こんにちはtorajiroです。
引退後のボクサーを元ボクサー俳優木幡竜さんが演じた映画「生きててよかった」を観に行きました。
上映前から気になっていた映画でしたが、若干期待外れに終わりそうな予感もあり、楽しみ半分不安半分だったのですが、映画を見終えた後は魂が揺さぶられてしばらく現実世界に戻れなくなる程の名作でした。
頭で考えるか、体で感じるか、それによっても評価は分かれるかもしれない映画ですが、ネタバレなしでアクション、ストーリー、演技に分けて感想をまとめました。
そもそも生きててよかったってどんな映画??
「生きててよかった」のあらすじや主演の木幡竜さんについては以前以下の記事にまとめましたのでご覧ください。
▶︎映画『生きててよかった』木幡竜のボクシングアクションは必見!!
香港のアクション映画のスーパースター、ドニー・イェンとも敵役で共演した木幡竜さんのアクションシーンは「レジェンド・オブ・フィスト」を観て「すげーなこの人」と思っていたので今回も上映前の一番の楽しみは木幡竜さんのアクションシーンでした。
「生きててよかった」のアクション(ボクシング、地下格闘技)の感想
一番楽しみにしていたアクションシーンから先に感想を述べます。
木幡竜さんは元プロボクサーということもあり、パンチのキレは素晴らしかったです。
僕も元プロボクサーですが、その視点で見ても木幡さんのボクシング技術は非常に高かったです。
ボクシングの名門横浜高校でのアマチュアボクシング経験もある木幡さんの長身から繰り出される打ち下ろしの右は切れ味抜群でしたね。
プロでも続けていればA級ボクサーやランカーになっていたと思います。仮に自分が勝負を挑んだらあの右でぶっ倒されたんだろうなと思いました。
もちろん映画なので迫力重視で大袈裟にパンチを打つ場面もあり、実戦とは違いますけど、アクションシーンは腰が浮きそうになる程に手に汗握るものでした。
純粋なボクシングシーンは序盤のみでメインは地下格闘技でしたが、蹴りや関節技も含め見事なものでした。さすがドニー・イェンと戦った男。
これまで数々のボクシング映画等で格闘シーンを観てきましたが、次元が違いすぎました。
「え?これ演技なの!?ガチで戦ってるでしょ?」誰もがそう錯覚すると思います。
「生きててよかった」のストーリーの感想
ストーリーに関してはですね、字面だけ追ったら「え?なんで??そうはならなくね?」と色々ツッコミたくなると思います。
仮にこの作品を小説で読んでもここまで魂を揺さぶられることはなかったと思う。
「それはないっしょ??」頭ではそう思っているのですが、何故でしょうか、心と体が自分が頭で考えているのと違う反応を示していました。
頭:「いやいやいや。その選択はないって。それはないっしょ??」
心:「心臓バクバク。いつの間にか涙が止まらん。」
体:「全身が興奮で震えてる。腰が浮く。。肩に力が入りまくり。」
頭で考えていることと心と体の見事な乖離。
この状況には既視感がありまして、自分がプロボクサーをしていたときの仲間には、生き方が不器用な選手達がいました。
プロボクサーやっている間は「ボクシングやってるからまだ彼女と出来ない」と言ってて、引退したら「ボクシングのない自分に自身が持てなくて別れた」と、「何で?どうしてその選択になるの?」そんな葛藤が頭をよぎる時が度々ありました。
あの時のモヤモヤと、「生きててよかった」のストーリーに対するモヤモヤが凄くリンクしました。そしてまたそうした不器用な選手がリングに上がると凄い試合を見せてくれるんですよね。
「合法的に人を殴れる場が他になくてさ。」
「自分が勝ってるか負けてるか分からない試合の興奮がたまらないんだよね。」
「減量が辛かったはずなんだけど、この間のスパーで数日間の記憶が飛んですげーラッキー。」
「フットサルのチーム作ったんだ。え?チーム名?あれ?何だったっけな?」
色々ツッコミどころがあるんだけど、リングに上がるとその瞬間に全てを捧げた戦いでこちらの魂を揺さぶった彼らの生き様と「生きててよかった」が凄くリンクして、フラッシュバックのように過去の思い出が湧き出てきました。
これを狙ってこのストーリーにした訳じゃないはずですが。
監督・脚本の鈴木太一さんにどういう思いでこの脚本を作られたのか聞いてみたくなりました。
「生きててよかった」キャストの演技に対する感想
「生きててよかった」を観た人の中で、ストーリーに対する評価はおそらく割れると思います。僕が頭では「いやいやそれは〜」って思ったように、そっちに引っ張られた人のこの映画に対する評価はもしかしたらそこまで高くないかもしれません。
でもですね、木幡さんのアクションに対して低い評価を下す人は間違いなくゼロ。この先もあれを超えられる役者はいないでしょう。
それと同様に役者陣の演技もとても良かったと思います。
木幡さんはもう完全に魂が乗り移っていて、木幡竜なのか楠木創太なのか分からなかったです。
試合に負けた引退勧告の下り(予告で流れているシーン)とか、自分もセコンドのお手伝いで良く後楽園ホールに行っていましたが、試合後の控室でああいう場面に立ち会う事もありました。
負けた選手に直接その場で引退だと言うことはありませんでしたが、選手がシャワーに行ってる間にチーフトレーナーが周囲から「もう無理だよ。引退させないと。お前から伝えないと。」そう告げられている場面に出くわす事がありました。
僕はそんな時、いつも下を向いて悔しい気持ちを堪えていました。自分がスパーリングパートナーをしていた尊敬する先輩が負けて引退させられそうだった時は辛すぎました。
こんな風に過去を思い出すのも木幡さんの演技が鬼気迫るものだったから。木幡竜という存在がいたからこの映画が出来たと言っても過言ではありません。
そして友人役で出演した元お笑い芸人キングオブコメディの今野浩喜さんがまた良かった。
ボクサー木幡の友人役でしたが、一千超えたボクサーを横で支える姿にもの凄くシンパシーを感じました。
感情的になり過ぎもせず、演技が行き過ぎになりそうな場面でスッとトーンが下がるところとか、プロのベテラン役者さんでもあそこまでの演技は出来ないのではなかろうか。
家庭での扱われ方も自分と同じでした。家に帰ってから映画の感想を話していた中で、今野さんが演じた松岡健児の話をしたら「それお父さんじゃん」って言われました。。
もうすっかり今野浩喜のファンです。
主人公の妻役の鎌滝恵利さんは表情がとても良かったです。表情で演技が出来る方なので先々ベテランになっても良い味を出していくでしょうね。
主人公の楠木創太を地下格闘技に引きずり込んだ新堂勇役の栁俊太郎さんはクライマックスの格闘シーンを観戦している時の表情が特に良かったです。
その他の役者さん達も演技が良くて、邦画でありがちな演技で冷めてしまう場面がなかったのは良かったです。
まとめ
「生きててよかった」を見終えた真っ先の感想は、「この映画に出会えて良かった」まさに「生きててよかった」そう思いましたね。
映画を見終えてから公式サイトの著名人のコメントを読んでいたら、水道橋博士がこんなコメントを残していました。
観客は皆、客席で呟くだろう。
「この映画を見るため、生きてて良かった!!」
https://happinet-phantom.com/ikiteteyokatta/index.html#cast
はい。呟いた皆の中の一人でした。
自分の感情を言葉で伝えられないのがもどかしいですが、夢追い人、そこから挫折した人、セカンドキャリアに進む人、そしてそうした人物と関わった人、どれも人間誰しもが通った道ではないでしょうか。
少しでもかするものがあると感じた方は是非この映画を観ていただきたいです。
映画のキャッチコピー「この人生、喜劇か、悲劇か。」このフレーズの意味が映画を見終えた後によく分かると思います。