こんにちはtorajiroです。
新人王トーナメントの中でも出場選手が多く再激戦区のバンタム級。
この記事を書いている時点で東日本は準決勝、西日本、中日本、西部日本は決勝進出者が決定している状態ですが、総勢20名が出場した東日本は選手の数だけドラマのある階級です。
敗れた選手も含めたこれまでの軌跡と、今後の展望を占って見ました。
東日本予選で夢破れた選手達
総勢20名がエントリーした東日本バンタム級。一昔前なら20名のエントリーは普通でしたが、そもそもの若者人口減もありプロボクサーの減った近年において20名のエントリーはとても有り難い事です。この20名の中で敗れたものの次のストーリーが気になる選手をまずは紹介します。
優勝候補相手に2年連続敗れた佐藤大仁選手
アマチュアで22戦13勝の実績を持つ新日本仙台ボクシングジムの佐藤大仁選手は昨年の新人王トーナメントにエントリーし、順調に勝ち上がったものの東日本の決勝で全日本新人王になった梅津奨利選手に敗北。
今年の新人王トーナメントはアマチュアキャリアに加えてプロでも3勝していたので、シードのシードという位置付けでしたが、トーナメント初戦で優勝候補の1人水島楓翔選手と対戦し黒星。
1年越しの優勝には届きませんでした。
今後はまた来年の新人王トーナメントエントリーを目指すかどうかですが、そうするとまたシードで試合感覚が開いてしまうのが悩ましいところ。
佐藤選手はまだ22歳と若い選手なのでゆっくりキャリアを積んでも良いかとは思います。
シードの初戦で敗れた西峯勇人選手
佐藤大仁選手と同じくシードのシードとなった角海老宝石ジムの西峯選手。
昨年の新人王トーナメントは佐藤大仁選手に敗れ、今年のトーナメントは約1年振りの試合で船橋良太選手に敗れてしまいました。
西峯選手は1987年生まれ、今年で35歳となるためプロボクサーとして残された時間は長くありません。
来年のトーナメントまで待って最後のチャンスに賭ける手もありますが、そうするとまた1年間試合がなくなることになってしまいます。
残された時間が短いだけに悩ましいところです。
ボクオタからプロへ、河村慎司選手の挑戦は続く
ボクシングオタクからプロボクサーになった河村慎司選手についてはこのブログでは何度か紹介しているので以下の記事もご参照ください。
河村選手も新人王トーナメントにエントリーし、初戦は突破しましたが次戦でMTジムの熊谷祐哉選手に敗北。
試合前に河村選手の弱点が見えたと公言していた熊谷選手でしたが、河村選手が得意とする打ち合いの一歩離れた間合いを保ち、河村選手がジャブで踏み込み目線が下を向いたところに飛び込んで見えない角度からの左フックでワンパンチKO。
悔しい敗戦となった河村選手ですが、試合が終わればノーサイド。
前回試合直前に対戦相手の棄権により試合が無くなった熊谷選手にギフトを送り労っていました。
過去の対戦相手にこんなことされたら嬉しいって。泣いちゃう。熊谷選手を応援したくなります。
河村選手は脅威のスタミナと馬力が武器。
復活する際にはまた応援したいなと思わせる選手です。
1勝が遠い、慶應卒ボクサートト江嵜選手の春はまだか
変わったリングネームのトト江嵜選手は慶應大学出身。
トトは歩人と書いて本名。
アマチュアでも12戦のキャリアがありますが、プロでは4戦4敗。
あと一本のところまでは行くのですが競り負けています。
新人王トーナメント初戦は2RTKO負けでしたが、決してプロで勝てない選手ではありません。
高校チャンピオンで日大を経てプロになった真正ジムの大峯優真選手もプロでは4戦4敗でしたが、先日の試合でついに初勝利を手にしました。
(この興行は同じ慶應出身ボクサーガチコ萩生田選手も出場していました。)
トト選手も諦めなければ勝利を手にすることが出来るはず。
プロのリングで勝利する姿を見てみたいです。
おまけで慶應ボクシング部出身ですとRK蒲田ジムの池田穂高選手が新人王トーナメントLフライ級の準決勝でデビューの予定です。
東日本の優勝候補は?
数々の選手が夢破れた東日本バンタム級を制するのは果たして誰でしょう。
一番優勝の可能性が高いのはワタナベジムの水島楓翔選手と個人的には予想しています。
水島選手は出入りのスピードもあり、回転力のある攻撃でノンストップで4R戦い抜く力があります。
ガードも固く、4R全力で動いても運動量が全く落ちません。
会場で観戦した角海老宝石ジムの鳥井士恩選手との試合時には、4回戦の試合とは思えないという声も漏れており、試合後は大きな拍手が送られていました。
ただ、水島選手はダウンを喫する場面もあるのでそこが一抹の不安ではあります。
リーチとスピードのあるMTジムの熊谷祐哉選手が打ち合いに付き合わず、遠い間合いから切れ味鋭いパンチを打ち込み序盤で水島選手を仕留めるような展開も予想されます。
水島選手とは逆ブロックで勝ち上がっているレイスポーツジムの印波優心選手は過去にスパイダー根本ジムの芝野選手に過去に敗れており、大里KNUCKLE道場の船橋良太選手は佐藤大仁選手に敗れています。
芝野選手も佐藤選手も予選で水島選手に負けているので、それを指標とすると水島選手が一歩リードしていると考えられます。
相性もあるし各選手の成長曲線も違うので一概には言えませんが。
西軍代表を勝ち取るのは?
西軍は既に西日本も中日本も西部も代表が出揃っておりますが、中でも西日本代表のVADYジム松本海聖選手は完成度では東日本も含めた全選手の中でトップだと思います。
強いですよね??
まだ2戦しかしていないところがどう影響するかですが、試合映像だけ見たら松本選手が全日本を制覇する可能性が高いと見ました。消耗戦に持ち込まれた時の持久力、耐久力は未知数ですが。
中日本のトコナメジム大城雄都選手も4勝1敗と良い戦績。頭を振って中に入り重たいパンチを打ち込む選手で、僕が東日本の優勝候補と推している水島選手からも序盤にダウンを奪って判定で勝利している選手です。左右にスイッチしながらフックを打ち込む大城選手のスタイルは対戦相手も戸惑うしやりづらいでしょう。
(毎度お馴染みsakanaチャンネルさんの試合動画です。この実況解説のない動画が好きです。)
西部日本のウエスタン延岡ジムの甲斐裕幸選手は大工として自身の事務所を持つボクサー。ボクシングを初めてわずか10ヶ月でプロテストに合格し、現在2戦2勝。
一昔前はボクシング初めて半年とかでどんどんプロテスト受けさせて合格したらリングに上げて、リングの上で戦える選手かどうか見極める、なんて時代でしたけど、最近で10ヶ月でプロになる選手は珍しいかもしれません。
試合映像見ましたが2戦2勝なだけあってセンスもあるし、体も強そうでした。
ウエスタン延岡ジムって聞いたことのないジムだったのですが、宮崎県にあるジムのようです。
選手も甲斐選手以外いないのではないだろうか。
そんな環境でも強くなれる選手はいるんですね。それがびっくりです。
まとめ
最激戦区となった今年のバンタム級。
この階級の優勝予想はとても難しい。
映像を見る限り松本選手のレベルの高さは感じますが、まだ僅か2戦で未知数な要素があります。
水島選手にも勝っている大城選手のスタイルは個人的には好きなので期待していますし、水島選手もめちゃくちゃ強い。
甲斐選手はさすがに厳しいと思いますが、田舎の他に選手がいない中から勝ち上がれば第二の福永宇宙になるかもしれません。
数々のトーナメント途中で敗れた選手達の想いを背負って頂点に立つのが誰になるのかとても楽しみにしています。
追記:東日本新人王準決勝観戦記(9/26,9/27)
9月26日(月)は優勝候補と注目していた水島選手が脳の異常が見つかり棄権。脳という点が気になりますが復帰に期待します。
9月27日(火)は印波選手と船橋選手の両者接近戦を得意とする選手同士の一戦。
予想通りの接近戦となりましたが、船橋選手のパンチに普段程の力を感じませんでした。
印波選手は強烈な左右を叩き込んで優勢の中、距離が出来たところに右を打ち込んでダウンもゲット。
判定もほぼフルマークとなりましたが、船橋選手にいつものような元気が無かったのが気になりました。
印波選手はパンチはあるけどフットワークはあまりなく、手足が長くスピードもあり、フットワークを使う熊谷選手とは相性が悪いのではないかと感じました。
決勝はサークリングしながら熊谷選手がリーチとスピード差を活かしたボクシングをする姿を想像してしまいました。
勿論やって見ないと何が起こるか分かりませんが。
追記:西部・中日本新人王対抗戦観戦記
東日本の優勝候補と見ていた水島選手に勝利したこともある中日本の大城雄都選手が重たいパンチを打ち込んで甲斐選手を3RでTKO。
大城選手のパンチはスピードはないけれど「ごつんごつん」と音が聞こえて来そうな重たいパンチ。
接近戦の中で左右構えを変えながらフックを振るスタイルはSライト級ランカーの藤田炎村選手を彷彿とさせるボクシングです。
甲斐選手も高い運動能力を駆使して対抗しましたが、徐々にガードが下がり、ボクシングが雑になり、3Rに大城選手の右フックで力尽きました。
大城選手はごつんとくる重たいパンチでKO率は高くないですが、相手の体力を削るタイプのパンチ。
長いラウンドになればなるほど持ち味が活きるボクサーに見えます。
西日本の松本海聖選手が大城選手のこの重たいパンチにどこまで耐えられるのか、テクニックの松本か、パワーの大城か、西軍代表決定戦は要注目です。
東日本優勝候補予想の水島楓翔選手が脳梗塞で引退
東日本バンタム級の優勝候補に挙げていたが、脳の異常が見つかりトーナメント途中で棄権した水島選手。
後日SNSで脳梗塞が見つかったため引退することが発表されました。
スピードがあって手数も出て、真面目に練習していることが分かる選手だったので期待していました。
怪我は本当に怖いですが後遺症が残るようなものでない事を祈ります。
水島選手はまだ10代。
人生これからですがあのボクシングが出来る選手であればこれからどんな道に進んでも大丈夫だろうと思います。
今後の活躍に期待しております!!
追記:東日本新人王決勝観戦記
印波優心選手と熊谷祐哉選手による決勝。
熊谷選手は対戦相手の棄権が続いて試合間隔が開いてしまった点が懸念される。
試合は熊谷選手が長いリーチのジャブで距離を支配。印波選手もこのジャブに右を合わせるが熊谷選手が遠い間合いでジャブを突いて右ストレートを当てて優勢。1Rには終了のゴングと同時に右でダウンを先取。
熊谷選手は試合の度にどんどん強くなっている。
デビュー当初はもっとバタバタしたボクシングをしている印象でしたが、この日は無駄な動きはなくガードもしっかりしており、長所の長いリーチを活かした戦いを披露。
印波選手も徐々に接近戦に持ち込む場面を増やし、後半になるにつれて持ち味が出て、最終ラウンドは終始自分のボクシングが出来ていたと思います。
判定は3対0で熊谷選手。良い選手へと成長しています。
試合の度に成長していく姿も新人王トーナメントの魅力の一つですね。
西軍代表はどちらが勝ち上がっても強敵です。
追記:西軍代表決定戦結果
西日本新人王の松本海聖選手が中日本新人王の大城雄都選手のパワーを攻略。
松本選手も流石にこれまでのような圧倒的な実力差を見せる事は出来ませんでしたが、大城選手のようなゴリゴリの選手にも対応出来る事を証明しました。
全日本決定戦で戦う熊谷祐哉選手は大城選手とは対照的な長いリーチからパンチを打ち下ろす、スケールのデカいボクサー。
アマチュアの実績がある松本選手がキャリアでは上回りますが、熊谷選手のような選手を相手にした経験はないのではないでしょうか。