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【関係ある?ない?】ボクシングにおける死亡事故とラウンド数の相関

torajiro

ボクシングファン歴25年。プロボクサー歴3年。ボクシングブロガー歴2年。一人でも多くのプロボクサーの戦った証をネット上の記事として残していきたいと思いブログを開設。

本記事ではボクシングの試合における死亡事故にラウンド数はどれくらい関係しているのか、調べた結果を紹介します。

穴口一輝選手のリング禍後、再発防止の議論の中でラウンド数の短縮も当然のことながら話題に上がりました。

この点について「ラウンド数が増えても事故の数は変わっていない」という意見も目にしました。

4Rの試合でも10Rの試合でも同じように事故は起きていると。

果たしてそれは本当だろうか??

疑問を抱いた点だったので実際のデータがないか探してみたところ、有益な情報が手に入りました。

ラウンド数が増えても死亡事故の数は増えていない

Wikipediaに掲載された統計を見るとラウンド数は少なくても確かに事故は起きております。

ラウンド別の死亡事故件数を見ると、

  • 4Rで82件
  • 10Rで92件

という結果でした。

確かに件数で見ればそれほど変わりません。

穴口選手以前、最後に国内でリング禍があったのは4回戦の試合でした。

しかし、4回戦と10回戦で件数が同程度ということは、ボクシングを良く知る方であれば、

ラウンド数が死亡事故にかなりの影響を与えている

ということに気づくはずです。

死亡事故の件数は同じでも確率は違う

プロボクサー数はJBCの事業報告書によると令和4年度においては1,971名。

1,971名のプロボクサーのうち1,256名が4回戦ボクサーです。

ボクサー全体の60%以上を占めているのは4回戦ボクサー。

年間に開催される8R以上の試合と4Rの試合数には大きな差があります。

試合数が大幅に違うのに件数が同じ

ということは、ラウンド数が増えればそれだけ事故の確率が上がるということ。

もっとはっきりした根拠となるデータはないものかと更に調べてみました。

日本臨床スポーツ医学会で発表されたラウンド別試合数と事故発生率の統計

ラウンド数ど事故発生率の相関についてもっとはっきりした根拠となるデータはないものかと調べてみました。

すると「第 26 回日本臨床スポーツ医学会学術集会」において、ラウンド別試合数と事故発生率のデータが発表されていました。

出典:我が国のプロボクシングにおける頭部外傷の現状と対策より

このグラフが示すとおり、国内においては4Rの試合と10Rの試合では事故・死亡事故発生率は大幅に異なります。

  • 4回戦の事故発生率は0.55 死亡事故発生率は0.12
  • 10回戦の事故発生率は4.38 死亡事故発生率は1.82

死亡事故を減らすためにラウンド数を減らすという主張にはっきりした根拠がある。

ということはこれで分かりました。

まとめ:格闘技が社会から許容され続けるために

以上、ボクシングにおける試合中の事故、死亡事故にラウンド数が大きく影響していることははっきりしました。

ただ、そこにはラウンド数以外の見えない要因もいくつか含まれています。

  • キャリアの浅い4回戦は早めのストップが徹底されている一方、タイトルマッチはストップが遅くなる傾向にある。
  • タイトルマッチに向けて練習段階から相当数のスパーリングをこなしてきており、準備段階で何らかの見えない負傷を負っている可能性もある。

といったラウンド数以外の要因も考慮する必要はあるでしょう。

ボクシングに対しては世界医師会が危険性に加えて競技の目的ゆえに禁止すべきであると声明を出しています。

こうした権威ある組織からも禁止の声が挙がっており、格闘技全般の世間的イメージも決して良くはない。

社会から許容され続けるためには常に改善策を考えて安全性を高めていく必要があります。

具体的な改善策はJBC主体でもっと踏み込んだ検討が続けられていますが、一ファンとしても憶測で感情的にならず根拠のあるデータを基に改善策を考えていけたらと思っています。

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