2025年5月3日(土)の第32回 DYNAMIC GLOVE on U-NEXTは角海老宝石ジムの3選手が大きな勝負に挑む興行となりました。
- 2023年Sライト級全日本新人王の川村英吉選手は前日本王者の藤田炎村選手にアタック
- 日本ライト級1位の村上雄大選手は王座決定戦で仲里周磨選手へのリベンジマッチ
- OPBFフライ級王者飯村樹輝弥選手は唯一敗戦を喫したエスネス・ドミンゴ選手へのリベンジマッチ
ジムとしては一つでも大きな挑戦になる試合が3連戦。
しかも3選手のトレーナーはいずれも佐藤直樹氏。
この鬼畜の3連戦を選手達は2勝1分で結果を残す。
選手達の健闘はもちろんですが、影のMVPは間違いなく佐藤トレーナーと言える一日でした。
中間距離での戦いを選択した藤田炎村を得意の距離で撃破した川村英吉

怪我もあって実に1年1ヶ月ぶりのリングとなった藤田炎村選手は得意のインファイトではなく中間距離でジャブを突いて探りあう展開を選択。
ブランクも考えると適切なプランだが、この距離だとジャブが抜群に上手い川村選手の土俵。
加藤善孝、高山樹延、岡田博喜と過去に佐藤トレーナーが育てた選手達は総じてジャブが上手いのです。
1R中盤までは藤田選手もジャブの差し合いで互角に渡り合っていましたが、徐々に川村選手のジャブから左フックが冴えてくる。
藤田選手のジャブに対して同時にワンツーやワンツーフックを合わせて自分のボクシングを展開していく川村選手。
藤田選手がリングに慣れて攻勢を強める前に川村選手の右が入り一気にまとめてTKO勝利。
藤田選手にとっては久しぶりのリングに慣れる前に終わってしまった一戦。
中間距離での戦いのためにガードが前戦より低かったところに良いパンチをもらってしまった。
力が落ちたというよりは更に上を目指す過程で戦い方を模索中のように見えました。
チャンピオン時代に大野俊人選手には中間距離での戦いで勝利しましたが、大野選手には通用しても相手が川村選手では難しいものがあった。
チャンスに一気にまとめた川村選手もお見事でした。
デビュー戦で感じた決定力不足は今はもう微塵も感じさせません。
村上雄大は仲里周磨へのリベンジマッチに序盤の有効打から最後はど根性

セミファイナルの日本ライト級王座決定戦には村上雄大選手が登場。
ここで勝利すれば角海老には珍しいサウスポーの日本王者誕生。
しかし相手は一度タイトルマッチで敗れている仲里周磨選手。
不利予想の中、村上選手は遠い間合いをキープし、ノーモーションの左から右アッパーを巧みにヒットさせる。
外からパンチを当ててはクリンチで仲里選手の反撃を遮断。
序盤は仲里選手を後手に回して優勢に試合を進める。
仲里選手の強打は恐いが綺麗なヒットを奪っているのは村上選手。
5R終了時点では村上選手が48-47でリード。
しかし疲れからのペースダウンは明らかで、後半に一気に仲里選手がペースを持っていきそうな予感が会場内に漂う。
その予想通り6R,7Rと仲里選手が攻勢を強めて流れは一気に傾く。
しかし、ここまでかと思われた村上選手は8R,9Rとど根性の手数で再びポイントを手繰り寄せる。
これには驚いた。
気持ちで戦っている村上選手に胸が熱くなりました。
最終ラウンドは仲里選手が強打で上回り判定はドロー。
ベルトは手に入らなかったが序盤の正確な左からの右+後半のど根性で成長を見せた村上雄大選手でした。
仲里選手はどこかエンジンが入り切らない不完全燃焼なボクシングでした。
仲里選手は負けた試合や今回の試合でも納豆いかないリアクションをしているが、客席で見ていると毎回判定は妥当。
そこの乖離を陣営として埋めていく必要があるように思います。
飯村樹輝弥は抜群のカウンターとディフェンスでエスネス・ドミンゴにリベンジ!!
飯村選手は2年半前に3度倒されTKO負けしたエスネス・ドミンゴ選手へのリベンジマッチ。
前回の試合を現地観戦した身としては勝てるイメージが全く湧かない試合でした。

前戦ではお互いのパンチ音が全く違い、いくら飯村選手が打ち込んでもどこかでドミンゴ選手が爆発したら会場がどよめく衝撃が走るという試合でした。
が、リベンジマッチとなった今回は飯村選手が抜群の距離感とディフェンス能力、加えて打ってきたところへのカウンターでドミンゴ選手が思い切りパンチを振り抜いて会場をどよめかせる場面は殆どありませんでした。

ジャブで自分の間合いをキープし、鉄壁のディフェンスに精密機械のようなカウンターでラウンドが進むに連れてドミンゴ選手は出来ることがなくなっていきました。
会場で観戦していても心配だったのは4Rまででそれ以降は安心して見ていられました。
西尾トレーナーと作ってきたボクシングに佐藤トレーナーの精巧さが上乗せされて進化を続ける飯村樹輝弥選手。
側でサポートを続ける奥様の存在も大きいでしょう。
加えて飯村選手の強さへの貪欲さと良い意味での素直さも欠かせません。
凝り固まらずにあらゆる意見を吸収しながら糧にしていこうという飽くなき探究心には感服します。
強敵に勝利した飯村選手が世界挑戦のチャンスを手にするのは時間の問題でしょう。
まとめ:3選手いずれも相手の距離を封じた佐藤トレーナーの職人技
こうして3選手いずれも持ち味を発揮し、逆に相手の持ち味を封じて好パフォーマンスを披露しました。
そしてその影には佐藤トレーナーの存在が。
「絶望の外来種」の異名で日本を震撼させたエスネス・ドミンゴ、そして2023年の神興行となった4大タイトルマッチで強烈なインパクトを残した仲里周磨と藤田炎村。
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この3選手がいずれも持ち味を出せずに終わった5/3 DYNAMIC GLOVEの影には角海老のチャンピオンメーカー佐藤直樹氏の姿がありました。
川村英吉のアップセットで一仕事終えて美味しい酒が飲みたいところに村上雄大選手のフルラウンドの心身ボロボロになる王座決定戦があり、そこからの一瞬の気も抜けないエスネス・ドミンゴ戦。
流石にこれはきつい。。
この鬼畜の3連戦でしっかり結果を残した佐藤直樹トレーナーが今回のMVPで異論はないでしょう。
加えて角海老宝石ジムのチーム力も光った興行となりました。
こうして名勝負の裏に存在するトレーナーの存在にも意識を向けるとボクシングがまた一層楽しくなります。
佐藤直樹トレーナーの選手がリングに上がる際にはジャブと距離感、そして無駄打ちのないパンチの的中率に意識を向けて観戦することをお勧めします。