こんにちはtorajiroです。
急性硬膜下血腫による引退から復帰を宣言した元WBOミニマム級世界チャンピオン山中竜也選手の試合が決まりました。
ライセンス再発行の申請要件でJBCに定められたラウンドでしか試合ができないという条件もあるので、まずは6回戦からのスタートですが、引退理由が脳からの出血なだけに、再発リスクが心配になってしまいます。
こういう時に頼りになるのが過去の先例ですが、あいにく日本ではずっと急性硬膜下血腫=引退というルールでやってきたので、国内では過去の事例がありません。
ただ、このルールがあるが故に、日本を飛び出してアメリカで奇跡を起こした日本人ボクサーが過去にいました。
急性硬膜下血腫を患ったプロレスラーの柴田勝頼選手や、ボクサーの山中竜也選手の復帰が注目される今、後の世界チャンピオン2人を異国で撃破したこの元プロボクサーを紹介させていただきます。
もくじ
急性硬膜下血腫を患いアメリカで再起した岡田隆志選手
繰り返しになりますがJBCのルール改定に伴い急性硬膜下血腫から山中竜也選手が復帰します。これまで試合後や練習中の怪我で多くのボクサーが急性硬膜下血腫により引退を余儀なくされてきましたが、JBCルールの改訂により山中選手には再起の道が与えられました。
これまで試合後や練習中の怪我で多くのボクサーが急性硬膜下血腫により引退を余儀なくされてきましたが、JBCルールの改訂により山中選手には再起の道が与えられました。
試合後であればちょっとした注目の的にもなりますが、練習中の怪我も結構ありまして、僕が昔所属していたボクシングジムでも何名かが脳の出血によりひっそりと現役を退いていました。
そうした状況の中、一人の急性硬膜下血腫を患ったボクサーが、活動拠点を求めてアメリカに渡りました。
それが現在MTジムでトレーナーをしている岡田隆志氏です。
M.Tボクシングジムスタッフ紹介
岡田さんはアマチュア時代に全日本王者にもなった将来有望な選手でしたが、練習中の怪我で急性硬膜下血腫を患い、JBCの規定によって1戦で日本ボクシングから引退せざるを得ない状況に陥りました。
岡田さんの症状は軽く、すぐに完治して医師の診断でも問題なしとの事だったのですが、JBCが岡田さんの復帰を認める事はありませんでした。
妥当な判断だとは思いますが。
普通だったらそこでボクサーの道を諦めるところ、なんと岡田さんはアメリカでボクシングを続ける道を選びます。
「どんだけボクシング好きなんだ???」
そして岡田さん紆余曲折を経てアメリカでのデビューを実現させてしまうのです。
アメリカでのデビュー戦はドロー
アメリカでのデビュー戦は唐突に、試合1週間前に決まったそうです。
その相手はブルーノ・エスカランテ選手。
結果は引き分けでしたがこの選手、実は全米でアマチュア2位、3位の実力を持ち、17歳の時に当時現役バリバリの坂田健史選手が世界チャンピオンになる前にスパーリングし、坂田陣営を驚かせたボクサーのようです。

一週間前に決まった試合の相手がこんな強敵。
しかもアメリカ。
それでもドローなんだから大したものです。
そしてこの4ヶ月後、ボクシングファンを驚かせた有名な1戦を迎えます。
アメリカでアマチュア金メダリストを相手に大番狂わせを演じる
岡田さんのアメリカでの2戦目の相手はアマチュアの世界選手権金メダリストのマックウィリアムズ・アローヨ。
後に井岡一翔選手と対戦し、現在WBC世界フライ級暫定王者でもあるアローヨ選手を相手に岡田さんは大金星を挙げました!!
完全なかませ犬として呼ばれた試合で大番狂わせを演じたこの一戦は今もYouTubeで視聴可能です。
当時このニュースを知った時はとんでもない日本人ボクサーがいたものだと驚いたし、アメリカで結果を出してくれた事がめちゃくちゃ嬉しかったです。
ゆくゆくは世界チャンピオンになるかもしれないと僕はその後も岡田さんの試合をチェックするようになりました。
あの将来の世界チャンピオンも撃破!!
その後も岡田さんは勝ち星をあげていきますが、日本にいればトントンと決まっていく試合も中々決まらなかったり、突然試合が決まったり、厳しい環境であることに変わりはありませんでした。
この時に勝ち星をあげた試合相手には、後のスーパーバンタム級統一チャンピオンのあのダニエル・ローマンもいます。
もちろん当時はダニエル・ローマンがそんなにすごい選手だとは知らなかったし、ダニエル・ローマンが久保隼選手に勝って世界チャンピオンになった時も岡田さんが試合した選手だとは気づかず。
期待していた岡田さんですが、アメリカでは思うように試合が決まらず、怪我やファイトマネーが稼げない、子供が生まれるといった環境の変化の中で試合に敗れ引退を決意しました。
この辺りの事は岡田さんアメブロの以下のブログ記事を読んでみてください。
夢に向かって挑戦した事のある人は必読の記事。
僕は以下のくだりがめちゃくちゃ刺さり、泣きました。
家族の為 = ボクシングをすること は遠くかけ離れていると私は思っています。
家族がそれを望むなら話は別。
一試合で大金が入るなら話は別。
全くそれに当てはまらない私の競技生活。
それでも、自分の為 = 家族の為 にいつか繋がると信じてもう少し続けようと思いました。
自分のやるべき事はボクシングだと信じて。
そしてその翌年、一戦挟んだものの当時と対して変わらない現状のまま今度は娘が無事誕生してくれました。
私は何よりも妻と娘と生きていくことを優先したいし、二人を生かす事を最優先したいという思いに焦がれました。
ブログ納め~最後の世迷言~
自分も岡田さんとはかけ離れた底辺で喘いでいたボクサーでしたが、当然ボクシングでは全く稼げず、怪我するし入院するし、そんな中で岡田さんと同じように娘が生まれ、家族のために生きたいと思うようになってボクシングを辞めました。
だからこの岡田さんの引退時に綴った文章は胸を打ちました。
後悔も未練もありましたが、日々仕事と子育てに奔走することで気持ちをおさえる事が出来ました。
岡田さんの実力からしたら、急性硬膜下血腫が無ければ、日本にいてもっと恵まれた環境で練習して、試合を組めていれば、世界チャンピオンだって現実にあり得たと僕は思います。
でも、そうならなかったからアメリカで大番狂わせを起こしてこれたし、誰も歩んだことのない道を開拓してこれた面もあります。
岡田さんが選手として開拓した道はきっと次の世代に繋がっていくでしょう。
現在MTジムのトレーナーとして世界チャンピオンを育成
そして現在、岡田隆志さんはM.Tボクシングジムでトレーナーとして選手の育成に励んでいます。
M.TボクシングジムにはWBO世界フライ級チャンピオンの中谷潤人選手を始めとして、先日の日本タイトルマッチでミニマム級のチャンピオンになった石澤開選手、アマチュアキャリア豊富な神足茂利選手ら将来有望な選手も所属しています。
M.Tボクシングジムは中谷選手の活躍でこれから勢いに乗っていきそうな気配が漂っているので、トレーナーとしての岡田さんの活躍にも期待しています。
コロナ禍が明けたら日本人ボクサーもどんどん海外に出て試合をせざるを得ない時代が必ず来ます。
国内に選手は少ないし、先進諸国がインフレで賃金上昇を続けている中、全く賃金水準が上がらない、むしろ下がっている日本は安く選手を呼べる国になってきています。
日本がタイやフィリピンから選手を呼んできたように、これからは日本人ボクサーが呼ばれるようになる時代が来るでしょう。
岡田さんの海外で闘ってきた経験がどんどん活かされる環境になってきているのです。
トレーナーとしての今後の活躍にも期待しています。
まとめ
山中竜也選手の復帰で思い出した岡田隆志選手の活躍。
山中選手の急性硬膜下血腫からの復帰は心配ですが、岡田さんの先例もあります。
大丈夫!と簡単に言える話ではないにしても、もしかしたら岡田さんの先例がJBCのルール改訂に影響を与えたかもしれませんし、先例がある事で不安感は多少なりとも軽減されている気がします。
山中竜也選手が復帰することで、再び岡田さんの歩んだ道のりにも注目が集まると嬉しいです。