こんにちはボクシングブロガーのtorajiroです。
スポーツ記者森合正範氏が世に放った魂の力作『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』を読み終えました。
ボクシングファン必読の1冊であることは言うまでもありませんが、非常に多くの教訓が詰まった人生のバイブルと言っても良い1冊であり、ボクシングファン以外の方にも是非とも手に取っていただきたい書籍です。
果たしてどこまで伝えられるか自信はありませんが、ネタバレなしで『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』がどんな本なのか?どんな人にお薦めするかを紹介します。
2階級での4団体統一を達成した井上尚弥選手の強さの秘密は果たしてどこにあるのか!?
怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~のコンセプト
『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』は、井上尚弥選手と戦って敗れたボクサー達の目線から見た井上尚弥選手の強さ、凄さ、井上尚弥と戦うことの意味が紹介された1冊。
ただ井上尚弥選手の凄さを紹介する書籍ではなく、
- 井上尚弥選手と戦った当時の状況
- 井上尚弥選手との試合に向けた覚悟
- 敗戦の受け止め方
- 井上尚弥選手との試合後の歩み
等々から人生の教訓を得られる学びの多い書となっております。
- 全ての能力が高いと言われる井上尚弥選手
- 井上尚弥選手本人では語れない自身の強さ
- 毎試合が圧倒的過ぎてその凄さが伝えきれない井上尚弥選手
そんな井上尚弥選手の凄さとは??戦って敗れた選手達は一体何を語ったのか??
井上尚弥選手の強さを解き明かすヒントが『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』を読めば見えてくるはずです。
怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~に登場するボクサー情報
『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』にはどういったボクサー達が登場するのか。
書籍の目次に沿って各選手の特徴を紹介します。
第一章 「怪物」前夜(佐野友樹)
第一章で登場する佐野友樹選手は井上尚弥選手の3戦目の相手で初めての日本人選手。
- 生涯戦績は25戦17勝(12KO)3敗(1KO)5分
- 当時の日本ランキングはLフライ級の1位
個人の感情を正直に吐露すると、佐野選手には井上選手と戦って欲しくなかった。
佐野選手には井上尚弥選手とは戦わず日本タイトルを獲って欲しいという気持ちがありました。
佐野選手は初めての日本タイトル挑戦は2対1の判定で川崎新田ジムの黒田雅之選手に敗れていたのですが、自分の目には佐野選手が手数で勝ってポイントを取ったように見えました。
たまたま現地で観戦していたこのタイトルマッチがあったため、佐野選手には少なからず思い入れがあり、出来れば井上尚弥選手は避けてベルトを獲って欲しかったのです。
何故佐野選手はこの試合を受けたのか??
その疑問に対する答えが『怪物に出会った日』を読んで分かりました。
なお、佐野選手に一番多くのページが割かれている点も『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』を語る上で欠かせない点の一つです。
第二章 日本ライトフライ級王座戦(田口良一)
第二章に登場する田口良一選手は井上尚弥選手に敗れた後に世界タイトルを獲得し、2団体統一王者にまでなる実績を残した名チャンピオンです。
- 生涯戦績は33戦27勝(12KO)4敗2分
- 井上尚弥選手と戦った当時はLフライ級の日本王者
佐野選手同様に田口選手にも井上尚弥選手とは戦って欲しくなかった。
当時の田口選手は2度目の日本タイトル挑戦でLフライ級のベルトを奪取したばかりで、国内でもトップ選手とはシーソーゲームを演じていた時期でした。
2023年に対戦相手のリング禍を乗り越えて日本タイトルを手にした大内淳雅選手もタイトル獲得少し前の田口選手と対戦したことがあり、終盤に田口選手をダウン寸前まで追い込む猛攻を見せていました。
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国内でシーソーゲームを演じながら何とか頂点に君臨した田口選手には長く王座を防衛してもらいたく、井上尚弥選手との対戦は避けて欲しいと強く願っておりました。
そんな田口選手が怪物井上尚弥選手との試合を経て大きく飛躍することになるとは全く想像も出来ませんでした。
第三章 世界への挑戦(アドリアン・エルナンデス)
井上尚弥選手が初めて手にした世界のベルトはWBCのLフライ級。
対戦相手はメキシコのアドリアン・エルナンデス選手でした。
この試合は僕も現地で観戦していたのですが、私的なメインは井上選手ではなかったので実は帰りかけていました。
ま、どうせ井上選手が圧倒するんだろう。。
そんな感じで気持ちも入らなかったのですが、入場してきたアドリアン・エルナンデス選手が自信満々で強者のオーラを感じたので観戦することに。
実際序盤の動きを見て強い王者だと思ったのですが、それでも井上尚弥選手が圧倒。
この当時は井上尚弥選手を観ていても強過ぎてやや感情移入出来ない複雑な時代でした。
第四章 伝説の始まり(オマール・ナルバエス)
井上尚弥選手が一気に2階級上げてSフライ級王者のオマール・ナルバエス選手に挑んだ1戦は相当苦戦するだろうと予想していました。
井上尚弥選手がバンタムからSバンタム級に上げていきなりラスボスのフルトン選手に挑むと決まった時以上に危険な挑戦だと感じていました。
2階級上げて、よりによってナルバエスとは、、
オマール・ナルバエス選手はフライ級時代と合わせて27度も世界のベルトを防衛し続けてきた名王者。
階級アップで減量苦から解放されたと語るボクサーが、結局のところ階級アップ以前よりも結果を残せないという前例を何度も見てきていたので、いくら井上尚弥選手であっても2階級アップ、更に相手はナルバエスと来たら苦戦は避けられないはず。
と思っていたのにまさかまさかナルバエスがこんなにもあっさりと倒されとは。。
この試合から井上尚弥選手の世界での知名度は一気に上がり始めましたね。
僕もナルバエス戦を経て、井上尚弥選手には日本人が成し得なかった高みまで登り詰めて欲しいと応援するようになりました。
第五章 進化し続ける怪物(黒田雅之)
井上尚弥選手のプロテストでスパーリング相手を務め、その後も長きに渡り井上尚弥選手のスパーリングパートナーを務めた黒田雅之選手。
- 井上尚弥選手はスパーリングで格下相手でも容赦なく倒しに来る。
- 井上尚弥選手とのスパーで壊されるんじゃないか。
- 井上尚弥選手とのスパーの恐怖で鬱になった選手がいる。
そんなまことしやかな噂を聞いたことがありましたが、そんな中でも黒田選手は井上尚弥選手のスパーリングパートナーを務め続けました。
パンチがありカウンターセンスもあるが、相手を見過ぎてしまう。
それが僕の黒田選手に対する印象でした。
第六章 一年ぶりの復帰戦(ワルリト・パレナス)
一時期日本のジムに所属していた頃はウォーズ・カツマタのリングネームでハイペースで試合をこなしていたパレナス選手。
フィリピンボクサーらしいハードパンチが売りで試合は面白い選手でした。
パレナス選手の章を読むと同じボクシングという競技の中でも選手一人一人の置かれた状況、目指すところは様々であることが分かります。
個人的にこの章は突き詰めていくと深いなぁと強く印象に残りました。
第七章 プロ十戦目、十二ラウンドの攻防(ダビド・カルモナ)
井上尚弥選手が拳を痛めて久々の判定決着だった試合。
井上尚弥選手と戦った当時は世界ランキング1位。
戦績は20勝3敗5分。
そして井上尚弥選手に敗れた後の戦績は2勝8敗。
井上尚弥選手との試合がピークでそこからは落ちていく一方。
カルモナ選手に限らず、井上尚弥選手との試合をピークに落ちていく選手は少なくありません。
井上尚弥選手に対しては対戦相手がピークを過ぎた選手ばかりだという声も時には聞こえてきます。
何故こうした現象が起きるのか、カルモナ選手の章を読んで感じたことがありましたが、ネタバレはしたくないので是非書籍にてご確認ください。
第八章 日本人同士の新旧世界王者対決(河野公平)
河野公平選手と言えば「亀田興毅選手の4階級制覇を阻止した男。」
として内藤大助さんレベルのスターになるはずが、亀田興毅選手が国内で活動出来なくなっていたが故に、その偉業も大きく語られることなく大きく報道されることはありませんでした。
- 「内藤大助になれなかった男」
- 「スターになり損ねた男」
- 「悲運の河野」
そんな風にボクサー仲間の間で河野選手の事を語ることもありました。
どんな異分子も排除せず内包していくことが業界の発展に繋がるものです。
話は逸れましたが、亀田興毅選手に勝利しても大ブレイクすることはなく、その後世界王者から陥落した河野公平選手に巡ってきたチャンスが井上尚弥戦でした。
しかしこの時、河野選手の奥様は妊娠中。
家族にとって新しい命が生まれる大事な時期に井上尚弥選手との試合。
奥様の心情を思うととても複雑。
新しい命を宿しながら危険な戦地に夫が赴く。
井上尚弥選手と戦うということは戦う選手にとっては名誉なことであっても、それを見届ける家族にとっては辛いこと。
仮に自分にとって大事な人が「井上尚弥選手と試合するよ」と言うのであれば、「同じファイトマネーを用意するから戦わないでくれ(無理だけど)」と懇願すると思います。
それくらいに井上尚弥選手と戦うことは覚悟とリスクを伴うものです。
第九章 ラスベガス初上陸(ジェイソン・モロニー)
ジェイソン・モロニー選手は双子のボクサーで、弟のアンドリュー・モロニー選手は元Sフライ級世界王者。
2023年5月にWBOの王座決定戦でネクストモンスター中谷潤人選手に豪快に倒された試合が記憶に新しい。
双子揃って日本人モンスターに倒された兄弟ですが、この章を読むと敗北は無駄じゃなかったということが良く分かります。
失敗を受け止め、そこから学ぶ人にとっては失敗は単なる失敗ではなく、次の成功に向けた大事なステップです。
この章は勝負の世界に生きて結果を求めている人にとっては必読の章でしょう。
結果を出すために必要なマインドが記されています。
第十章 WBSS優勝とPFP一位(ノニト・ドネア)
ノニト・ドネア選手との2戦はこの先も代々ボクシングファンの間で語り継がれていくでしょう。
感動的な第一戦、衝撃の第二戦。
ドネア選手の章はご本人ではなくチームドネアの一員、植田眞壽氏が見てきた視点でのドネア選手の様子、舞台の裏側が語られています。
《井上尚弥 VS ノニト・ドネア》
日本ボクシング史において永遠に語り継がれるであろう試合の裏側が、ドネア陣営サイドからの視点で語られている貴重な章。
雑誌やネットの記事でたくさんの井上VSドネアにまつわる記事を読んできた方にとっても新しい情報が多分に含まれております。
雑誌やネットの記事では断片的にしか紹介しきれなかったストーリーが時系列で体系立てて記されており、一つのストーリーとしてとても読み応えのある章です。
第十一章 怪物が生んだもの(ナルバエス・ジュニア)
父親のオマール・ナルバエス選手が井上尚弥選手に敗れた試合を日本で見届け、自分もボクサーになると決心したナルバエス・ジュニア。
ここからナルバエス・ジュニアがプロとなり、キャリアを積んで井上尚弥選手と対戦することも不可能ではない。
もしそんなことがあったら映画を超えますが、いつか日本のリングに上がるようなことがあったら日本のボクシングファンも喜ぶでしょう。
井上尚弥というモンスターの出現によって破壊された未来を、こうして次の世代が再構築していく復興に向けた粋なストーリーが最後の章に用意されているところが何ともニクい。
井上尚弥の敗者達から学ぶ人生の教訓
前項で紹介した選手達全員共通して「井上尚弥選手と戦って敗れた」という道を歩んでいます(黒田選手、ナルバエスJrは別)。
結果が全てと言われる勝負の世界において皆同じ結果に辿り着いています。
しかし、それぞれの選手が井上尚弥選手と戦うに至るまでの道のり、覚悟、モチベーションには大きな違いがありました。
そして敗北の後に辿った道も大きく異なります。
価値観は人それぞれなのでどの道が正解ということはありません。
それぞれの選手がどういった過程を経て井上尚弥戦を迎え、敗戦をどう受け止め、その後どういった行動を取ったのか??
そこに注視して、自分の人生を振り返りながら各章を読み進めていくと大きな気付きが得られるでしょう。
たどり着いた結果は同じであれ、そこに至るまでの過程と、結果が出た後の行動によって人生は大きく分岐します。
怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~はこんな人にお薦め
『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』は井上尚弥選手の強さの理由を知るだけでなく、人生における多くの教訓が詰まった1冊。
全ての方に読んでいただきたい1冊ですが、ボクシングファンは言うまでもなく特にこんな方に読んでいただきたいです。
- 色々と挑戦しているが中々結果が出ずに悩んでいる人
- 教育者として若者の指導に携わる人
- ビジネスにおいて成功を収めたいと思っている人
- 受験に失敗して落ち込んでいる人
- レジリエンスを高めたいと思っている人
特に近年は繊細で心が折れやすい人が増えていると言われる世の中で、レジリエンスの大切さを感じます。
チャットGPTを手掛けるオープンAIのサム・アルトマン氏も日本で講演した際にはレジリエンスの重要性を説いていました。
挫折から這い上がる力をどうすれば高めていけるか??
『怪物に出会った日~井上尚弥と闘うということ~』にはその答えがたくさん詰まっていますので是非手に取って読んでみてください。
定価2,090円ですが、Kindle版なら1,925円で更に507pt付与されるので少々お求めやすくなっております。