こんにちはボクシングブロガーのtorajiroです。
日本ボクシングコミッション(JBC)が公開した2022年度の事業報告書によると、2021年度に引き続き2022年度もプロボクサーは増加しました(祝!!)。
プロテストの受験者数もコロナ禍以前よりも高い水準で「プチブームが来ているのでは!?」と思わせる数字。
プロボクサーは少子化・若者人口減少・キックや総合への人材流出等もあって減少の一途を辿って来ましたが一体何があったのか?
プロボクサー増加の要因とこの現象が今後も続くのかどうかを考察してみました。
プロボクサー増加の要因
まず初めにプロボクサー増加の要因を5つ紹介します。
コロナ禍の危機的な状況から僅か3年でこうなる事を誰が予想していたでしょうか。
プロボクサー増加の要因その1:コロナ禍の反動
増加の要因として一番に挙げられるのは元も子もない話ですが、コロナ禍に大量にプロボクサーが引退して減りすぎたから。
元々プロボクサーは減少傾向にはありましたが、コロナ禍の2020年度には一気に500名以上のボクサーが減りました。
コロナ禍のダメージでプロボクサー数は1,977名→1,417名まで減少。
そこから2年かけてプロボクサー数は再び増加へ。
- 2021年度には1,718名まで回復
- 2022年度には1,971名まで増えてほぼコロナ禍前の水準に
2年かけて元の水準に戻っただけだという見方もあるでしょうが、2019年度までも減り続けている状況だったところを横ばいに出来ただけでも大きな成果だと言えます。
プロボクサー増加の要因その2:競技人口の増加
プロボクサー増加要因の2つ目として挙げるのが競技人口の増加。
ここで言う競技人口はプロだけでなく、アマチュアやフィットネスも含めたボクシングを趣味として楽しむ方も含めています。
プロボクサーとして活動出来る年齢には限りがありますが、キッズから高齢者まで含めて様々な目的でボクシングに接する方が年々増えているように思います。
- エアボクシング大会
- ジュニアチャンピオンズリーグ(JCL)
- おやじファイト
- エンタメとボクシングが融合したボクシングイベントのだれバト
- 各ジムが実施するスパーリング大会
これらの多様な活動の場がプロ以外のボクシングの競技人口を支えています。
2022年度のボクシングプロテスト受験者数は692名でしたが、これは2013年度まで遡っても最も多い人数。
ボクシングに接する人口が増えた結果、その中から「プロテスト受けてみようかな?」と思う方も増えてきたと考えて良いでしょう。
プロボクサー増加の要因その3:井上尚弥選手らスター選手の台頭
スター選手の存在は競技人口の増加に大いに貢献する要素です。
- 普段野球は見ないけれど大谷翔平選手の結果は気になる。
- 普段ボクシングは見ないけれど、井上尚弥選手の試合なら観る。
そういう方は日本中にたくさんいると思います。
野球界の大谷翔平選手やボクシング界の井上尚弥選手のようなスター選手はコアなファン以外の目を競技に向けることが出来る貴重な存在です。
特に昔のようにテレビでボクシング中継があった時代と違い、配信中心の現代においてはこうしたスター選手の存在が特に重要です。
先日、井上尚弥選手のSバンタム級転向初戦をスポーツバーで観戦したのですが、メインまで見向きもしなかった多くのお客さん達が井上選手の試合の時は「ボディ!!ボディ!!」と声援を送って盛り上がっていました。
那須川天心選手の存在も非常に大きく、子供やママさん達が天心選手のボクシング転向をきっかけにボクシングに興味を持ってくれています。
こうしたスター選手の存在が競技人口の増加には大いに貢献していることでしょう。
プロボクサー増加の要因その4:3150FIGHTら配信環境の充実
僕がプロボクサーをしていた2000年代と比べると、というかここ2年程でボクシング興行の配信が飛躍的に増えました。
亀田興毅氏が立ち上げた3150FIGHTの興行なんてファイトマネーは相場の倍で、4回戦ボクサーから煽りVがあって派手な演出の中で試合はABEMAで配信されます。
U-NEXTも「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE」の配信が始まりました。
U-NEXTは他にも海外ボクシングの注目試合の配信もあります。
そしてLeminoでも大橋ジム主催興行のフェニックス・バトルが配信されます。
こうした配信サービスに加え、YouTubeチャンネルでのボクシング中継も増えました。
- 中日本のボクシングはsakanaチャンネルさん
- 九州のボクシングはベジータ石川チャンネル
といった具合に地方ジムの興行にもスポットが当たる機会が増えています。
関東在住の私torajiroもこうしたYouTubeチャンネルで配信される試合を観て、中日本や九州のボクサー達の中からも推しを見つけております。
中日本の佐野遥渉選手や、九州の岡本恭佑選手や栗栖陸生選手なんか魅力的なボクサーです。
スポットが当たる機会がこれだけ増えた事はプロボクサーを目指そうと思う大きな要素になると考えられます。
プロボクサー増加の要因その5:働き方改革によるリーマンボクサーの増加
さて、実際ボクシングに興味を持ってプロボクサーになりたいと思っても、多くの方がフルタイムで仕事をしています。
昔は正社員勤務とボクサーの両立は困難、まず無理と考えられていましたが、近年は働き方改革の恩恵で正社員とプロボクサー二足の草鞋のリーマンボクサーが急増しています。
他にも医師ボクサーや警察官ボクサー、消防士ボクサー、お坊さんボクサー等、多様なフィールドで活躍しつつプロボクサーをしている選手も増えました。
自分が若い時は”就職か?ボクシングか?”と大いに悩みましたが、今は両立させながら人として成長していく道が選べるようになっています。
以前はプロボクサーやるならフリーターが前提でしたが、今は本職を持ちながら仕事後にトレーニングに励む選手達がたくさんいます。
仕事だけでは頭は疲弊し、体は衰える一方。
そこにボクシングをミックスさせることで身体能力は向上し、頭も活性化されて仕事中のスピードも判断能力も向上するので両立は決して悪いことではありません。
プロボクサーの増加は今後も続くか!?
- 競技人口が増え
- スター選手がいて
- 配信も充実し
- 正社員との両立も可能になってきた
更にはJBCもボクサーの37歳での定年制度を改正し、37歳を過ぎても競技を継続することが可能になりました。
こうした要素を並べると、今後もプロボクサーは増えていく?
と期待もしてしまいますが、個人的には頑張ってせいぜい横ばいだと思っています。
何故かと言いますと少子化の影響は非常に大きく、プロボクサーとして活動していける競技可能人口はどんどん減っていくからです。
定年制度の改正によって多少は競技可能人口の減少を遅らせる事は出来ますが。
母数が減っていく以上はいくら頑張っても現状維持を続けていければ万々歳というところでしょう。
日本の高齢化社会、出生数の減少はこの先の日常生活にも大きな影響を与える非常に深刻な問題で、ボクシング界が現状維持を続けていけたとしたらそれだけで大変な事なんです。
まとめ
プロボクサーはコロナ禍の2020年度に激減しましたが、2年かけてコロナ禍以前の水準まで立て直す事が出来ました。
- 井上尚弥選手や那須川天心選手のようなコアなボクシングファン以外も注目するスター選手の存在。
- 3150FIGHTのような派手な興行を中心とした配信プラットフォームの充実化。
- 多様な活動の場が競技人口を下支え。
- 労働環境の改善による仕事後の時間の有効活用。
こうしたプラス要因によって何とかコロナ禍以前の水準までプロボクサー数を戻すことが出来た日本ボクシング。
この先は少子化、人口減の中で苦しい戦いが強いられる事になるでしょうが、コロナ禍の危機的状況があった事で、日本ボクシング界はそこから大変革を遂げました。
数だけではなく今後は質も大事になってくるはずです。
井上尚弥選手のような圧倒的な実力を他のボクサーにも求めるのは酷で、そこだけでなく、今後はもっと選手一人一人の個性であったり、興行自体を盛り上げようとする選手一人一人の努力がボクシングを盛り上げる上で重要になってくるでしょう。
中川麦茶選手のようなボクシング界には稀な個性をどんどん発掘していきたい!!
今後もボクシング関係者、選手、ファンが協力してボクシング界を盛り上げていく方向で一致団結し、厳しい社会情勢の中でもボクシングのプレゼンスを高めていけたら嬉しいです。
足の引っ張り合いをしていられる余裕はありませんので前向きにこれからの社会変化に向き合っていきましょう!