権があっても代役が見つからない
プロボクサーの数が減っているので(特にA級、B級)、選手が怪我をした場合の代役を立てる事も難しくなっているように感じています。
豊富に選手がいれば2~3週間前であれば代役も見つかるしれませんが、選手が少なければそれも難しくなってきます。
選手の怪我で興行に空きが出そうな場合は、ジム間で代役を探すだけでは限界があると思うので、もっとSNSを使って大々的に対戦相手の募集を掛けても良いのかなーと考えたりもします。
試合に飢えている選手もたくさんいるはずですので。
選手の中で棄権するという選択肢が出来てしまった
これはあくまで想像ですが、減量失敗やコロナ感染、怪我による棄権が増えている中で、これまでは頭になかった「棄権」という選択肢が選手の中に無意識のうちに出来てはいないでしょうか。
小学校の朝礼で、誰かが咳をしたら急に大勢咳き込み始めたり、誰かがトイレに立ったら我も我もとなるあの現象です。
選手の心の中に「これだけ棄権する選手がいるんだから」という意識が少しでもあると、ギリギリまで追い込んでいるところでプツンと糸が切れてしまう可能性があります。
棄権した選手側のコメント等でドクターストップがかかったと良くありますが、医者の立場からしたら大抵の怪我がドクターストップです。
過去に自分も試合前のスパーで後頭部に強烈なパンチをもらってしまい、頚椎捻挫で手足が痺れてヤバい状況になった事がありました。
医者からは「親の仇打つわけじゃないんだから」とストップがかかりましたが、ジムに連絡したら「折れてないなら大丈夫だ!」の一言。
結局体重は食事で落とし、ギリギリまで安静にして試合しました。それでも試合は勝てたので結果オーライでしたが。
コンディションが作れなかったらそれは本人の責任で、対戦相手の事を考えたらどんな状況でもリングに上がらないと駄目だとその時は学びました。
今も多くの選手がその前提だとは思いますが、あの時棄権が良くある事で、ジムからも優しい言葉をかけられていたら自分は棄権してたかもしれません。
ジム側も選手に対して厳しい事を言えない
ジム側も世の中の流れ的に今は「怪我でもなんでもリングに上がれ」とは言いづらいところもあります。
自分が働く職場も若い人のメンタルの問題による長欠、休職が相次いでおり、無理はさせないという風潮が社会全体に広がっていると感じる今日この頃。ボクサーにだけ「興行を成立させるために何が何でもリングにあがれ」とは言いづらい空気はあります。
「5万のファイトマネーのために命かけられるか!」という話にもなるし、それで万が一でも事故があったらジム側が責任問われてしまいます。訴訟社会ですからそこはリスクは犯したくないでしょう。
という具合にジムサイドとしても厳しい事を言って何としても選手をリングに上げるという指導がやりづらくなってきてはいないでしょうか。
まとめ
以上、減量失敗や怪我による試合キャンセルが増えた理由をまとめますと以下のようになります。
- 体重を直前に落とす傾向にどんどん傾いている
- 水抜きに対する知識のなさ
- 新型コロナウイルス感染の影響
- プロボクサー数の減少による影響(試合間隔が開く、適正階級で試合が出来ない、代役が見つからない)
- 減量失敗や怪我によるキャンセルが相次ぐ中で選手の中に「自分も」という感情が芽生えてしまう
- 世の中の流れ的にジムも選手に対して厳しい事は言いづらい
それぞれに対してどのような対応策を取れるかは改めて考える必要がありますが、ぱっと思いついたところを箇条書きにします。
- 直前落としの傾向と水抜きに関しては知識をつけ(栗原選手のYouTube動画等)、テクノロジー(体水分率を測定できる体重計)で補う事でクリア
- コロナウイルスはそろそろワクチン接種と集団免疫終わって欲しい(ただの希望、、)
- プロボクサー数減少の影響はマッチメイクにSNSをもっと活用
- 体重超過や怪我による棄権に対応するための仕組みづくりをする
プロボクサー数はコロナ禍以前から減り続け、コロナ禍で一気に激減しましたが、昨年度は嬉しいことに300名も増えました。
▶︎JBC解散の一方、プロテスト受験者はコロナ前水準に、ボクサー数も増加へ
まだまだ以前の水準には程遠いですが、面白い4回戦ボクサーもどんどん増えていますし、この流れに乗っかって選手を応援していきたいですね。
仕組みづくりという点に関して今回この記事では触れませんでしたが、やはり試合がキャンセルになった際の対戦予定だった選手の保証をもっと考える必要があると感じております。
- 必死で練習し、減量し、チケット手売りで何百枚も売って、対戦相手が体重落とせず試合がキャンセル。
- そこからチケットを買ってくれた人に試合中止と返金についての連絡。
- 予定してたファイトマネーも入らず。
- 試合に向けてサプリやら体のケアに先行投資した分も回収できず。
この悲惨すぎる現状を何とかするための仕組みも同時に考えていく事が、この先のボクシングの発展に欠かせないものと考えております。
せめて一定水準の金銭的補償は必要で、そのための資金をどう捻出するかを引き続き考えてみたいと思います。
最後にもう一度、体重計は体の変化を把握する上でとても重要なので体水分率まで測定出来るような体重計を用意しておく事をお勧めします。